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01 プロローグ ~起きたらうさぎになってました……ナンデ?~.txt


 なぜだろう。体がとても重く感じる。

 なんだか、寝起き特有のだるさみたいな感じだ。

 てかこれ、そのまま寝起きなだけか?

 俺、いつ寝たっけ?

 昨日は学校終わって、友達とカラオケ行って、帰ってきて……。

 そうだ。疲れて、晩飯食う前に寝ちまったんだ。

 あれが確か8時くらいだったから、今は夜中か朝だろうな。

 ってことは普通に起きるか……。今何時かな?

 ……。

 あれ? なんか体が思うように動かないぞ?

 思うように動かないというか、ほぼ体が動かない。なんで?

 これが噂に聞く、金縛りって奴か?

 勘弁してくれよ……。俺、ホラーはマジでダメなんだって。

 まず手を上げてみる。なんかゆっくりと上がってるような上がってないような……次だ次。

 次は足を動かしてみる。

 うーん? なんかモゾモゾ動いてる……のか? とりあえず次だ次。

 ならば次は体を起こしてみよう。よっこいしょ……あれ?

 やっぱなんか動いてないな……どゆこと?

 視界も真っ暗で、何も見えないし。特に周りの音も聞こえない。

 なんじゃこりゃー! マジで何事ですか!?

 起きたら突然金縛りとか、やめてくださいよほんともう! 怖いやないですかッ!!


 その時。遠くから、人の足音が聞こえた。

 カツカツと、普通のヒールの踵が床を踏む音だ。

 え? 待って待って!?

 これって死神のお迎えとかじゃないよね!?

 綺麗な女の人の幽霊が、「お迎えに上がりましたよ~。うらめしや~」とか言って出てきたら、俺発狂する自信あるよ!?

 ほんとやめて~!! いいいいいやあぁぁーー!


 「さーて。今日も可愛いうさぎさんたちに朝ごはんをあげますかッ!」


 近づいてきていた足音の主から、そんな言葉が聞こえた。

 若い、女性の声だ。なんというか、すごく天真爛漫とか元気溌溂なんて表現がぴったりなテンションだな。

 て、は?

 なんで俺の部屋というか家に、こんな見知らぬ女性が居るの? 泥棒さん?

 てかうさぎ? マジでどういうこと?

 俺が疑問ばかり頭に浮かべていると、突然灯りが灯された。

 さっきの女性が付けたのだろう。

 すると突然、視界が広がった。

 な、な、なんじゃこりゃーーっ!?!?

 俺は、その視界に飛び込んで来た光景にただただ驚くしかできなかった。

 銀色の鉄格子。

 その中にあるペット用のトイレと、餌箱と水の飲み口。

 そんな鉄格子の箱が、いくつも並んでいる。

 中には、たくさんの兎が入っている。

 その光景を俺は、一つの鉄格子の箱の中から見つめていた。

 そして、自分の姿を見下ろすことができた。

 ピンク色の毛がたくさん生えていて、とてもモフモフそう。

 左右に視界をずらせば、長い耳が少しだけ見える。

 わりと短めの手足に、丁寧に切りそろえられた爪。

 そう。俺は、兎として、ペットショップの檻の中にに居た。

 なんでやねーん!?

 え!? 嘘でしょ!? これマジなの!?

 俺これから兎なの!?

 あのモフモフ可愛い長い耳とポッコリ尻尾がチャームポイントの兎なの!?

 確かに兎は可愛いけど! 大好きだけど!

 昔は自分も兎になりたいとか思ったけど!

 好きな女の子が兎をなでてるの見て俺も兎になりたいとか思ったこともあるけど!

 実際になったらどうすりゃいいねーん!!!

 そんな感じで、俺は発散できない心の思いを叫ぶ代わりに、檻のなかで暴れることで発散した。

 そういえばさっきまで動かなかったけど、いつのまにか体が動くようになってらー。まあいいか。

 そんなことより、俺が兎になってる方がとーっても重大なんだし。


 「あらら~。今日も元気がいいね~。今日は私の手、噛まないでよ~?」


 そんなことを言いながら、俺の檻の入り口を開けた人が居た。

 さっきの足音の主だろう。

 とりあえずこの人に、俺が兎ではないということを伝えてどうにかしてもらわなければ……。

 

……。

 なにこの子。めちゃかわいいやん。俺のドストライクやん。どないしょ。

 檻の入り口を開けて、トイレの掃除や餌箱に餌を入れてくれている女の子は、とても可愛かった。俺の好みだった。しかももろに。ドストライクだった。

 プルプルそうな桜色の唇に、形のいい綺麗な鼻。パッチリ二重のふんわり垂れ目に、綺麗にそろった繭。

 スベスベそうな白い肌に、ふんわりカールの黒い髪。

 いろいろ言ったけど、とりあえず可愛かった。

 しかも、兎なんていう可愛い動物の世話をしているせいか、とてもニコニコしていて、笑顔が眩しかった。

 こんな可愛い子が世話をしてくれるなら。このまま兎のままでもいいかもしれない。

 そう思ってしまった。


 さっきこの子が言っていたように、昨日俺が彼女の手を噛んでしまったのなら。

 今日は俺が、優しく癒してあげよう。

 この長くてフワフワなうさ耳で、彼女の手を、さわさわしてあげるのだ。エヘヘ。


 「もう。くすぐったいよ~。あ、そこは昨日君が噛んだとこだ。よしよししてくれてるの? もう! 可愛いな!」


 頭を撫でてくれる。

 ヤバいー、幸せだー……。


 「うさ耳もモフっちゃえ」


 モフモフ。耳がとても幸せだー。

 兎ってこんな幸せな動物なのか~。もう俺このまま兎でもいいや~。


 「じゃあ、次の子のところ行ってくるからね~。おとなしくしててね~」


 あ……。

 檻の入り口が閉められ、彼女は別の子のところに行ってしまった。

 うー……寂しいな……。



















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