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星の方舟 = Star-Ship ARK =  作者: 杉森 真
8/11

(07)Emergency

 

【Danger !! Danger !! ソーラーストーム到達まで、あと5分。Danger !! 】

 早朝から、SMC3000の警報が唸りを上げた。

 SAnSの予測時間よりも、少々早めの到来となる。


 私は、ミーティングの結果報告を兼ねて、MEDルームに再来室していた矢先だった。

 未曾有の危険レベルに、私はまた助言を求めようと父の顔を覗き込むと。

 父の言葉が先手を打ってきた。


「この期に及んで、何を迷っとる? 指揮官の取るべき対応は、決まってる筈だ」

 父は、私の心を見透かしているかのようだ。

 その声はしゃがれていたが、力強く情愛に満ち、まるで真言だった。


 父の脈をとる看護士のヨーコ・シダーヒルが、首を小さく横に振った。

 隣で付き添う母も、父の右手の甲を摩りながら頷いた。

 余命いくばく病床に伏せる父を、これ以上頼るのも酷である。


「分りました。提督」

 私は答えながらMEDルームの扉を開けた。その時。


「ノアーよ。信頼とは、自分自身にもだ! ……自信を持て」

 私の背中に父の御言葉が突き刺さった。


「ハイ! 父さん」

 私は目頭が熱くなった。涙が沁みるまなこを指で抑えながら、目から鱗が落ちる思いでブリッジへと急いだ。


「緊急退避。総員、ウォーターバリアに避難せよ!」

 私は退避指示を出した。


【Danger !! Danger !! 緊急退避。これは訓練ではありません。緊急退避! 】

 SMC3000の警報も唸りが頂点に達した。


 退避室『ウォーターバリア』は、強い宇宙放射線を防ぐための構造をしている。水を満たした分厚い壁で六方を囲う円筒構造で、各デッキの中央部に設置されている。

 宇宙で最も基本的な物質の一つである水は、90%以上も放射線を吸収するという。生物にとって、何につけてもありがたい物質である。

 因みに、DNA保管庫とMEDルームは、常時ウォーターバリアで保護され緊急退避は対象外となる。


「総員。退避完了!」

 指令を出してから丁度1分後、ナビゲーターから報告を受け取った。


 その直後、SSアーク号の船体は眩い光に包まれた。


☆その瞬間、私は気を失った―――――――


 意識が戻ると、私は冷たい床にいた

 有視界モニターは無事に機能している

 しかし、いきなり何も見えなくなった

 何も聞こえなくなった


 時の無い世界に迷い込んでしまった

 だが、光は途絶えていない

 白い光が大きなスクリーンのように眼前を覆った

 そらの星々、辺りの景色、人々の顔、天使?


 イメージが次々に変わっていく

 幻覚でも見ているのか?

 星々は、プラズマの風にあおられて揺れている

 光は、千の矢のように飛び交っている


 それらは音も無く踊り始めた

 一つの動きが、数千へと広がり

 さらに数万へと広がった

 それらは互いに会話でも交わしているのか?


 やがて、太陽のきらめきが弱まり

 光りが動きを止めると

 踊りまくっていた無数の星たちは

 漆黒の宙にぴたりと貼り付いた……



―――いったい何が起こったと言うのか。

 気が付くと、SMC3000は沈黙し、船内は『静寂の嵐』に包まれていた。

 クルー達からも物音一つしてこない。


「大丈夫か? ケイト」

 すぐ傍で横たわる私の大事な天使に声をかけた。


「ええっ……」

 ケイトは黒目勝ちの大きな瞳をむき出し視線が合わない。まるで冥界でも彷徨っているかのように朦朧としていた。

 

 



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