Epilogue ★ 宇宙、それは神秘の世界
Space, the Mysterious World
◆ 宇宙日誌、西暦2201.04.18 ログイン ===>
未知なる宇宙域に迷い込んだ私たちにとって、氷の妖星の存在は最大の謎だ。
量子の世界では、エネルギーの壁をすり抜けるトンネル効果が確認され、光速を超えたと言われるニュートリノは、三次元ブレーンから高次元へすり抜けていた。
ミクロの世界では、不思議現象がいくつも観測されている。
この未知なる大宇宙では、マクロな世界にも想像を絶する現象が起こるのかも知れない。
SSアーク号は、次元の壁をすり抜け、時空を飛び越えたのだろうか。
ワープやタイムスリップが起こった可能性は否定できないのだ。
ここは一体どこの宇宙域なのだ? はたまた一体どの時代なのか?
突然襲ってきたソーラーストームの影響だろうか。
それともワームホールにでも飛び込んだのか。
最新の多元宇宙論では、平行宇宙の存在が予言されている。ワームホールで連結されて、葡萄の房のようにいくつもの別宇宙があるという。
それはユニバースに対して、マルチバースと言われている。
何れにしても、『氷の星』の存在は確かな現実である。
未知の魅力にとりつかれた私たちを誘うように、清白色の妖しい輝きを放っている。
その輝煌は、私の探査意欲を大いに駆りたてる。
果たして、運命のコンパスは、何処を指しているのだろうか。
この神秘の天体は、『約束の星』となり得るのか。
その答えが、この星にはきっとある。きっと・・・・。
私たちを乗せたSSアーク号が立ち向かう、人類最後のフロンティア『宇宙』へのアドベンチャーは、まだ始まったばかりだ。
=== 以上、ログアウト ◆
★ ★ ★
史上最大のソーラーストームから、無事に難を逃れたと安堵していたのも束の間だった。
私たちには、新たなる謎と未知なる命題が降りかかってきた。
SSアーク号の進路に突如出現した謎の天体は、清白色の妖しい輝きを放つ『氷の星』である。
ここで最も気になる特徴は、赤銅色の一本線を描く細いベルト地帯の存在であった。おそらく土壌が剥き出しになっているのだ。火星で有名なマリネリス峡谷にも似ているが、砂漠のような様相は呈していない。
地表の八割を超える程の範囲で氷床が覆うというのに、そんな狭い範囲だけに氷がないというのは不思議なのだ。天体物理学が専門のフォレスト博士でさえも、腕をこまねいて首を傾げる。赤道直下だからという短絡的思考では説明がつかないと言う。
私たちはミーティングをつづけ、各方面の意見に意見を重ねた結果。立ちはだかる謎の妖星に対して、惑星探査を決行することにした。
しかしそんな矢先、SSアーク号の船体に異常が現れた。それは、波瀾に満ちた人類の歴史の新たな序章となった。




