道具作り
大きな“時織の石”を俺は手に入れた。
ニャコに確認してもらうと、本物であるらしい。
これであれば先ほどよりも大きな接続域を作れるだろう。
材料についてもすでに調べ終えていて、必要な物は全部あるのが確認済みだった。
後必要なのは、“封印”用の道具に関する話だ。
調べていくと、いくつもの封印の道具が出来るが、一番強力なものが、以前ニャコが貴重だから買っておくといいといった鉱石を一部使うだけでどうにかなる代物だった。
だからそれらも一緒に作っておくことに。
この封印の道具は、その封印したい存在の周りに五つほど地面に打ち付けて、眠ったままの状態で停止させるらしい。
問題の先送りにしかならないが、その方法も視野に入れるとして作っておいた。
それから新たに、“時織の石”を使って遠距離接続装置を作ってみる。
すぐにできてしまったそれは、以前作ったものよりも大きいが、形自体は同じだ。
代わりに小さい方の装置に設置した石は回復薬の装置にはめ込んでおく。
試しに一個作ってみると、回復薬が作れたので壊れてはいないようだった。
それから再びスマホにその作ったばかりの遠距離接続装置を繋げて、開く。
小さな音を立ててできたそれは、この部屋のドアほどの大きさがあった。
これならばここを通って、行き来が出来る。
そう俺が思いながら覗き込むと、丁度織江が食事をし終えた所だったのだった。
こうして、大きな、それこそ人間すらも行き来できる状況になったわけだが。
まずは、恐る恐るといったように正人が俺達の部屋に。
そして窓の外を見て、
「一番初めの城が見えるな」
「そうだな」
「まさか本当に繋がるなんて。皆も来ないか?」
そうして瞳や織江も部屋に来ることに。
そこそこ広い部屋を借りたとはいえ、これだけの人数になると少し狭く感じる。
だが最後に織江が戻ってきてから、
「スマホ、どうしよう。あれが無いと行き来できないんだよね」
置きっぱなしになってしまうスマホが気になるらしい。
それを聞きながら俺は、
代用品が出来ないか後で調べて見ることに。
ただ関係のあるものを使って繋いでいるので、
「全員の髪の毛を一本ずつ事前に貰っていいか? この接続には関係するものが必要みたいなんだ」
といった理由から、とりあえず髪の毛を集めておく。
全員のものを手に入れた俺は、後で全員分作って接続装置が作れればと思う。
それから、しばらく部屋の周りを織江たちは見ていたが、そこで窓の外を見ながら織江は笑い、
「やはり都市近郊はまだ安全みたいだね。魔王軍が襲ってきていない。でも、破壊された都市もあると途中で聞いたから、ここも安全とはいいがたいかも。様子見をしているのかしら」
「様子見……ダンジョンに行った時に一度、魔王の副官と接触して戦闘になったな。まさかあれも様子見だったのか?」
「都市は王族がいるから自分達を守る者達は、沢山いるでしょうね。強い者も」
「……そうか」
それ以上何も言えなくなった俺だがそこで正人が、
「それで、武器の強化もしてもらえるのか?」
「忘れていた、ここに必要な物は出してくれ。後魔道具も作れる範囲で作る。今日中に魔王の城に行くんだろう? これから急いで作らないと。明日突入は無理なのか?」
「少しでも四天王といった連中が留守の時に入り込みたいんだ。だから……」
「分かった、これから武器屋必要な道具を大量に用意する。そして、俺も手伝う」
「……魔道具が作れるだけなのに大丈夫なのか?」
「俺の銃の威力は見ただろう?」
「確かにな」
「それに接続できる道具があれば、いざとなったらそれでここまで戻って来れる」
「初めからになるが、死ぬよりはましな道具、か」
「そうだな。それでどうする」
正人はそこで何かを考え始めてから、頷いた。
「十分手伝って貰えそうだ。よろしく」
こうして俺は正人達と一緒に魔王退治に向かう事になったが、そこでアリアとフラウが手を挙げて、
「私達も戦えるからお手伝いは出来るわ」
「気持ちは嬉しいが、どうなんだ二人は」
正人が聞くので強いと答えると、手伝ってもらえるなら、といった話になる。
ただ転送の関係でここでスマホの様子を見ていてもらわないと困る、といった話に。
このスマホに何かあったらどうにもならないのだから。
その役目はニャコにお願いすることに。
ただこの転送画面の起動に魔力がいるため、ニャコに俺の魔力の一部を分け与える装置と、開いて欲しいときに合図を送る道具などが必要ではないかといった話になる。
あまりにも必要な物が多く、ニャコに書きだしてもらった。
それから一旦正人達にはあちらに戻ってもらい、必要な物を検索し作成していく。
材料は全部あったが大分残り少なくなってしまったものもある。
そして、あちらで合図を送るとこちらのスマホが鳴る道具なども作り上げて、試しに動かすなどをしていく。
その間も織江達は移動していたらしく、魔王城の前に来たよ、と連絡が来た時には俺は驚いた。
丁度すべて必要そうなものは作成し終わっていたため、それらを持って俺は、ニャコに、
「後はよろしく」
「……危険だと思ったら帰ってきてくださいね。というか私をそんなに信用していいのですか」
「……ニャコは信用できるよ」
「コウジはいい人過ぎて、気持ちが悪いです。お気をつけて」
そんな風に茶化しながらも、精一杯の笑顔でニャコは俺を送り出してくれたのだった。
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