鍋
宿に戻ってきた俺達。
ニャコとフラウが鍋の準備と、飴玉を食べている間に俺は“勇者の剣”について調べていた。
そのままの単語で出るのか、それとも正式名称、エクスカリバーのようなものがあるのだろうか? と思ったが、そんな事はなかった。
“勇者の剣”。
確かに調べて出てきたそれは強力だった。
現在、正人達が持っている武器よりは強力だが、
「これから作ろうとしている武器の方が強力みたいだ」
「そうなの?」
聞いてきたアリアに頷き次に、以前、アリアに強化した剣の性能を思い出した俺は、
「でもこれから作ろうとしている武器は、今作ろうとしている物と同じくらいの性能だな」
「え、そうなんだ。この剣確かに威力が上がっていると思ったけれどそんなに……」
「どうする? 追加で作るか? もしもその“勇者の剣”をアリアが使うなら……」
「追加で。強い武器はいくらあっても、足りなくなることは無いわ」
アリアが笑って言う。
そしてそれもそうだなと俺は思いながら、剣の作成、そして防御してくれるような、魔法の腕輪を作成する。
取り扱いの仕方のデータは後で読み上げようと思い、他の武器も作成し、次にようやく縮小させる袋を作成する。
シャッターを切る音が聞こえて、それはすぐに作成された。
小さな茶色い袋で俺の手の平にのる大きさ。
しかも布で薄いので、くるくると丸めていくと、細長い円柱の棒状になる。
これならばあの隙間を通して送れそうだ。
「よし、後はここに剣やらを入れて送ればいいか」
「あ、コウジ、ちょっとよろしいですか」
鍋の準備をしていたニャコが手を挙げた。
どうしたのだろうと俺が思っているとニャコが、まだ作っていない鍋、正確にはあちらに送る方の鍋を指さして、
「この鍋、ひもで縛っておいた方がいいですか? 袋に入れた時上下さかさまになると困りますし」
「そうだな……上や下があるのか? そもそも異空間だから上下があるのだろうか? 宇宙空間で放り出した水のように、宙で浮いているようになるのでは? ……分からないから、ひもで縛って中のものが出ないようにしてくれ」
「分かりました、ではそうしますね~」
そう言ってニャコは何処からともなく黒い紐を取り出して縛り上げていく。
あんなもの何時の間に勝ったんだろうなと思いながら俺は、更に皿やパン、飲み物の類を入れておく。
もちろん調理用の水が無かったら困るので、水の入った瓶、つまり俺達の世界のミネラルウォーターのような物も一緒に入れておく。
あちらにどの程度食料があるかは分からないが、とりあえず送ってみる。
新鮮なものは旅をしていると手に入りにくいだろうから。
そう思いそれらも全て袋の中に入れておく。
最後にニャコに貰った鍋を入れて、それらをくるくると巻き上げて、
「もう一度接続だ。ここをこうしてっと、織江、いいか?」
「あ、また来たんだ、いいよ。今ね、結界を張って休んで、これから食事を作ろうって話になっていたの」
「そうなのか? 丁度鍋に食材がセットされた物を買ってきたから送ろうと思ったが、まずかったか?」
もう昼食と言っていたから食材の調達や、人のいる街か何かに近づいていたのかもしれない。
そう俺が思っていると織江が、
「まさか、新鮮な食材があるの?」
「あるぞ。今こっちでも煮ているが」
「! 乾いた肉とか以外にもそんな……ぜ、ぜひ、ください、新鮮な野菜が食べたいです!」
「わ、分かった。これから送る袋に、武器と一緒に入っているから取り出してくれ」
「うん!」
嬉しそうに織江が頷くのが聞こえる。
そして袋をあちらに送り、武器などのが全て出されたか確認して、使い方の説明押してから、
「ぼろぼろとはいえ使いやすいかもしれないから、そっちの武器も強化する。強化している間に襲われたら大変だから、それもあって代わりの武器と思ったんだがどうだ?」
大丈夫だろうかと思って聞くと正人が、
「最高だよ、これを使えばもう少し戦闘が楽になる」
「よかった。じゃあ強化して欲しい武器と、“時織の石”を送ってくれ」
「分かった」
「でも食事をしてからでも構わないか、新しい接続装置を作るのは。さっきからいい匂いがしているんだよな」
「この鍋か? そうだな……これを食べてからにしようか」
といった話になった。
俺もお腹が空いているし、あちらもそうらしい。
しかし戦闘をさっきまでしていて織江も大変なことになっているのにどうなのかと思ったが、食べるだけの元気があるのならそれはそれでいいのだろうと俺は思いなおすことにした。
それから、パンが入っている、ジュースもといった嬉しそうな声を聞きつつ俺もすでに出来上がった鍋を食べる。
ニャコがよそってくれたものだ。
俺達の方は食べながら、この鍋結構おいしいとか、香草がなになにが入っているとか、こういったものが使われているのですね、とニャコやアリア、フラウたちが話しているのを聞きながら、俺はよく分からないが美味しと食べていた。
やがて織江たちも鍋が出来たらしく美味しいと言って食べている。
こんなあまりかたくない美味しいパンは久しぶりだと言っているのを聞きながら、送ってよかったなと俺は思ったのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。