追撃
その悲鳴は男のもので、俺にも聞き覚えのある物だった。
「正人の悲鳴が聞こえなかったか!」
「聞こえた!」
「薬はすぐにでも送れる! だから早く、二人の所へ! その魔王の副官は、俺が倒す!」
「分かった!」
そう言って織江が走り出したのか、風を切るような音が聞こえる。
その間に俺は片手で銃をその繋いだ場所につき入れて、そして、引き金に指を添える。
同時に、先ほど大量に作っておいた回復薬を幾つも取り出す。
一本でも瀕死の重傷? かもしれない織江がここまで回復したのだから、一本で事は足りると思うが、それでも多いに越したことはない。
そう思って取り出していくと、段々に爆音のようなものが響いている。と、
「正人! 瞳!」
「! 織江、どうして動けるように!」
「瞳、話は後よ!」
そんな会話が聞こえると共に、すぐに別の人物の声が聞こえた。
「はて、先ほど瀕死の重傷を負わせておいた相手ですが、何故そんなにも元気になっているのでしょうね? もっとも、この中で一番弱い相手の貴方が増えた所で、そこにいる男のようになるだけでしょうがね」
「正人!」
織江が、悲鳴を上げるように正人の名前を呼ぶ。
どんな状況になっているのか、想像したくない状況であるのは確かなようだ。
そう思っていると織江が、
「瞳、頭を下げて!」
「こ、こう?」
「そう! 浩二、よろしく!」
そう俺は織江の声を聞いて、引き金を引く。
乾いた音が響くが、こちらからはどうなっているのかが見えない。
必要ならもう一発撃ち込む、だから、
「織江、どうだ!」
「……一瞬で、消滅した」
「そうか、よかった」
呆然としたように呟く織江に俺は、ようやく安堵しそうになって気づいた。
「織江、これから回復薬を送るから、使ってくれ」
「わ、分かったわ」
その返答を聞きながら俺は、銃をその場所から外し、代わりに回復薬の瓶を送ったのだった。