遠距離通信
多分この下でいるだろう、織江に向かって俺は回復薬を流し込んだ。
「これで大丈夫これで大丈夫」
震えながら俺は自分に言い聞かせるようにして、その薬を流し込んだ。
先ほど使った時は、薬自体を飲み込む必要はなく、皮膚に触れるだけでも効果があるようだったから、現在の無気力がなくとも薬に触れれば……そう俺は願う。
そして全てを流し込んでから瓶を引き抜き、
「織江、大丈夫か!」
名前を呼んだ。
大丈夫であって欲しい、そう俺が思っていると、
「……浩二?」
織江の声がした。
先ほどよりもはっきりとした声だ。
その声に俺は反応するように、
「そうだ、俺だ。そちらとの遠距離空間を繋いだ。小さいが……スマホと連動していると思う。どうだ?」
「スマホ……あ、顔の所にちょうど一部乗ってる。……そして何かがかかっている。水みたいな? 防水機能があるからいいけれど……あれ、四角く小さく空間が切り取られているような」
「そこだ、そこで接続している。というかその水みたいなものが、回復薬だ」
「! そうだったんだ。……スマホをひっくり返すと、こちらから四角が見えなくなる」
「表と裏のようなものがあるのか? でも良い、織江、もう大丈夫だな」
俺がそう問いかけると大丈夫であるそうだ。
体はまだ少し痛いそうではあるが。
俺がようやくほっと安堵していると、ニャコ達がのぞき込んでいた。
「本当に遠距離と繋がっているのですね。でも負傷していたという事は、どなたかと戦闘中だったのですか?」
「? 知らない女性の声がしますが、えっと、今私達は、魔王の副官の一人と戦闘しています」
織江が俺にそう答えたのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。