織江視点
どうしてこんな事になったのだろうと、私、織江は思う。
戦闘はもう何度もあった。
悲惨な現場にも遭遇した。
どうしてこんな事になったのだろう、そんな問いかけはもう何度もした。
でもつらくても動かなければならなかった。
そうしないと私達は“戻れない”から。
特殊能力のおかげで、私達は生き残ることが出来た。
お家に帰りたいと何度も私達は呟きながらこの地獄を走り続けた。
そして現在、四天王の一人の副官という魔族に遭遇した。
すでに先発隊である、幾つかの国の軍が討伐に向かったようだが、いずれも全滅しているようだった。
私達の住んでいる、現代の平和な社会では目撃することの無い光景を見てきた。
ただ、この世界の人達は魔法に近い、との事らしく殺されても消えて魔力の残渣になってしまう事が多く、幾らかは見ずに済んだ。
途中途中で、うめき声をあげる人の手当てをしながら移動したのも、よくなかったのだろうか?
人の事よりも、自分の事をもっと大事にすべきではなかったのか?
放っておけなかった人の好さが災いしたのか?
今になって考えてしまう。
「寒い……」
寒さを感じて小さく振るえる。
致命的な攻撃を受けて、私は倒れた。
正人達が、私から少しでも離れて戦闘するように移動してくれたのは知っているけれど、二人も限界に近いと私は知っている。
「浩二……」
小さく私は名前を呼んだ。
伝えたかったことはその時に伝えないといけなかったと今更ながら後悔する。
私は愚かだ。
そう思っていると、浩二の声が聞こえた気がした。
名前を呼んでいる気がする。
でも、最後に聞こえた声が、浩二ならそれは良かったかもと思いながら私は、私が伝えたかった気持ちを口にしようとして……そこで、私の顔面に何かの液体が降ってきて、そして、
「あれ?」
目の前がはっきりして、
「織江、大丈夫か!」
「……浩二?」
彼の声が聞こえたのだった。
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