接続
接続は簡単だった。
差し込むと同時に、スマホの画面に“OK”のボタンが現れる。
これを押せば、久ッぶりというかあれから別れて何日しかたっていないが、連絡が取れるだろう。
だがもしも、その短期間に彼らが“死んで”いたとしたら?
今更ながら不安が募る。
触る指が震えるが、きっと大丈夫、そう俺は思った。
触れると同時に、“時織の石”が白く輝いて、空間にその白い四角い光の窓を投影する。と、
「『セツゾクサキノシテイヲオネガイシマス』か。えっとだとしたなら……戻ってきたら話したいことがあるって言っていた織江につなげよう。織江っと」
俺がそこに触れると、その小さ四角は虹色の輝きを帯びてから何処かと繋がった。
うっすらと森のようなものが見えるが、そこでニャコがピクリと耳を動かした。
「血の匂いがします」
「確かに薄く鉄のさびた様な……まさか!」
俺はぞっとして覗き込むも、ここから見える範囲は森ばかりで、けれど何処からか爆音のような音と、誰かが何かを叫ぶ声がする。
言葉は聞き取れないが、正人達の声のようだ。
酷く焦っている、そう感じさせるものだった。
もしや、織江のスマホがこの辺りに落とされたのだろうかと思って俺はあせる。
それならばすぐに、正人や瞳の方に連絡をした方がいい。
今すぐ接続を変えるべきだとは俺も思ったが、もしかしたなら近くにまだ織江がいるかもしれない。
そして落としたのを拾うかもしれない、そんな期待を俺は抱いた。
だからそこで俺は名前を呼ぶことにした。
後から考えると、これは運命の岐路だったのかもしれない。