魔力容量説
宿の戻ってきた俺がまずしたことは、
「この超強力な魔法回復薬を作っておくことだ。大量に。そして“時織の石”は貴重だからそれから回収する」
そう俺が言うとそこでニャコが、
「でもコウジ、魔力は足りるのですか? 先ほどの銃弾はとても魔力を消費したと思いますが。それにあれだけ強力な回復薬を作っているのですから、ずいぶん消費しているはずですよ? 倒れて意識が戻らなくなることもあり得ます」
「……そうか。そういえばステ」
「ステ?」
俺は沈黙した。
“ステータス・オープン”の話はまだしないでおこうと思う。
それの数字はギルドで測ったものと同じ数字で、それを使えば魔力の量がどの程度減ったかも表示されるようだった。
けれどそれを使えば分かる物の、気味悪がられるかもしれない。
となると……。
「この腕時計型の分析装置でどうにかなるかな。見てみるか。俺の魔力を分析……え?」
そこに現れたのは、ざっとみて100桁はあるかと思うような数字の羅列。
俺が凍り付いているとニャコやアリア、フラウがのぞき込んで絶句する。
と、フラウが震える声で口にした。
「魔力容量説」
「? なんなんだそれは」
「現状では、四角い箱の側面から見てその容量がどれくらいかを見るのだそうです。大抵の人は、その側面の面積に特定の幅をかけた数値が要領になるのですが、稀にそれでは説明のつかない大容量の人物がいると聞いた事があります」
「それは、どうしてなんだ?」
「幾つか仮説はありますが、平面でしか見れていないとすると、その容量という箱が例えば幾つも重なっていた場合、実際の数値よりも数十倍、数百倍の魔力になってしまうのです。並列仮説と呼ばれる物ですが……まさか、コウジはそれだったのですか?」
フラウが衝撃を受けたように呟いたのだった。