回復薬作成
地上に出ると、先ほどの不気味な男に似た雰囲気の、おそらくは魔族が外にいたらしい冒険者を切りつけている状態で固まっていた。
その冒険者は女性で、すでに動く事すらもできずにいるようだった。
なのに魔族は、その女性をいたぶるかのように傷つけている。
酷い。
その凄惨な光景に俺は衝撃を受ける間も、アリアがすぐに走り出して魔族を切り裂き、フラウが炎の魔法で倒していく。
倒された魔族が次々といなくなっていく。
親玉だったあのザイルが特に強かっただけで、ここに入るその他は雑魚程度だったのだろうか?
それともアリア達が強いのか。
だがそんな中で俺は他にも男性の冒険者たちも含めて、うめき声が聞こえる。
小さく、痛い、痛いといった声も聞こえる。
「俺に、何ができるだろう。……そうだ、たしか作ろうとした回復薬が……」
小さく俺は呟いて、けれど、それには“時織の石”が必要なのだ。
それを使ってしまえば、クラスメイトと連絡は取れないかもしれない。
でも、今ここにいる人たちを見捨てて俺は、後悔しないだろうか?
迷ったのは一瞬。
けれどすぐに俺はニャコに、
「ニャコ、回復ドリンクを作るのに必要な物を出してくれ」
「分かりました~」
そして俺は必要な材料を言って、ニャコに取り出してもらう。
それから隠れるように俺は特殊能力を使う。
出来上がったそれは思いのほか小さく、さながらお菓子のケースのような銀色の箱である。
箱に触れて魔力を注入すると分入りドリンクになって出てくるらしい。
それで俺はサクサクと作っていき、やや良を大目にそれを作り上げ、ニャコと手分けをして周りの人達に渡したのだった。