伝説の技?
引いた引き金が重い。
こんな経験はしたことのない俺だから、仕方がない。
水鉄砲での撃ち合い程度しかしたことのない俺は、もつだけで緊張する。
だがそれでも今やらなければ、俺だけではなく、ニャコやアリア、フラウも死んでしまう。
だから、そう俺が思っていると、
「さあ、早く撃ちなさい!」
余裕めいた敵、ザイルの声。
これは彼自身の自身の表れなのだろう。
だがこの“油断”は利用できる。
静かに計算しながら俺は、ようやくぐっと引き金を引く。
ゴウンッ
何かが噴き出すような大きな音が一瞬して、俺の銃から白い光の塊が飛んでいく。
「へ?」
目の前の敵が間の抜けた声を上げた。
けれどその声が届くころには弾丸はその敵、ザイルには触れていた。
ヒュウッ
風を切るようなそんな音がして、そのザイルの姿が渦を巻くように歪む。
後には、“何も残らなかった”。
敵を倒す魔法の道具、そう選択した。
どこかに転送している? という不気味な技の可能性もあるが、敵となる対象物がこの場から消失した事は確かだ。
一応説明書きの所には、人間の場合は気絶させる程度に攻撃すると書かれている。
恐ろしい技だと俺が思っているとそこでフラウが、
「い、今のはもしかして伝説の、魔族を元の魔力に変換して戻してしまうという技では」
「そう、なのか?」
「ええ、あんな風に消失して魔力が漂うなんて、それしか考えられません。魔族は魔力に人間より近いので強いのですが、やりようによってはその均衡を崩し消失できると……まさかそんな伝説の技が見られるなんて」
「え、えっと、はい」
熱く魔法についてフラウに語られてしまった俺は、初めて敵と戦った興奮が完全に抜けてしまった。と、
「フラウ、そこまでよ。……一番強い敵が倒されたからといって、敵がまだ全員倒せたわけじゃないわ。でも、残りは私の敵じゃない。行くわよ!」
「ま、まってよ!」
焦ったように、フラウが駆けだしたアリアを追いかけて、その後を俺とニャコがついていったのだった。