初めての武器使用
現れた薄気味悪い男。
人とは違うそれと、湧き出る魔力に俺はぞっとする。
こんな不気味な存在、初めてであった。
そう俺が思っているとアリアが剣を構え、フラウも杖を構える。
そしてアリアが小声で俺とニャコに、
「すぐにダンジョンの奥深くに逃げて。……足手まといだから。すぐ私達も追いかけるわ」
「全部聞こえていますよ。しかしなかなかのツワモノの気配がお二人からしますね。私は水の四天王が副官、ザイルと申します。どうぞお見知りおきを……といいたい所ですが、全員ここで死んでいただくので忘れてしまっても結構です」
「随分と耳がいいのね。でも残念ね、貴方の名前は私達の栄光と共に、語らせてやるわ」
「なかなか勇ましいお嬢さんだ。だが、そういったお嬢さんをなぶり殺しにするのが私は好きでね。先ほども虫の息の少女を転がしたが、もう少し後の方が楽しめそうだからここをのぞいたら……私の好物がいましたね」
「……下種が」
小さくアリアが悪態をつくも、聞こえているらしい。
目の前のザイルと名のった男が嗤う。
気色の悪い相手だと思う。
そこで俺はニャコがあの剣を構え得ようとするのを見て、俺の銃でもこの出入り口であれば、崩壊の危機は少なく試せるのではと気付いた。
だからニャコに、
「今度は俺に試させてくれ」
「え、でも」
「俺の道具の方が威力がある。だったら、俺の方がいい」
そう言って俺がすぐに銃を構えると、ザイルは目を瞬かせて、
「拳銃ですか。いくらか魔力の気配を感じますが、ただの金属片を魔力を少し纏わせて飛ばす程度のものでは、我々には効果はありませんよ?」
「試してみないとそれは分からないのでは?」
「では試してごらんなさい。その方が絶望がより深くなる」
「変態だな」
「誉め言葉として受け取っておきますよ」
そう告げたザイルに向けて俺は、初めて目の前の敵を倒したいと思いながら、引き金を引いたのだった。