取り外しができるものしか
ようやく見つけた“時織の石”。
ニャコが言うにはあまり質は良くないが、それでも貴重品には変わらないという。
だがここで俺は気づいた。
「これ、二つくらい手に入らないかな」
「流石にこれは貴重ですから無理かも。……もし使いたいのであれば、片方の装置に使って、それで使い終われば別の装置に入れて、と言った形ではどうでしょう」
ニャコの提案にいい案だと俺は思ったものの、
「この石自体を分解して作る可能性はあるかな」
「いえ、大抵の魔道具はその石を中心に入れて使いますから、取り外しができるものしか私は見たことがありません」
そう言われるも、気になりはする。
貴重な品なのだから、まずはどちらを優先するかを考えないといけない。
俺は本当はすぐにでも、ここに飛ばされたあの他の三人と話したいと思った。
けれど今話せたとして、今の俺は何が出来るだろうか?
まだお金を集めたり装備を整えられる段階で、何も手伝えない。
否、少しくらいは手伝えるかもしれないが、
「もしも回復ドリンクを作れるようになれば、それをあちらに届けることだって出来るし、俺達も回復できる」
小さく呟くように口に出してみて俺は、戻ってからよく考えようと決める。
もしかしたならもう少し探せば、“時織の石”が見つかるかもしれない、そんな淡い期待もあったからだ。
もっとも見つからず、行き止まりに来てしまう。
そこでアリアが、
「これ以上探しても無理そうだから戻りましょう。……またここに探しに来ればいいじゃない」
「……そうだな」
俺はこうして帰路についたのだが、このダンジョンの入口が見えてきた所で、外で悲鳴が上がったのだった。