掘っています
魔物の素材を全て拾い上げる。
一時的に俺が預かり、後で加工して全員に配分するという話に。
それからようやく魔物の気配がないとアリアが言うので安心したからか、周りに気を配る余裕が俺にはできた。
その危険な伝説の魔物がいた場所はよく見ると広い場所だった。
危険な魔物に目を奪われて全然気づかなかったが、壁には色々なものが埋まっているようだ。
強い魔物がいる場所なだけに、珍しいものが沢山埋まっていたりするんだろうか?
もしかしたならここには“時織の石”も?
それが手に入りさえすれば、空間を繋げてあの仲間達に会える。
それにこちらからの援助だって、出来る。
なんだかんだ言って俺を危険から遠ざけてくれたあいつらの手伝いが出来るのは嬉しい。
だから俺はすぐに、壁を掘り始めた。
掘った時に転がった石を見てニャコが、
「こ、これは……」
「ニャコ、まさかそれが“時織の石”……」
「違います。でもこれも貴重なものですよ」
「でも俺がどうしても必要なのは“時織の石”なんだ」
そう答えて俺は必死になって掘っていく。
体を強化する能力がないが、それでも自分に出来る範囲で頑張ろうと思ったのだ。
そこで俺の手首をアリアがつかむ。
「身体能力強化が使えないんだから、それくらいにしておきなさい」
「でも……」
「事情は聞いているから、気持ちもある程度は分かるけれど……筋肉痛になっちゃうよ。ふふ、帰ったらって言って帰ろうとした時とは大違いね」
「でもここには特別なものがあるから、“時織の石”もあるかと」
「あれはとても珍しいものだからね。とりあえず今度は私が周りを掘ってみるわ。少し休んだら?」
そう俺はアリアに言われてしまったのだった。