異世界にて食事をとりに行く
こうして特殊能力の使い方が分かった俺だが、それらの材料を見て首をかしげる。
「“メカ鉱石”“ギガの水”“テラの実”が必要……気になるネーミングだが、どんなものかさっぱり分からない」
そもそもこの世界の事に俺は疎いのだ。
誰か協力者がいればいいが。
「このお金で、誰か詳しい説明をしてくれる人間を雇うか?」
とはいえ、そういった人間をどうやって手に入れればいいのだろう。
まさか道行く人に声をかけ続けるわけにもいかないし。
どうしようか、と俺は考えているとそこで、ぐうっ、とお腹が鳴った。
「まずは何か食べよう、考えるのはそれからだ」
と俺は小さく頷いたのだった。
安くて美味しいお店は何処にあるだろうか?
その指標としては、地元の人が列をなしていたり繁盛していたりする店で、安い所だろう。
というわけで夕食前には少し早いこの時間に俺は街へと出かけた。
ここにはこんな店があるのか、ここには鉱物らしきものが売っているな、でも目的のものはなさそうだ、といったように歩きながら周りの店についてみていく。
魔法の材料のようなものが売られている店もあるが、外から見た範囲では目的の材料は見つからない。
もしかしたならとても珍しい材料なのだろうか、と思っていた所で、
「出ていけ! ここは薄汚い獣人を雇う店じゃねえんだよ!」
「きゃああっ!」
目の前の魔法の材料のお店であるらしき場所から、猫耳の少女が放り出される。
どうやらこの店の店主に、蹴りだされたようだ。
地面に倒れて、なみだ目になっている彼女。
よく見ると服もボロボロだ。
そこで、くぅうっと目の前の少女のお腹が鳴る。
「うう……お腹が空いた。もう三日も食べてないよっ」
そう呟いて泣いている。
しかも倒れたまま動く気配がない。
そして今おれの目の前に倒れているのを目撃しているわけで。
「すみません、この揚げ菓子を一つ」
傍で売っていた屋台からお菓子を一つ購入した俺は、目の前に倒れていた彼女に、
「あの、よかったらどうぞ」
そう言って、今購入したばかりの上げ菓子を差し出したのだった。