不幸な事故
ソファーの布団はかたくてあまり寝心地が良くなかったが、今朝意識が少し覚醒するとベットのようなふわふわ感があった。
しかもすぐそばでは柔らかそうで甘くていい匂いがする。
こんな匂いあったかなとうっすらと瞼を開くと、目の前にはニャコの気持ちよさそうな寝顔があった。
そこで呻くような声が聞こえて、何かが俺に抱きついてくる。
背中に柔らかい感触がある。
どうやら俺を抱き枕か何かと勘違いしているのかもしれない。
その辺りで俺は現在の自分の状況について、脳細胞が活動を始めた。
つまり昨夜ソファに眠っていた俺は、気づけばベッドの中にいて女の子に挟まれていた。
昨日眠る前に挟まりたいと俺は思ったが、こんな状況は望んでいたわけでは、というか凄く良い匂いがするんだけれどどうすればいいんだこの状況。
などと俺が焦っているとそこでニャコが瞼を開いて俺に微笑みかけて、
「おはようございます、コウジ」
「オハヨウゴザイマス、出来れば状況を教えていただきたいと存じますデス」
「状況ですか? あ、アリアが抱きついてる。これは、ニマニマして状況を見た方が楽しそうですね」
「……やはりこんな俺を惑わす女子達は部屋の外に追い出そう」
そう俺が呟くとそこで、
「んんっ……? 枕じゃない?」
「そうです、俺です」
「……そういえば、ニャコの話だと大丈夫そうだからベッドに連れ込んだのだけれど、うん、見事に何もなかったわね」
「……いえ、背中に当たっているのですが」
何がとは俺は言わなかった。
アリアが凍り付いたような気配を後ろで感じた。
そして、
「ふ、不幸な事故だったんだからぁあああああ」
悲鳴のような声を上げるアリアの声を俺は背後で聞いたのだった。