他言無用で
俺の特殊能力が目撃されてしまった。
しかも今日であった人間にである。
さあどうしてくれようかと俺が考えつつ、どこかの推理ドラマのように犯行現場を目撃されてしまった犯人のごとく、目撃者であるアリアにとりあえず、
「……見てしまったな」
と言ってみた。
しかも、彼女もまたこの能力が特殊で、驚いているようだ。
俺の能力の特殊性も知られてしまった。
さて、どうしてくれようかと思いながら俺は冷静に考えて、
「今見た能力は、他言無用でお願いします」
「へ?」
アリアが間の抜けた声を上げた。
その後ろで魔法使いのフラウが先ほどまで青い顔で震えていたのだが、同じような反応を示している。
確かに推理物の犯人のような台詞ではあったが、ここまで怖がられるとは……俺の演技力は伊達ではない(キリッ)
などと俺が思っているとそこでアリアが、
「確かにこんな能力があるなんて聞いた事がないわ。しかもこんなに簡単に魔道具が作れるなんて。それこそ異世界から召喚されたレベルの能力だわ」
地味に本質をついてくるアリアに俺が、一瞬びくりと震えていると、そこでアリアが、
「でもいいわ。こんな能力、確かに見つかると面倒よね。魔王討伐のための武器を作らされそうだし」
とアリアがいうが、そういえばどうして俺は魔王討伐にそれなら魔道具作成として誘われなかったのかと思ったが、すぐにこんな簡単に作れる能力とは思いつきもしなかったのだろうと俺は気づいた。
あの王たちの傲慢さのおかげで俺は、今は自由なのかもしれない。
それを考えると、塞翁が馬、という言葉が身に染みたのだった。