目撃者
こうして宿に戻ってきた俺だったが、早速材料を床に山盛りにして置く。
形の差はあれど、大量の髪飾りが出来る事は間違いない。
そしてどの魔道具というか、先ほどのニャコのいった魔道具を探してみるが、
「材料からの検索もできるみたいだ。後でそれも試してみよう」
そう思って俺は、幾つか“ララレの実”の殻を寄せてから、写真を撮る要領で特殊能力を発動させる。
一瞬それらが光に包まれたかと思うと、後には大量の小さな花の形をした髪飾りが山盛りになっていた。
そう、花の形をした……。
「花の形とか、俺、つけたくないんだが」
「そうですか? あ、女装をすれば問題ないのでは」
「却下で。それでニャコはつけてみないのか?」
俺は全力で話をそちらにもっていった。
何が女装だ。
俺様、女の子よりも美し~♪ などと思えたらもっと人生楽に生きていけるかもしれないが、平凡な容姿なのは自覚がしているし、女装した所で彼女が出来るわけではない。
少なくとも彼氏は欲しくないので、俺は、これは装備しないことに決めた。
と、そこでニャコが両方の猫耳の下に髪飾りをつけて、
「どうですか、似合いますか?」
「そうだな。可愛いな」
ニャコは嬉しそうに笑った。
それを見ながら俺は、女の子の笑顔はなんだか照れ臭くなるなと思っていると、そこで入り口のドアから、何か音がした。
見ると見覚えのある人物がいて、どうやら俺は鍵を閉め忘れたらしい。
しまったなと思いながら俺は、
「何でここに、アリアとフラウがいるんだ?」
そう問いかけるとアリアが、
「ま、魔道具作りを見に来たのと、私達が泊まっている宿屋が満杯で空いている部屋がなかったのよ!」
と、どう考えても後者の理由でここに来たようにしか思えない。
そう俺が思っているとそこでアリアが、
「で、でも今の魔道具の作り方は初めて見る物だったわ。貴方は一体、“何者”なの?」
「……見てしまったな」
俺は、そう、目撃者であるアリアとフラウに告げたのだった。