謎の視線
農作業の手伝いで、二人で二万円ほど手に入れた。
時給換算すると、結構、どころかかなり割のいいアルバイトであったようだ。
ただ一年を通してあるわけではないので、こればかり頼るわけにもいかないだろう。
だがこういった依頼もこなしていけば、生活できるだけのお金は稼げそうだ。
将来の見通しが立つと心が豊かになり、次への一歩が踏み出せる。
つまり、魔道具を作って装備を整えて、元の世界に戻れる方法を探しながら、あわよくば、友人たちのお手伝いもできればと思う。
戦闘なんてしたことがないから今頃大怪我をしていないといいが、と俺が思いをはせているとそこで、
「ご主人様、これで“緑に彩られし祝福の髪飾り”が作れます」
「え、えっと、緑に彩られ?」
「“緑に彩られし祝福の髪飾り”です。攻撃された時に、この髪飾りが身代わりとなり衝撃を抑えてくれるのです。“ララレの実”自身が魔法防御力が高いので、そのような魔道具が作れるのですが……」
「何か問題でもあるのか?」
「本来魔道具であれば結構作るのに難しいものなんです。材料はそこそこ簡単に手にはいるのですが、値段が高く売れるのは特にその辺りの理由があります。
「なるほど。でも俺の力を使えばもしかしたなら」
「ええ、簡単に作れてしまうかもしれません」
「でも髪飾りなら、男はつけられないよな」
「? そんなに可愛いものではないですし、つけてみては。もし嫌なら服につけておいてもいいですし。これから材料を手に入れるのであれば、あって損はない魔道具ですよ」
そう言われてとりあえず俺は、俺でも使えそうな魔道具なのだなと思う。
そして宿の部屋に戻ってきた俺だが、俺達を見つめる謎の視線にその時まだ気づいていなかったのだった。