武器は扱えない
一つも武器を扱えない。
俺の言葉にアリアは沈黙し、無表情になった。
それから上から下まで嘗め回すように見て、
「確かに肉体労働系ではなさそうね。もっとも細身でも武器を扱える人間もいるからあなたがそうかもしれないけれど」
「初めに会った時、『貴方のような武器も持たないような人物が冒険者をやっていけると思っているの!?』」
「ああ、あれはギルドに入った時にその人の武器や能力の確認の儀式でもあるの。それでこの新人はどの程度か、自分のパーティに引っ張るか、といった事を見極めるのよ」
「そうなのか、アリアはパーティに?」
「ええ、友人と二人で。そして、ここの依頼を受ける時に、ここに来た時はやって来たよそ者でベテランが、持ち回りで様子見することになっているのよ」
どうやらこのギルドではそのような決まりがあるらしい。
だがここで、俺をもう一度アリアは見てから、
「もしかして魔法使いなの? だったら軽装なのも多少は納得がいくけれど」
「……それも違うんです」
「家出をしてきたなら、早く元の家に帰る方がいいわ」
言い切られてしまった俺。
だがそこでニャコが、
「今日は“ララレの実”の収穫の手伝いの依頼を見に来たのですよ。あと、コウジのギルドカードを作りに」
「そういえばニャコの住んでいた地域は同じだったわね。この町だと、そうった農作業の依頼は別の場所よ。ここの依頼は戦闘ばかり」
「え、そうなのですか? 困ったな……何処か探さないと」
「魔道具関係を作るのに協力している感じなのね、なるほど。だったら相棒の子も今はいないし、案内してあげてもいいわよ」
「本当ですか!」
「ええ、ニャコには以前色々とお世話になったし。でもそちらの彼は、ギルドカードはもっていないのよね? ギルドカードは身分証にもなるから、作ってだけは置いた方がいいわね」
どうやらアリアが納得してくれたらしく、後で依頼の場所を案内してもらえるらしい。
そしてニャコは収穫の手伝いをして材料を手に入れるという話のようだ。
そう思いながら俺は、まずはギルドカードを作りに受付に向かったのだった。