現在の状況について
現在俺、塚原浩二は城下町にて宿を探していた。
「まずは住む所からだよな。それから俺自身の特殊能力についてもっと詳しく調べて、後はこの世界で食べて行けるような職を見つけるか何かするのが、今は最優先だな」
そう呟き、幾つか宿を探し、その中で比較的安い宿を探す。
周りが汚れていたり変な人物がうろついていないかを確認して、その宿に俺は決めたのだ。
何しろこの異世界は、俺達の世界と違って色々と……治安面があまりよくない。
言葉が通じるし、文字も読める能力が俺にもついていたのは良かったと思う。
だがそれ以外の能力は、現在俺の持っている特殊能力以外にはなかった。
「他の皆にはいろいろあったんだけれど、俺にはなかったんだよな。だから心配されてここに残らざる負えなくて……スローライフでもするかと思っていたら、おかげで色々知ってしまったわけだが」
苦労して戦って帰って来た時にはすでに手遅れだろうから、この段階で状況が分かったのは良かったかもしれないと俺は思う。
ただ、これから俺は別の意味で大変な状況に置かれていたりするのだが。
「俺の友達は良い奴たちばかりだし。それに、織江の帰ったら伝えることがあるって何なんだろうな。告白じゃないって顔を真っ赤にして言っていたけれど」
そう彼女の事を思い出しながら俺は、部屋の鍵を貰い、前払いの宿代を払って宿の部屋へと向かったのだった。
何処から話そうか。
俺、塚原浩二はいつものように同級生の友達と四人で高校から帰る途中、謎の光に包まれて異世界に飛ばされた。
「どうしてこうなった」
「むしろ僕が知りたいよ」
友人の小峯 正人(こみね まさひと )もそう言っている。
ちなみに他にも女の子の友達二人ほど一緒に飛ばされていたのだが、現在、気絶していたりする。
しかたがなく周りを見回すと、ここは大きな部屋であり、俺達を囲むように四つの意思が転がっている。
それ以外には灰色の石づくりで、小さな窓があるだけの部屋だった。
やがて人がやってくる足音がする。
身なりの良い彼らはこの国の王族であり、魔王を倒すための勇者を召喚したらしい。
だが各々攻撃などに優れた特殊能力に加え身体能力の強化など様々な能力を持っていたのに、俺にはそれらがなかった。
だから、勇者として俺の、男の友人である小峯 正人 (こみね まさひと )、女の友人である、崎間 瞳 ( さきま ひとみ)、臼倉 織江 (うすくら おりえ)の三人で魔王退治に向かう事になった。
いい奴すぎて何だかこの三人、死にそうな気がした俺だが、正人の、
「俺、瞳にい良い所見せたかったんだ」
という自信の欲望について語られたので、なんとなく生存率が上がった気がした。
他にも、織江に俺は、帰ったら伝えることがあると言われたりもした。
しかもこの三人、俺を、自分たちが退治している間めんどうをみるよう、王様にお願いしていってくれた。
本当にい友人だった。
約束は守られなかったが。
三人が旅だと町から遠のいて次の日。
俺は数々の陰謀のようなものを聞かされ城を追い出された。
俺の能力は役に立たないのでここに置いておけないという理由だった。
仕方がないので俺は、プライドも全部投げ捨てて、必死になって縋り付いて幾らかの金を手に入れる。
あの王様にとってははした金であり、この国の姫にもみじめな異世界人と嘲笑された。
だが今は生き残ることが大事だ。
「どうにかお金を貰って逃げてこれたがこれからどうしていくか。まずは……特殊能力の練習からだな。そしてスローライフに突入しつつも情報を集めるのだ」
宿の一室でそう俺は、仲間たちの事を思い出しながら呟いたのだった。