表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノノケ少女 モノ子さん!  作者: 名御異 湯呑
可愛いあの子はモノノケ少女
9/9

おしまい

「えぇ……まだ何かあるの?」


「穢れをな、消さなあかん」


「モノ子さんがやってくれるんだよね?」


「手助け、はな」


「手助け?」


「穢れを消すためには、そのモノにきちんとした対処をした上やないとな。

 口裂け女にはべっこう飴、紫鏡には水色鏡、

 歪んだ神様には、きちんとお参りを繰り返す、みたいに」


「それをしないとどうなるの?」


「堂々巡りや。穢れは払われ、別のモノに移る。消えはせえへん」


「じゃあまとめると、私がお化けの噂話とかを菓子ねえに教えて、

 菓子ねえからそれをどうすればいいか教えてもらう。

 その後、モノ子さんに手伝ってもらいながら、きちんと対処する」


「せやなぁ。実力行使が必要になる場合も多々あるやろし。

 力比べをしたいってモノも、おらんとは限らん。

 そんな時こそ、まさにモノ姉の出番やな」


「私いなくてもいいじゃん! 菓子ねえとモノ子さんがやってよ!

 もう怖いのやだよ! もうやーだー! やだやだ!」


「子供か! はぁ……言うたやん。ウチにはもう霊感がないって。

 それに、モノ姉自身は自分の気配を自由に消せるけど、

 流石にウチはそうはいかん。

 その上もうモノ姉の気配が、がっつり染みついてもた。

 ウチまでおったら、警戒されてそもそも何も起こらん可能性も高い」


「何も起こらないんだったら、それでいいじゃん」


「そうもいかん。関係ない人が巻き添え食うやろ?」


「んー……それは確かに、嫌だけど……」


「もしかしたら、ウチらの知り合いや、家族まで巻きこまれるもしれん」


「そ、それは嫌だ! 絶対に!」


「そういうこっちゃ。こなちゃんは一方的な被害者ではあるけど、

 乗りかかった船、ちゅうことで力を貸してくれんか?」


「……分かった」


「あんがと」


 しぶしぶと言った様子で、幸向がうなずく。

 半ば強制的に、二代目のお化け退治屋がここに誕生した。


「最初は巻き込む気ぃなかったんやけどなあ」


「そうなの?」


「ウチらだけでなんとかしよ思とった。

 こなちゃんには勾玉とお札だけ渡してな。

 でもまぁ、こうしてこなちゃんに話すことで自分でも整理がついたわ。

 ウチには、もう無理なんやな。これが一番ええんやな?モノ姉」


 モノ子が菓子ねえの方を向き直り、しばらく見つめる。


「うん」


 しばらくの静寂の後、頷いた。


「……さよか。そらそうか。

 こなちゃんがあんなになっとるんも、昨日ようやく気付いたくらいやしなあ。

 情けない……ははは」

 

 菓子ねえは、目線を落として静かに笑う。

 諦め、自嘲、寂しさ。

 色々な感情が入り交じったもののように、幸向には見えた。

 静寂。

 幸向には、この静寂を破るための言葉が見つからなかった。


「っと、着いたわ」


 丁度、彩樫駅に到着した。

 幸向にとっては、駅員のアナウンスが救いの声に聞こえた。

 三人は駅から出る。


「じゃあ菓子ねえ、モノ子さん、またね」


 駅からであれば、不香田家と駄菓子屋は逆方向だ。

 今日は、いつものように菓子ねえと会話できる自信がない。

 そう思った幸向は少しだけ胸をなでおろした。

 が。


「……ねえ、なんで着いてくるの?」


「まぁまぁ、久しぶりにこなちゃん家に行こ思てな」


「え~……何か今日は疲れたし、今度じゃダメ?」


「んん、まぁウチは構へんのやけど……こなちゃんがええなら、な」


「なにそれ、どういう事?」


「こなちゃん家に結界でも張ったろうかと思ってな」


「菓子ねえそんなの出来るんだ!?」


「いやまぁ、正しい物を使って正しい手順を踏めば、

 誰でもそれなりの結界は張れるんやで?

 さらにモノ姉にもちょい手ぇ加えてもらうから、バッチリや」


「でもなんで結界なんて……」


「こなちゃんが独りでおる時間が一番長いのは、やっぱ家やろ?

 これからこなちゃんが立ち向かうモノは、家の中でもお構いなしやからなあ。

 せやから、こなちゃんがええなら」


「お、お願いします! 是非!」


「はいな、了解~。無料やで? 感謝してや~」


 結局、酒屋やらスーパーやらを三人で巡り、

 不香田家に到着したころにはすっかり夜も更けていた。

 家に菓子ねえとモノ子謹製の結界を張った後は、

 余った酒を菓子ねえが飲み始め酔い始め。

 すっかり気分の良くなった菓子ねえは、お化け退治の心構えやらなにやら、

 朝まで幸向に語りつくしたのである。

 次の日が日曜日で、本当に良かったと思う幸向であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ