表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノノケ少女 モノ子さん!  作者: 名御異 湯呑
可愛いあの子はモノノケ少女
8/9

そのはち

「綾樫町ってな。昔からそういう類の話が多いんよ

 物でなく、者でもないモノ、いわゆるモノノケの類の話」


「そうなの?」


「元から町に根付いとるモノもあれば、噂が噂を呼んで、

 新たにかたち作られたモノ、まぁ都市伝説みたいなもんかな。

 そういうものもある」


「都市伝説……」


 そういわれて幸向は、すぐにいくつか思い当たるものがあった。

 小さい頃は怖かったが、今はもう作り話だと思っている。思っていた。


「綾樫町な。たまあぁぁぁに、謎の傷病や行方不明、原因不明の怪死とかあるんよ。

 それはな、そういうモノと波長が合ってしもた人が犠牲になっとる。

 強力なモノや。霊感のあるなしとか関係あらへん」


「もしかして、今朝のニュースって」


 そう言われて、幸向はふと思い当った。

 今朝のニュース。珍しく町の近くで何かがあったようであった。


「お、冴えとるな。確証はないがそうかもしらん。

 モノ姉が神様にお仕置きした時に、穢れも払ったって言ったやろ?

 あれ、払っただけや。消えたわけやない。」


 そう言いつつ、菓子ねえが目を細めつつモノ子の方を見る。

 少しだけ皮肉めいた笑みも浮かべながら。

 モノ子はまたも菓子ねえを見ると、

 少しだけふん、と鼻を鳴らして目を逸らした。


「えーっと、話がよく分からないんだけど……」


「つまり、払われた穢れが町に広がって、強力なモノが力を増したり、

 かたちなきモノが新たに生まれたりな」


「あー、えー、それはつまり」


「こなちゃんも、そういうモノにこれから出会ってしまうやろなあ」


「っああ~! もぉおおお~!」


 幸向は頭を抱えた。

 せっかく霊感がなくなるという話を聞いたのに、

 それまでに命がなくなりそうだ。

 

「まぁ落ち着きや。そこで、ウチらの出番っちゅうわけや」


「……どういうこと?」


「それはやな……」


 菓子ねえが胸ポケットから煙草を取り出し、咥える。

 違う、煙草ではなくココアシガレットだ。流石は駄菓子屋。


「ウチな、駄菓子屋とは世を忍ぶ仮の姿で、陰陽師の跡継ぎやねん」


「え!? そうなの!? だからいろいろ詳し」


「ま、それは嘘やけどな。しがない駄菓子屋や。いひひひ」


「……」


 幸向が菓子ねえを睨みつける。

 モノ子も、少しばかりため息をついた。


「まぁまぁそんなに睨みなや……ただ、色々と詳しいのはホンマや。

 大学では民俗学の専攻でな。妖怪を研究しとった」


「……ホントにぃ?」


「ごめんごめん、これはホンマや。

 大学卒業ぐらいまで、霊感あったって言うたやろ?

 それまではな、モノ姉と二人でお化け退治みたいなことしててん。

 そういう知り合いが色々おるのもそういう事情や」


「そんなの、モノ子さんだけいれば万事解決じゃん」


「そう思うやろ? それがな……モノ姉、鈍いねん」


「鈍い?」


「……うるさい」


 モノ子、久々に口を開く。そしてじろりと菓子ねえを睨む。


「モノ姉までウチをそんなに睨みなや。ホンマのことやん。まあええか。

 とにかく、力はものすごい。

 でも悲しいかな、どこで何が起こっとるか、とかは分からへんねん」


「昨日はすぐモノ子さん来てくれたじゃん」


「あれはな、いひひ。ずっとこなちゃんに張りついとったんや」


「でも、直接見ればそういう事がいつ起こりそうってのは分かるんだ?」


「いいや、それも分からへん」


「そうなの?」


「簡単な話や。こなちゃんに何かあるまで、何日でも通うってだけ。

 よかったなぁモノ姉? すぐに事が起こ痛って」


 急に菓子ねえの頭ががくんと下がる。

 よくは分からないが、モノ子が何かしたようだ。


「って~……とにかくや。強力なモノが力を増してしもたわけや。

 それは、お守りやお札でも一時しのぎにしかならへん」


「じゃあ……どうすればいいの」


「まず、ヤバそうならお守りが教えてくれるから、捕まる前に多分逃げられるわ。

 それと、そういう類の噂話や被害を聞いたらいつでもおいで。

 ウチの経験と研究の成果を見せたる。大体の対処法なら教えられるはずや」


「モノ子さんがずっと傍にいてくれるわけにはいかないの?」


「モノ姉は人に憑くバージョンの付喪神みたいなもんやからなぁ。

 婆ちゃんからモノ姉を引き継いだウチからは、長い間は離れられへん。

 気づくとウチの傍に戻ってるみたいやねんな。

 ひい婆ちゃん曰く、ウチの血筋にしか継がせられへんしなぁ」


「そっかぁ……」


「そんなわけで、そういう類のものに出会ってしまったらまず逃げる事。

 後は駄菓子屋に来たらモノ姉を派遣するわ。

 で、今後はきちっと穢れも消して、それで万事解決。

 こなちゃんは、二代目のお化け退治屋やな」


「じゃあ要は、私がお化けを見つけて、モノ子さんが退治するってわけ?」


「そうとも言えるし、そうとも言えん」

 

 含みのある言い方で、なおも菓子ねえは語り続ける。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ