狭間に堕ちて、原罪を 共通①
―――――人は誰しも罪を犯すものだという。
「空海<そらうみ>!」
「はい?」
クラスメイトの人気者が声をかけてきた。
「明日の日直、空海だったよな?」
「はい」
「これ、先生から頼まれたんだ」
今日日直をやるはずだった男子が風邪で休みらしく、当番が私にくりあがった。
「じゃよろしく」
「わかりました」
「空海紅陸花<くりか>!」
怒り混じりの女子生徒の声がする。
「ちょっとツラかしなさいよ」
少女漫画にありがちな、人気男子のとりまき集団だ。
「嫌です。」
殴られるとわかっていて、ついていく馬鹿がいるだろうか?
「後でおぼえてなさいよ!」
学校が終わり、日直のアレを書いてから、私はまっすぐ家に帰っていた。
「ただいま」
返事がない。母はいないようだ。
買い物にいくと書きおきがある。
――――もうすぐ弟が帰ってくる時間か。
「姉ちゃんただいま~」
「おかえり」
母と弟は一緒に帰ってきた。
「ぐうぜんそこであったの」
「今日のごはんは鍋なんだよ~」
「うわー楽しみ!」
毎日三人でかこむご飯。幸せだ。
1年前父さんが事故で死んだときは悲しかったけど、いつまでも落ち込んでいたらだめだよね。
〔ニュースです。たった今、○○高校の集団が……〕
私の通う学校の女子生徒が複数名失踪したらしい。
「やだ、紅梨花の学校じゃない。こわいわね……」
―――――――
食事も済んで、眠る時間。部屋に入ると――――――
「あれ……」
電気をつけようとしたら、何もなくて、あたりは真っ暗。
「おかあさーん!?」
「困っているようだね、お嬢さん」
「あなたは……」
まるで神社の神主のような格好をした男性が、暗闇に浮んで現れた。
「ワタシの名は暹羅<せんら>、地獄の五大柱・夜閻魔の部下の一人だ」
「地獄?閻魔?」
「君はどういうわけか、地獄とウツツ世の狭間に堕ちたんだ」
「え―――――!?」