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高い垣根の塀が切れた所に門がある。古いが木製の立派な門である。その門をくぐると、石の敷き詰められた大きな庭が出た。どこかの日本庭園の様に、池があり、至る所に草花が植えられている。広いが手入れの行き届いた綺麗な庭である。その庭を越えると、引き戸の正面玄関にぶつかった。
「ただいまぁ。誰かいないのぉ?」
コトコが大きな声で言うと、家の奥からパタパタと人の来る音が聞こえる。
「お帰りなさいませ。コトコお嬢様。」
そう言って現れたのは、エプロン姿のいかにも家政婦といった感じの中年の女性であった。三人を見ると、少しいぶかし気な表情を見せて、
「お嬢様。そちらの方々は?」
と、コトコに聞いた。
「ただいま、霧木さん。彼等はわたしの友達よ? 花見坂からわざわざ来てくれたの。」
「それからこれ。神社から引き取ってきたから神棚に祀っておいて。」
コトコはそう言うと、持っていた包みを霧木と呼ばれた家政婦に渡した。
「お疲れさまでした、コトコお嬢様。私に言って下されば、行ってきましたのに・・・」
霧木はそう言うと、うやうやしく包みを受け取った。
「いいのよ。霧沢のおばあちゃんと霧島のおじいちゃんの様子も見れたし、もともと霧宮の人間が取りに行くしきたりだしね?」
コトコがそう言うと、壁に掛かっていた壁時計が時間を知らせる音を出した。
「ボーン・・・ ボーン・・・ ボーン・・・・・・・」
十一回鳴った。十一時である。
「三人とも昼食はどうするの? この村にはコンビニもレストランもないよ?」
コトコが気が付いたように言った。
「もし良かったらうちで食べていきなさいよ?」
コトコが気持ちよく言うので三人は、
「じゃあ、お言葉にあまえて・・・」
と、すんなりと受け入れる。
「そう言えば、テイコとネイコはどうしたの?」
コトコが言った。
「テイコお嬢様とネイコお嬢様はお二人で、霧原さんの自宅へ行っていますが・・・」
霧木が答えた。
「またトシヤ君と遊んでるのかな? じゃあわたしが呼んでくるから、お昼はよろしくね?」
コトコはそう言うと、結局家には上がらずに、
「さっ、行こうか?」
と、三人を促した。
「どこ行くの?」
ケイイチが言う。ショウゴは相変わらず大人しいが、昼食が約束されたのがうれしかったのか、
「いいじゃん? せっかくだから案内してもらおうぜ?」
と、少し元気になったようである。
「おっ? やっと、調子がでてきたな?」
タマキがショウゴの肩を叩いて言う。
「じゃあ、ちょっと遠回りして行こ? 小さい村だけど、意外と見るとこあるのよ?」
コトコはそう言うと、ショウゴとケイイチの間に入り、二人の肩に手を廻した。そして、タマキに向かって、
「いきましょ?」
と、促して、家を後にした。
続く