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霧鳥村忌憚  作者: 睦未
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     霧鳥村忌憚


     1


 その日の朝一番の列車に乗って、三人は行ける所までの旅に出ていた。

 

 三人は中学二年生。小学校からの付き合いである。夏休みになったばかりのちょっとした冒険だ。各自、小遣いと弁当、ちょっとした荷物を持参して、目的地を決めずに行ける所まで行ってみようというのである。


 天気は晴天。夏時間なので、五時前だが結構空が明るくなってきている。

「とりあえず終点まで行こうか?」

 そう言ったのは矢口ショウゴである。活発な性格で、学校で何か騒ぎがあると、大抵関係者の一人。といった元気な少年である。あまり計画性がなく、行き当たりばったりの行動が目立つ。そのくせ正義感は強く、まがった事は大嫌いといった性格である。

「んー? いいんじゃない? 行き先も決まってないんだから・・・」

 寝ぼけ眼で答えたのは沢田ケイイチである。クラス一のマイペース男。ある意味他人に流されないので、時々周りが驚くような発言や行動を起こす事がある。が、大抵はただののんびり屋といった感じである。今朝は朝早かったので、非常に眠たそうである。

「バカ言うなよ? この電車の終点は上小路だぜ? 俺達の学校の駅じゃないか。乗り継ぎ路線もないし、学校にでも行くつもりか?」

 一人、地図を広げて言ったのは佐藤タマキである。中学生にしては、落ちついていて、二人を引っ張る役を請け負っている。頭もよく学年でも上位クラスである。

 一年の時は三人ともクラスが違ったが、家が近いのもあり三人で良く遊んでいた。それが、二年にあがると皆同じクラス人なり、この「行ける所までの旅」となったのである。

「冗談じゃない。補習もなくてラッキーな夏休みになんで学校に行かなきゃなんないんだよ?」

 ショウゴが本気で嫌がる。

「でも朝一の、しかも夏休み中の誰もいない学校ってのも面白いかもしれないよ?」

 ケイイチがのほほーんと言う。

「どっかで乗り換えしようぜ?」

 ショウゴが路線図を見ながら言う。と、タマキが指差して言う。

「水沢で乗り換えしようぜ? この水霧線て路線が長い割に電車賃も意外と安いんだぜ? それに乗った事ないんだよね。」

「俺も乗った事ないな・・・ ケイイチは乗った事あるか?」

「んー? ない。あれってほら、山の方に行くやつだろ? 用ないもん。」

「だったらちょうどいいじゃん? じゃあ、次の水沢で降りよう。」


 朝、五時五分。三人は顔を見合わせ、頷き、この先への小さな冒険に胸膨らますのであった。


     続く


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