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08(終) 姫乃「私たちの戦いは……」

更新を待っていてくれた方々、もし今でもいらっしゃったら、長年放置してしまい、申し訳ございませんでした。

この話で一応の区切りとなります。最後の一話、是非お楽しみください。

「新人戦!?」


 剣道部が始動して一月半が経過し、連休明けの練習終わり。唐突な部長のアヤ先輩の言葉に耳を疑った。だって、新人戦っていえば、普通夏総体が終わったあとの、秋くらいにやるものでしょ。


「ああ、すまない。言葉が足りなかったな。正確には市内で開催される小さな大会なんだが、例年うちは一、二年で団体戦に挑むんだ。当然、他校は三年を含めたフルメンバーで来るぞ」


「そんな……どうして先輩方は出ないんですか?」


 確かに一年生は美華、姫乃、婬魔恵美、双子淫魔の優奈、里奈と五人揃っている。出れるには出れるけど、三年を欠いたメンバーではやはり心許ない。


「うふ、それはねえ、大会が五月の第三土曜日だからよ。あとは、わかるよね?」

「五月の第三土曜日……あっ、三年生は遠足の日ですか」


 いち早く気づいた美華が、声をあげた。動揺してるけど、それを必死に隠してるような顔。可愛い。


「ご名答っ! うちの学校も例年五月の第三土曜日に三年の遠足が組まれるのよ。だから、試合は君たちに任せるよ」

「大丈夫だ。私たちも一年の時、二年の先輩と一緒に出て優勝してるから。去年は、ほら……出れなかったけど」


 この剣道部には、先輩は三年生が二人。二年生はいない。剣道の団体戦は、三人以上いないと出場できない――


「琴美さん、それ余計にプレッシャーですよ」


 妹以外の誰にでも強気な優奈が声を上げた。態度は強気でも、その声はどこか弱々しい。優奈だけじゃない。私も、恵美も、里奈も、皆不安でいっぱいだ。そんな重い空気を打ち破ったのは、美華だった。


「でっ、でも! 私たちなら大丈夫だよ! 優奈やメグもいるし、里奈もやる時はやるし、姫乃だって返し技一撃必殺だし! 私はもっと頑張らなきゃだけど……」


 最後の方はよく聞こえなかったけど、美華の言葉で私の――皆の気が引き締まる。本人には自覚ないみたいだけど、美華のそういうところには、皆結構助けられてるんだよ。


「よく言った美華。私も同感だ。正直私たちの代よりも分厚い布陣だと思ってるぞ」

「だからそれプレッシャーですよアヤさん」


 優奈は相変わらず先輩相手にも臆さないなあ。


「そうだった。ま、楽しんでこい」

「はい!」

「それと、ポジションについても発表するぞ。強さもあるが、それぞれの適正も考えて組んである。これで戦ってみて、感想を聞かせてほしい」


 剣道のポジションは、順番に先鋒、次鋒、中堅、副将、大将となる。一般的には先鋒、中堅、大将を強い人で固めるのと、先鋒は素早く動き回ってチームを鼓舞する人、逆に大将はどっしり構える人といったように、戦法や性格による向き不向きがある。私のような小柄でフィジカルの弱い人は、基本的に中堅や大将には向かなかったり。


「先鋒、優奈。次鋒、里奈。中堅、恵美。副将、姫乃。大将、美華。以上だ。異論は無いな?」

「ちょ、ちょっと待ってください。私が大将!? 恵美や優奈じゃなくて?」

「そうだ。言っただろう、強さだけじゃなくて適正もあると。確かに美華は二人より弱いが、メンタルが強くて、どんな劣性でも動じず全力を発揮できる。そして基本がしっかりしていて、どの技も一通り決められる。適任じゃないか?」


 美華は、自分のこととなると途端に自信を無くしてしまう。私は、美華のオールマイティーに対応できる柔軟性、強く芯の通ったメンタルの強さ、そして皆に――私にも気を遣える優しさ。そんな美華だから、私は大好きなんだ。まだ出会って一月半ほどしかないけど、美華の強さや人としての魅力について、よくわかっていると思う。だから、引っ込み思案な私もここで声を掛けなきゃって思うんだ。


「そうだよ。美華は器用貧乏だって言うけど、それってどんな相手にも対応できるってことじゃん。凄いことだよ!」

「そうそう! 他に適任はいないよ!」


 恵美も同調した。私たちの言葉に、美華の顔から不安が拭い去られ、自信が満たされた。こういう切り替えができるところも、強みだと思うよ。


「じゃあ私頑張るね!」

「おう! ま、正直美華と姫乃の出番は無いけどな。そうだろ、恵美」


 優奈と恵美は、戦ったことがあるらしい。試合には恵美が勝ったけど、勝負には優奈が勝ったって、恵美は言っていた。


「勿論! まあそれは、里奈次第だけどねえ」

「えっ、大丈夫だよお」


 里奈は、強さのバラつきが激しい。調子のいい時は先輩からも一本取るのだが、そうでない時には私や美華相手でも二本負けしたりする。でも彼女が万全なら、速攻の優奈、正統派攻撃型の恵美の三人で本当に勝負が決しかねない。確かにこれは、優勝が狙える布陣かも。


「それじゃあ、試合まであと二週間。気合い入れていくよーっ!」

「おーっ!」




 新人戦、そして夏総体。高校剣道部は、まだ始動したばかり。そう――


 私たちの戦いはこれからだ!

ご愛読ありがとうございました。高階珠璃先生の次回作にご期待ください!



なんてね。強引に打ち切りという形で締めてしまうことをお許しください。


剣道×百合という挑戦をしようとこの話を始めましたが、何とろくに話の構想が無い見切り発車。いやはや、未熟だったんですねえ自分。その反省を踏まえて全編の構想を練って書いたのが『貴女への地図』です。第三部は構想だけで本文が伴っていないですけど。

各方面でも言っている通り、なろうでの活動自体に一区切りつけようと思い、未完で長らく放置してしまったこの『今日も彼女らは剣を振る』を締めることとなりました。


完結に時間がかかってしまいましたが、ご愛読ありがとうございました!




2018/08/31 高階珠璃

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