パート②
第二段!これで完結です!ご覧ください。
-said Kazuto-
ふら...と、てるが立ち上がる。
コソコソと耳打ちしていた俺たちはそれに気づかなかった。
「・・・にゃーにコッソコソやってるんだぁー!!」
てるの一際大きな声に、俺たちはびっくりして顔を上げた。
そしてそこには、頬が少しピンク色にして、ふわふわと笑うてるが立っていた。
「?!」
しいなは目を見開いててるを見ている。
「な、てるちゃん?」
ろんは何事かと頭にはてなを浮かべて首をかしげた。
「てるやん・・・?」
玲也はキョトンとてるを見上げた。
・・・ほら。
「・・・だから言っただろ」
俺がぼそっとそうこぼすと、てるは喜々とした表情をした。
「かーずと~?なぁにをいったのっかなぁ?」
「何も言ってない。それより水飲んで」
「えー、やーだ」
「やだじゃない、飲め」
そういっても、「やーだやーだ!!」と言って駄々をこねるてる。
__そう。てるは、お酒を飲むと謎の暴走を遂げるんだ。
暴走・・・っていうか、変貌が正解のような。
暴走を知ったのは、多分、愛兄が亡くなる年の夏だったかな。
***
ある日の昼飯。俺、てる、愛兄でてるの家で起きた出来事。
その日の昼飯がそうめんで、育ち盛りな俺と愛兄は「そうめんだけじゃ物足りないな」とこぼしていた。
てるはそれを聞いてか、冷蔵庫を開けてなにか探り初めた。
少ししたら、てるは冷蔵庫から顔を離して、にっこりとうれしそうに笑ったんだ。
愛兄と俺は顔を見合わせて、「どうした?」という表情でてるをみてたと思う。
てるは冷蔵庫から、ピンク色の缶を取り出して、こっちまで持ってきた。
「これ、炭酸だからちょっとはお腹膨れるんじゃないか?そうめんだけじゃ足りないっぽいし」
そういって、てるはその缶を俺ら二人に差し出した。
愛兄も俺も、その缶をじっ...と見つめてから、同時に口を開こうとして、会話をもつれさせてしまったんだ。
「「あのさ」」
「あ、あぁ、どうした?和」
「いや・・・愛兄が先に言って」
二人で譲り合っていると、てるは少しふてくされたような表情をして、自分が差し出した缶を手にとった。
「んもう、二人が飲まないんなら私が飲むからな!文句なし」
そういって、プシュッと軽快な音をたてて缶を開けると、ぐびぐびっと2口ほど飲んでいく。
俺ら二人は、「あぁ!?」と大きな声を立てて同時に立ち上がった。
「ん?・・・あれ...」
てるは缶をカタッと机において、ふらりと目をうろつかせた。
俺と愛兄は顔を見合わせて、「どうしよう・・・」と同じ思いをした、・・・はず。
...そう、そのとき、てるが持ってきた『炭酸』と称したジュースは、『桃ジュース』ではなかったのだ。
『桃とチェリーの秘密カクテル』という、なんともうまくなさそうなカクテルの缶だった。
***
・・・ここからは想像そればすぐわかると思う。
そのまんまだ、そのまんま暴走したんだよ。
俺と愛兄で必死に止める・・・というか、誘惑から逃げてた。
...懐かしく悲惨な思い出だ。
「ろーんっ、なぁにこそこそしてたのー?」
「いやぁ?なんも言ってないよ~」
「うーそだぁ!!そーんな嘘つく子は、こーっだ!!」
「なに、んぁ・・・・!?」
ろんに顔を寄せたかと思うと、そのまま自分の唇をろんの唇に押し当てた。
・・・お、おい?
「てる!?」
「てるやん!?そ、それはだめだろ!!」
「て、てる・・・?」
俺と玲也でてるをろんから引き離す。
てるはまたしても喜々とした表情をして、「ふっふーん!!やってやったぁ」と満足気。
「はぁ...はぁ...な、なんだ、今の・・・?」
「・・・さすがに今のはお前を恨めない。こいつが悪い」
「だ、だな」
ろんは椅子の背もたれにヘトヘトと体を預けて、滑り落ちている。
そらびっくりする。
「みーんな言わないんだったらぁーみーんなお仕置きだよー!」
「ちょ、てるやん!それはだめだって!!」
「てる、落ち着け」
パタパタと足踏みをするてるを後ろから抱きしめる・・・ではなく拘束。
これ以上動かれると俺らの身が危ない。
「かーずーとーはなせー!!」
「いーやーだー。ほら、部屋行くぞ」
てるを抱き上げて、俺は部屋へと急いだ。
「和斗・・・頼んだぞ」
「ろん・・・死ぬなよ」
パニックでわけが分からなくなっているろんは、俺に親指を立てた。それも力なく。
そして流されてよく分からないこと口走った俺。
どこぞの別れだよ。
******
「んぐぐー!!かーずーとー!!なんでここなのー!?」
「はぁ・・・。お前が暴れるからだろ、アホ娘。ほら、水とってくるから、おとなしくしとけ」
俺はてるをベットに座らして、部屋を出ようとした。
・・・んだけど。
「...やーだ」
「え?」
ドアノブをつかむのとほぼ同時ほどに、俺はすそをキュッとつかまれた。
「てる?」
「・・・行かないで」
振り向けば、すそをつかんで、上目遣いで見上げてくるてる。
身長差27cm・・・だけど、その上目遣いはズルい。
しかも、酒のせいで少しほてった頬は、思ったよりエロい。
・・・畜生、俺じゃなかったら襲ってるところだ、アホ娘。
「ごめんな、けど水飲まないとしんどくなるから」
「んっ・・・、わかった」
俺はてるの額にキスを落とす。
キュッと目をつぶるてるは、いつもより何倍も可愛くて、正直理性保ててる俺は凄いと思う。
すそを離したてるは、ふらりとベットへと戻っていった。
「まっててな」
俺は一言そう残して、部屋を後にした。
******
一度だけ、てるのお母さんから話を聞いたことがある。
__てるには、今、父親がいない。
何を理由に出て行ったかまでは知らないが、てると二人きりになった日に、てるだけを残して出て行ってしまったという。
...さっき、俺がてるを部屋に残して出ようとしたとき、引き止めたのは、そのときの記憶が蘇ったんだと思う。
どういう状況下で置いていかれたのかは分からないが、そんな気がした。
上目遣いで見上げるてるの表情は、どこか悲しげだったんだ。
だから、少しでも安心してもらうために、俺はキスを落とした。
__お前の不安を、俺はいつになったら取り除いてあげれるのだろうか。
******
1階に下りると、今だにろんがソファでへばっていた。
「大丈夫か?ろん」
「なぁ、和ちゃんよ。俺はさぁ・・・てるちゃんを甘く見てたよ・・・」
ろんがひしと話し出す。
「甘く見てた?」
「だってあの子・・・酒飲んだとはいえさぁ、あのエロさは尋常じゃね~よ。俺ってすごいよなぁ、あの場で理性保てたんだよ」
お前それ俺が思ってたことと一緒じゃないか。
なんだ同士。
「なぁ、ろん君よ。お前と俺はまだああいう境遇に対処できるけどさ、ホラ見てみろよ、あそこにポカンと口を開けたまま、15分硬直しているしいな君を」
玲也は、椅子に座ってで呆然と硬直しているしいなを指差す。
指された本人は結局呆然としていた。
免疫ってないよな、だってしいなは高1だ。
「しいな~お前が驚くのも無理ないぞー。女性に免疫がある俺でさえさぁ、へばってるんだからなぁ」
ろんはのらりくらりとしいなに話しかける。
しいなはろんの声にハッと我に返ったようで、俺たちを振り返った。
「てるは?!」
「上で休ましてる」
そう言うと、しいなはホッと一息ついた。
「なんでため息なんだよ~、もしかして自分がキスされたかったのかぁ?」
「ち、ちちちげぇよ!!!ただあんなてる見たことなかったから、そ、その・・・まぁ・・・」
あ、この子完全に照れてる。
初々しいと思う、こういうやつは。
・・・俺は、荒れてる時期あったからな。女と付き合ったことは何度もある、体をあわせたことも何度かある。
__ただ、『幼馴染』という人物は俺の頭からはなれることはなかった。
だから、すぐに別れて、すぐに関係も断ち切ることが多かった。
いまはもう、そんなことしない。
「和斗、水もっていくんじゃねーのかー?」
「あぁ、そうだった」
グラスの半分ほどにミネラルウォーターを注いで、てるがいる部屋に急いだ。
***
「ただいま、ほら水」
ベットで寝っ転がっているてるに水を渡す。
酔いがさめてきたみたいで、頭をコツコツとたたいている。
少し痛いんだろうな。
「大丈夫?」
「・・・あ、あー・・・わっかんない」
ふわふわと返事をしてから、ごくごくと水を飲み干す。
飲みっぷりは中々だ。というかあんだけ暴れたんだ、喉も渇いてるよな。
「落ち着いたか」
「うん、すっごい頭痛い」
「・・・自爆だ、アホ娘」
自爆のなにものでもねぇよ。
そんなことを思いながら、てるの隣に腰を下ろす。
「てる、髪伸びたな。前まで肩までしかなかったのに」
「あー・・・そうだったなぁ、だいぶ伸びたね」
腰まである髪をくるくると弄ぶ。
「ね、和斗」
「ん?」
てるの髪をぼーっと見ながら、さらさらと触っていると、てるは俺と目を合わせてきた。
少しびっくりして、首をかしげる。
「・・・和斗ってさ、小さい頃から、無機質な表情してるよね」
本当に、すごく疑問だ、とでも言うようにてるは言う。
__確かに、よく言われることだ。
『和斗君ってあまり笑わないわね』
『もう少し社交的な表情じゃないと、ねぇ』
・・・言われた時期もあったな、そういえば。
・・・けど、仕方ないんだよ。
__笑うのが、怖いんだ。
表情で心を見透かされるのが、怖いんだ。
だから、俺は隠す。
心の中に、自分を。
自分の感情を、隠すんだ。
そのせいで、俺は無機質な表情のまま、息をしている。
正直自分でもうんざりだ。
表情豊かなてるが、たまに、ほんの極まれに、すごくうらやましく思える。
***
__俺は、拾われた子。
俺の母親と父親は、養護施設にいた小さな俺を引き取ったんだ。
はじめは父さんも母さんも怖かった。
・・・虐待を受けてた俺は、大人が怖くて、毎日おびえてすごしてた気がする。
たばこの煙の中、必死に自分の身を守る自分が馬鹿々しかった。
けど、痛いものは痛い。
でも、表情に出すと、もっと面白がる。
心を見透かして、ひどい悪態をつかれる。
怖い、怖い、怖い。
やめてくれ、痛いのは嫌いだ、怖いのは嫌いだ。
__見透かさないで、お願いだ。もう、やめてくれ・・・。
...その一心で、俺は家を出た。
何も持たず、寒い外を駆け抜けた。
__そして、どこかで、ばったりと倒れて、病院に運ばれて。
『おうちは?お母さんに電話しよう』
『・・・いない』
『・・・え?』
『母さんは・・・いない。父さんも、いない』
『・・・そ、そうか。』
そんな会話をしたのは気のせいだったか。
それから養護施設に預けられた。
まだ、小さかった俺は、自分の歳さえ大してわからなかった。
けど、ただ、痛いと怖いはわかった。表情を作りたくないと言う自分の心をよく理解していた。
__今の母さんと父さんが、俺を引き取ってくれて、時がたって、幼馴染という存在ができて。
その幼馴染が大切な存在になって。
けど、愛兄が、死んで。・・・義理の兄でも、大好きだった兄貴が死んで。
俺は、俺の感情が分からなくなって。
『・・・どうやって、笑うんだっけ』
そうつぶやいた日が何度あったか。
...今でも、表情を作るのが難しい。
無機質になりたいわけじゃないんだ。豊かな表情でありたい。自然に、てるに笑いかけてやりたい。
十分こいつも、傷を負っている。
俺とは違う、深い傷を負っている。
救ってやるべきなんだ、俺は。
__てるの幸せを願うから。
***
「...怖いんだよ」
「怖い?」
てるはコテンと首をかしげた。
そのしぐさも、小動物っぽくてどうにも可愛い。
「_俺、実はさ、拾われた子なんだ」
俺は、てるから顔をそらして、そう告げた。
・・・怖い。大好きな人に嫌われるのが、きっと、今の俺には一番怖い。
軽蔑、するだろうか。
ぎゅっと目を瞑る。
返事が怖くて、思わず手に力が入る。
「ふーん、そうだったんだ。まぁ、通りで似てないとは思ってた」
てるはなんでもないように、なんのつまりもなくそう言い放つ。
そ・・・そ、そんな返事で、いいのか?
「軽蔑、しないのか・・・?」
てるの表情を見ようと、そらしていた顔を向ける。
__なんでだよ。
「・・・なんで、そんな優しい顔してんだよ・・・」
...てるの表情は、いつも以上に、とびっきり、極上に甘かった。優しかった。
その心に、なにを秘めているんだ?
なにを考えて、そんな表情をしてるんだ?
ここは軽蔑だとか、驚きだとか、哀れみだとか、そんな感情が湧き出るものじゃないのか?
「優しい?特に意識してなかったけど・・・どんな表情がご希望だったのかね」
「ご、ご希望っていうか・・・もっと、こう、驚いてるとか、哀れんでるだとか、・・・そういうの、想像してた」
そう言うと、てるは「なにいってんのこいつ」みたいな目で俺を見つめてくる。
な、なんだ、俺変なこと言ったか・・・?
「なんで驚くの?なんで哀れむの?馬鹿じゃないのあんた」
「は、はぁ?!いや普通そうだろ!!俺は拾われた子なんだよ!!親に捨てられた、醜くて汚い子供なんだよ!!」
俺は一際大きな声で、てるに言い放つ。
てるは、表情を崩さずに、ずっと、優しい顔をしていた。
「は?拾われたから汚いの?醜いの?え、あんた馬鹿でしょ」
「だ、だから・・・!!」
俺は必死で、てるに伝える。
醜いんだ、汚いんだ、痛いに絶えられなくて、怖いことが嫌いで、それで、それで___
「親に捨てられてても、捨てられてなくても、和斗は和斗でしょうが。そこに親子関係は存在しないよ」
そう、言い切って、満足げに笑うてる。
俺は、なにも言えなくなる。
__満足げに笑うてるの目は、優しくて、強い。
「和斗、前の親御さんとなにがあったの?」
小さい子供に、聞くような感覚。
小さいころに、「僕、どこへいくの?」そう聞かれる感覚。
「......虐待、受けてたんだ。父も、母も。・・・家は、臭くて、痛くて、怖くて、それで、家を飛び出したんだ」
「養護施設には、自分で、自分の意思で行ったの?」
...自分の、意思?
違うと、思う。
あまり覚えてはいない。気づけば養護施設のお姉さんやお兄さんに、とびっきりの笑顔で「遊ぼう」と誘われていた。
「・・・覚えてないんだ、その頃のこと」
「そっかー・・・。けどさ、和斗」
てるは俺の肩に、こつんと頭をのっけた。
「家を飛び出したのって、和斗の意思だったでしょ。ていうことはさ、拾われた子であっても、捨てられた子じゃないんだよ」
「どういう...」
「和斗は自分の意思を優先して、自分の意思で家を出た。行き先は決まってなくても、恐ろしい親元を離れて、
正解の道を走った。それでいいじゃない。何が悪いの?醜くない、汚くない。
そんな親元にいたのに、汚染されず、きれいな心をもって走れた和斗はえらいよ。むしろ尊敬の目で見ちゃうね、私は」
そういって、てるはにっこりと、笑った。
「確かに、怖くなると思う。また傷つくのが嫌で、自分を守りたくなるよ。けど、だけどさ。和斗、小さい頃より笑うようになったよ。
時々見せる苦笑いだって、呆れ笑いだって、それみんな和斗の表情のひとつなんだ。だから、今のままでいいと思う。
怖いものは怖い、私の意見としては、別に克服しなくてもいいと思うんだよね。だって、それが和斗じゃない」
...これが、俺。
確かに、それはそうだ。
けど、でも。
「・・・俺が無機質なままじゃ、てるを幸せにできない...」
てるの幸せを、一番に願ってるんだ。
だから、俺は笑わないといけない。
「はぁ?あんね、私十分幸せだから。ていうか立ち位置間違えてない?!私が太陽、和斗は照らされる人。和にてる愛だよ、和にてる愛」
てるは、「そんなのもわかんないのか」とでも言いたげに、俺をにらんでいる。
...立ち位置、か。
・・・確かに、そうかもしれない。
確かに、俺の立ち位置は、てるをてらしてやることじゃないかもしれない。
「和斗は和斗だよ。私はそのままの和斗が大好きだよ」
そういって、屈託のない笑顔で俺に笑いかける。
...その『大好き』の中に秘められてるのは、どんな感情なのか。
「・・・はぁぁぁ...」
俺は大きくため息をつく。
ほんっとうに。真面目に疲れた。どっと肩が重くなる。
「やっぱ俺、てるには勝てないな・・・」
「そう?・・・まぁ、いつか勝てるんじゃない?」
立ち上がりながら、少しドヤ顔気味で言うてる。
おいおい、ドヤ顔する場所じゃないだろ。
「__よかったね、おばさんと、おじさんと、愛兄ちゃんに出会えて。和斗は、幸せものだ」
ドアの前で振り返ったてるが言う。
...あぁ、そうだな。
本当に、よかった。
******
「と、言うわけで・・・ご迷惑おかけ致しました」
てるはぺこりと頭を下げる。
ソファに座ったろんと玲也、椅子を反対向けに座るしいな。
酔いが覚めて通常通りのてるに少しホッとしているみたいだ。
「気にすんな~、びっくりしたけどなぁ」
「いや、あの・・・何をしたかまったく覚えてないんだけどほんっとうにすみませんでした・・・」
ろんは紫メッシュが入った長い髪を揺らして、ケタケタと笑う。
「あれよ~、原因はこいつだからなぁ~。ある意味、てるちゃんは悪くね~よ」
そういって玲也をつんつんとつつく。
あぁ、確かにそいつのせいだな。勧めたやつそいつだしな。
「えー俺のせいかよ!!だまされて飲んだのてるやんじゃねーかよー」
「お前・・・てるちゃんが酒とジュースの見分けつくと思うか?」
「思わねぇからすすめたんだろ」
「だと思ったわ」
玲也からのとんでも発言に、てるは呆然としていた。
「・・・なんか、謝った損したよね、これ」
「まぁ・・・いいんじゃないか」
キスしたのは事実だからな。
てるは知らないけど。
「て、てる、なぁ、てる」
「ん?なんだい、しいな」
てるの服の袖をひっぱって、しいなはてるに耳打ちをした。
『な、なぁ、てる、ほんとに何も覚えてない?』
『うん、まったく』
『そ、そうか!!・・・よかった』
『え?』
『な、なんでもねぇよ!大丈夫!!』
コソコソ話が終わったらしいてるは、首をコテンと傾けて、「なんだったんだ」みたいな顔をしている。
大方、自分のやったこと覚えてないかもう一回確かめたってところだろう。
しいな、てるのこと好きだしな。
絶対あげないけど。てるは俺がもらうけど。
__てるを幸せにできるの、俺だけだと思ってるから。
「んま・・・一件落着したところで、プレゼント回し、しますかね」
玲也がポンッと手を叩く。
「そうだなぁ~続きときましょうよ~」
ろんのフラフラした口調が部屋を充満させる。
「今年は絶対てるのを・・・!!」
「小細工はだめだから」
「・・・うん」
てるとしいなの、本日二度目の会話が耳を通過する。
「さて~、今年は誰のがあたるかねぇ~」
「俺のとっておきのプレゼントがあたることを祈るんだな!」
「断る」
「今年は誰のをご希望かな!」
「さぁ...誰がいいかね。てるは?」
「私?うーん...もう十分、今日はお腹いっぱいだからなぁ」
「お腹いっぱい?」
「和斗君のせいでお腹いっぱいなんです。あ、意味深じゃないからね」
てるがにっこり、俺に笑いかける。
__その表情は生き生きしていて。きらきらしていて。
俺を、照らしてくれて。
「...ありがとう」
和にてる愛に、
「どーいたしまして」
愛されて。
******
「...ありがとう」
照れくさそうに私を見る。
__君が見せた表情は、極上の、笑顔。
**END**
I'll see you again So.
柊玲雄