パート①
私がアナログで書いてた小説の特別バージョンです。ご覧ください
はらほれと雪が地上に舞い落ちる。
商店街に出れば、そこかしこイルミネーションだらけで、その周りでカップルがしっとりとこの夜をすごそうとしている。
__Merry X'mas.
今日はクリスマス、つまり25日。
そしてホワイトクリスマス。
商店街に飾ってあるクリスマスツリーに雪が均等に振って、イルミネーションと一緒にきらきらと光っている。
「てるちゃーん?どうしたの?」
「え?あ、なに?」
完全に周り見てボーっとしていた。
周りに圧倒されてた(白目)
私の顔を覗き込んで、少し心配そうに訪ねてくる。
大丈夫だよ、周りに圧倒されてただけなんだよ(白目)
「あんまりボーっとしてると周りにぶつかるぞー。まぁボーっとしてなくてもぶつかるけど」
「それサラッとdisってますよね?ですよね?」
「なんのことだろうか!!」
クリスマスにdisられるとか・・・なんだこれカオス。
クリスマスなんだからもう少し優しくしてくれてもいいじゃないか。
あ、無理だって?知ってたよ。
「ぶつからないように俺が手繋いどく!」
「い、いやぁそれはちょっと・・・」
「どうして?いいじゃん!!」
「うーん・・・えーっと・・・」
恋人同士じゃないのに繋いじゃだめでしょうが
まったく、懐いてくれるのはいいけどそのとんでも発言をなんとか__
「手冷たい。手袋忘れた?」
「ふぁ?!あ、あぁ・・・わ、忘れた、うん・・・」
「ん、そ」
あ、あの・・・突然手つかむのやめようか!!
びっくりするだろ!なっ!
・・・そんな心は伝わりませんでした。
「和斗ー?抜け駆けはだーめ」
「あ?」
「そうだなぁ、抜け駆けはずりぃ」
「・・・」
「そうだそうだ!!和斗のくそ野郎!!」
「だまれ」
相変わらず仲いいな、まったく。
そんな君たちが好きですよ、likeでね、like。
******
__公立校北沢高等学校2年生、葉月てる。
葉月ひがという兄を持つ全体的にそこそこな私。
兄貴と名前をつなげたら、『ひがてる』になるんだよ、すごいでしょ?
私が生まれてすぐ父さんが亡くなって、けど母さんが父さんがいなくても家族はつながってるっていう意味合いでつけたそうだ。
ちなみに、母さんの名前は葉月みな。『みなひがてる』
「あとなに買うんだっけ?」
「ケーキとプレゼント交換用のプレゼント」
「了解よー」
私の右隣で楽しそうに歩くのは、志野ろん、高校3年生。
志花堂というお花屋さんの長男で、フラワーアレンジメントがすごくうまい人。
とある事故で左目を失って、今は眼帯をつけて生活してるんだけど、少し厨ニくさい。
「てるやんは今年なに買うの?」
「うーん、まだ決まってないんだよね。玲君は?」
「もちろん決まってないっ!」
「い、いやドヤ顔で言われてもなぁ・・・」
私の前でふらっと歩いているのは、築木玲也、高校3年生。
黒い髪に紫のメッシュをいれていて、目つきは少しばかり悪い玲君。
それでも笑うとふわっとしていて、とても優しい人。
親御さんがお医者様で、将来病院をつぐそうだ。
「俺は今年こそてるにプレゼントやるんだ!」
「うーん・・・まぁ、くじだからなぁ」
「そこを当ててみせる!」
「・・・小細工だめだからね?」
「・・・(´・ω・`)」
する気だったのか。
(´・ω・`)としながら私の斜め前を歩くのは、志野しいな、高校1年生。
その名の通り、ろんの弟で、超チャラ男。
すごく私に懐いていて、可愛いんだけどちょっとしつこい子。
亡くなられたお父さんの形見である金髪の髪は透けるように明るくて、とても綺麗なんだ。
「って和斗!いつまでにぎってんの?もう大丈夫だってば」
「でも冷たい。てる冷え性なんだからカイロとか持ち歩けってば」
「仕方ないでしょ、忘れるんだし」
「じゃぁ俺の手カイロ代りな」
「はぁ?!」
私の隣でカイロ代わりとかいって手を握っているのは、鈴野和斗、高校2年生。
赤ちゃんのころからの幼馴染で、私と一緒に行動することは今でも珍しくない。
外見だけ見れば極上のイケメン、とんとイケメン、されどイケメン。
つやつやの黒髪と綺麗な顔立ちはもうなんと言おうか、私の顔面がクズ化してくる具合だ。
「ケーキは最後に買おうか、先に買って落としちゃ元も子もないしなぁ」
「そうだねー。先にプレゼント買おう」
そして、今日は皆でクリスマスパーティー。
ろん、玲君、しいな、和斗、私で毎年やる恒例行事である。
「んじゃ、とりま一旦解散な。5時にメイン広場集合で」
『ういー』
バラバラと散らばり、皆プレゼントを買いに歩いていく。
私はそんな後姿を見ながら、少しだけメイン広場でボーっとしていた。
...もうクリスマスかぁ。
__愛斗兄ちゃん、メリークリスマスだね。
鈴野愛斗、今年で21歳。
・・・生きていたら、の話。
愛斗兄ちゃんは、和斗の4歳上のお兄ちゃんで、私の幼馴染でもあった。
本当に可愛がってもらって、私は愛斗兄ちゃんが大好きで。
...物心がつき始めた頃には、もう『恋愛』の対象として愛斗兄ちゃんを見ていたように思う。
けれど突然、彼はこの世を去った。
__事故で亡くなったのだ。
愛斗兄ちゃんが死んでから、今年で4年もたつ。
・・・もう私の心に、愛斗兄ちゃんが恋愛対象としてはいない。
けれど、私の大きな心の支えとして、今もなおずっと生きている。
ねぇ、愛斗兄ちゃん。
皆大きくなったでしょう?
皆変わったでしょう?
・・・だけど、心は変わってないよ。
皆、すごくあったかくて、優しい心のまま。
愛斗兄ちゃんのおかげだよ。
「愛斗兄ちゃん、メリークリスマス」
少し暗い空に、小声でそっとつぶやく。
届いてるかな。
「・・・さーってと、プレゼント買おう」
気を取り直して、プレゼント探し。
今年は何にしようかな?
私は少し歩みを弾ませて、お店を回った。
******
時計の針が5時を指した頃には、私と和斗とろんはもうメイン広場にそろっていた。
そして、時間にルーズな玲君としいなはまだ来ていない。
「たっく、あいつらやっぱり時間にルーズだなぁ」
「仕方ないよ、だってあの二人だし」
玲君はともかく、しいなが時間重視で動く人だと思いますか!
「だな」
和斗までが、いつものなに考えてるか分からない表情を崩して、苦笑いしていた。
「ケーキどうしよう?先に買いに行く?」
「うーん・・・でもなぁ、しいなとか多分「なんで俺がいないのにきめたんだよ?!」とかいいかねないからなぁ」
「それな」
それな。
あの顔してわがまま坊ちゃんだからね、あの子。
んまぁだから人懐っこいのも分からなくはない。
「あと10分待ってこなかったらいこうよ」
和斗がそういうと、ろんもうなずいて「少し待つか」とメイン広場の時計台下のベンチに腰掛けた。
雪はやんで、もう完全に暗くなった空の変わりに、イルミネーションが色んなところでつきはじめている。
メイン広場の真ん中、つまり私たちが今いる時計台のすぐ前には、大きなクリスマスツリーが飾ってある。
「なーんか、クリスマスっつーのはさぁ、彼女とかと過ごすのが普通の高校生なのに、俺らなーにやってんだろなぁ」
ろんは不意につぶやく。
「でもさ、こういうのの方が私は好きだよ?私の彼氏ができても、来年も再来年も、この日は皆でパーティーするってきめてるんだ」
そう、ろんに言い切る。
だって、恒例行事だよ?恒例行事。
続けていくこそ、楽しみじゃない。
「てるはこういうの好きだな」
「うん!もちろんっ!和斗も好きでしょ?」
私からぱちったマフラーに顔をうずめているため、表情が読み取りづらい。
和斗の覗き込んで、「ね?」と同意をかなり強制的に求めてみる。
「・・・あぁ、うん」
「なにさ、そっけないの。つかそれ私のマフラーなんだからいい加減返しなさい」
よりいっそうマフラーに顔をうずめてしまった和斗。
なんだなんだ、そんな寒いか!・・・寒いわ。
「うーん、あいつらこねぇなぁ」
時計を見ると、知らない間に5分経過していた。
「そうだねぇ。なにしてんだか」
「ほんとそれな。犬でも飼ってんのか」
・・・それさ、しいなの場合リアルにやりそうで怖いんだよね。
さ、さすがに自重すると思うけど!!ていうか思わせろ!
「やーさみぃ!ごめんーおくれたー」
そんなことを思っていると、玲君が戻ってきた。
「たっく、どこいってたんだよ」
「わりわり、ちょっと知り合いの医者に出くわしてな。無視するわけにゃいかんから」
・・・さすが医者の息子。
抜け目ないな。
「しいな見なかったですか?」
「見てないなぁ。多分俺と完全に逆方向いったし」
「そうですか・・・」
まじであいつ犬買ってんじゃね?((真顔
そんな事を思っていると、後ろから声がした。
「ごめーんー、おくれたー」
のんきにふらりと手を振ってやってる、しいな。
悪気など一切ないらしい。・・・しいならしい。
「たっくお前はいつになっても時間にルーズだな・・・」
「ごめんごめん」
謝る気などさらさらないらしい。
「さっさとケーキ買って行って帰ろ、寒い」
和斗が無機質な声でそういうと、ろんは呆れたといわんばかりの表情をする。
「はいはい、遅くなった文句はしいなにぶつけてくれー」
そんな事を言いながら、軽やかな足取りでケーキ屋さんへ向かった。
******
「しいなはテーブルの用意、玲君は私のお手伝い、ろんと和斗はー・・・おとなしくしててください」
家に帰ってすぐ、5人で役割分担をして、クリスマスパーティーの準備がはじまった。
「おとなしくとかひっでぇなぁ」
「・・・まぁ、いいや」
ろんは口をとがらせて言うものの、和斗は無機質に興味なさそうにそういって、ソファにねっころがった。
「和斗寝ちゃわないでよ」
「わかってる」
・・・この無機質な言い方がどうもたまにイラッとくる。
なれたけど。なれたけど!!
「んで?何作るのー?」
玲君が私の手元を覗き込んで楽しそうに言う。
「んと、あれとそれとこれと...」
作る料理を全部言うと、理解のはやい玲君は二ッと笑った。
「んじゃーおれは、あれとそれとこれ」
ぱっぱと料理の役割分担もして、キッチンではスムーズに作業が始まった。
作業中ちらっとテーブルに目を向ければ、楽しそうにテーブルクロスをひいて飾りつけをするしいなが目に入る。
ついでにその後方でソファにのべーと寝転がってボーっとしてる和斗と、自分の髪をいじって遊んでいるろんが目に入った。
__なんか、すっごい幸せだなぁ。
いつもこの時期になると思う。
私ってこんなに幸せな空間にいるんだって実感させられる。
自然と手も軽やかに動いちゃうんだよ。
「てるやん、楽しそうだね?」
玲君はのんびりと手を動かしている。
・・・そのくせ何故か私より作業スピードが速い。なにそれひどい。
「うーん?うん、楽しいよ?」
「だよねぇ、俺も超楽しい。なんかすごい幸せな気分」
そういってにっこり笑う玲君。
目つきが悪いわりに、笑うとすごく人懐っこい表情になるんだよね。
「愛斗さんもきっと、幸せな気分で眺めてるんだろうなー」
ふと、玲君はそういって、窓の外を見た。
「うん、きっとそうだよ」
愛斗兄ちゃんは、この日はいつも、誰よりも幸せな表情だったもの。
「おーっし、テーブルの用意できた!!」
テーブルを眺めながら、しいなは満足そうに言った。
その声に顔を上げると、テーブルはすごく華やかで活気づいていた。
「お、華やかでいいね!!しいなありがとう」
「ふふん、どういたしまして!」
__まだまだ可愛いやつだなぁ。
つくづく、可愛い後輩にめぐまれたもんだね、私は。
******
「あー!!ちょ、それ俺のから揚げ!!」
「はーんそれがどうした!!これは俺のだぁ!」
「このパスタうま・・・」
「それ俺が作ったんだぜ!すごいだろ?」
「・・・まぁまぁ」
「うわーこの子素直じゃないわー」
__パーティーがはじまって、皆すごく楽しそうに料理を食べ進める。
うん、作ったかいあったな。
「てーるちゃん」
「ん、んぁっ?」
呼ばれて振り向くと、口になにかつっこまれた。
「ほれなふれふは?(これなんですか?)」
「玲也特性のビッグつくねだよー」
ろんは面白そうにそういうと、「ハムスターみたいだなぁ」といって私の頬をつついた。
「るるかないれくらはい!!(つつかないでください!!)」
「なーにいってるかわかんねぇなぁー」
・・・こんの厨ニ・・・。
「んぐっ・・・つつくなぁ!ハムスターじゃないわ!」
誰がハムスターだ、ハムスターもっと可愛いはコノヤロウ。
「ハムスターみたいに可愛いってことじゃないの」
私の右隣の和斗が無機質な声で言う。
「お前まで言うか!!」
「てるやーんそんな照れなくてもいいじゃないのーほらぁ、これのんで、落ち着けって」
そういって玲君は、私にピンク色の液体が入ったグラスを手渡した。
「これなんですか?」
「ジュース、おいしいから飲んでみ」
玲君に勧められて、私がグラスを手にする。
ピンク液体・・・桃ジュース?そんなの買ったか?
「なぁ、それって、」
しいながポツリといった言葉がはっきり聞こえず、私はスルーしてその液体を飲む。
桃ジュース・・・?っていうか、桃ジュースなんだけど、なんか変な感じだ。
__あれ?
「ね、ねぇ、玲君」
「んー?」
気分よさそうに玲君が返事する。
ね、ねぇ、これって、・・・お酒?
「これ、お酒・・・?」
「んー正解!よく気づいたね~」
そう玲君が言ったとたん、がたんっと和斗が立ち上がった。
びっくりして、皆和斗の方をいっせいに見る。
「ど、どうした?和斗」
「酒くらいもう飲むだろ」
そういったろんと玲君に和斗はコソコソと耳打ちをした。
『てる、酒飲んだら変わるんだよ!』
『変わる?なにがだ?』
『・・・なんつーか・・・ほら、・・・えーっと』
『んだよ、暴力的になるのか?』
『いや、じゃなくて・・・え、えっと・・・』
『和斗?』
・・・なにコソコソしてんのかね?
なんか、そういえば今すんごい気分がいい。
こう、ふわふわ浮いてる感じ。
楽しい。
「・・・にゃーにコッソコソやってるんだぁー!!」
「?!」
「な、てるちゃん?」
「てるやん・・・?」
「・・・だから言っただろ」
和斗がなにやら、ため息をついていた。
続きますよん。