第09話
ある洋館に招かれた玲奈と俊。
この洋館は俊の友人の家で、今日は誕生パーティを行うとのことである。
パン!──玲奈たちがパーティを楽しんでいると、どこからか乾いた音が聞こえた。
乾いた音の元へ駆けつける玲奈と俊、そして屋敷の主人、猪俣 栄太郎。
「う、うわああああ!」
悲鳴を上げる栄太郎。
その目線の先には、頭から血を流して倒れている妻のひよりの姿があった。
俊が部屋へ入ってひよりの脈を確かめる。
「お兄ちゃん……」
俊は首を横に振るった。
「ひより……!」
遺体に駆け寄ろうとする栄太郎を俊は押さえた。
「入っちゃダメだ!」
玲奈が部屋に入り、中を見て回る。
窓には鍵がかかっている。外部からの侵入はないと見られる。
遺体の側にはトカレフが一丁。
「お兄ちゃん! これ!」
「うん?」
俊が玲奈の示すトカレフを見た。
「拳銃自殺か?」
「そ、そんな……。ひよりが自殺するなんて!」
玲奈は部屋を調べる。
(ん?)
玲奈が棚の上のテープレコーダーに気付く。
ハンカチで掴み、巻き戻して再生してみる。
パン!──乾いた音が流れた。
「はっきりしたわね。お兄ちゃん、これは他殺よ」
「だ、誰がひよりを!?」
「猪俣、とりあえず警察に連絡だ!」
「あ、ああ……!」
栄太郎が携帯を取り出して百十番通報をする。
警察が到着し、現場検証が始まる。
「いよう! 黒崎じゃねえか!」
刑事が俊の頭に手を乗せた。
「あ!?」
振り返る俊。
「高岩!? 高岩 京一じゃねえか! お前、こんなとこで何してんだ!?」
「見りゃわかるだろ。刑事やってんだよ」
「サッチョウ行ったんじゃねえの?」
「異動だよ」
「異動?」
「ああ。サッチョウで暫くやってたんだけど、上司に捜査がしたいって言ったら、警視庁行けだとよ。それにしても久しぶりだな。お前が事件の第一発見者か?」
「お兄ちゃん、その人は?」
「兄ちゃんのお友達」
「君は?」
「妹の玲奈です」
「ほおう。黒崎にこんな可愛い妹がいたなんて聞いてないぞ」
んで──と、続ける京一。「お前は何でこんなところにいるんだ?」
「俺はこいつに呼ばれてな」
俊が栄太郎を差す。
「被害者は栄太郎の妻でな。俺らが誕生パーティ楽しんでたらそのトカレフの音がしたんで、駆けつけてみたところ……」
俊はトカレフを指差した。
「トカレフか」
京一がトカレフを鑑識に渡した。
「なるほどな。誰のトカレフだ?」
京一が栄太郎を睨む。
「ぼ、僕のじゃないっすよ!」
「硝煙反応を調べれば誰が撃ったかすぐにわかるんだぞ」
ちょっと待って下さい──と、玲奈が口を開く。「この方は私たちがパーティに参加している間、ずっといました。そうだよね、お兄ちゃん?」
「うん? あ、そうだったかな……」
「お兄ちゃん、食べることに夢中だったもんね」
「そうか。じゃあシロなんか?」
「そうとは言ってません。パーティ中は、と言ったんです」
「どういうことだ?」
玲奈は京一にテープレコーダーの音を聞かせた。
「トカレフの銃声?」
「そう。犯人はパーティが始まる前に被害者を殺していたのよ」
「そのパーティが始まったのはどのくらい前なんだ?」
「遺体を発見する一時間くらい前。その間、彼はずっと会場から出てないから、犯人ならパーティが始まる前に殺してますわ」
「とりあえず、署までご同行願いましょうか」
「ぼ、僕じゃない! 僕じゃ!」
京一が栄太郎を警視庁まで連行してしまった。