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第08話

 けいゆう病院に警察が到着して捜査が始まった。

 病院の会議室を利用して、玲奈が事情聴取を受けている。

「では、君は落ちてくる人影を見たんだね?」

「うん。それで、お兄ちゃんに確認してもらったの。私、背が小さくて窓の下見れないから。あと、飛び降りた屋上には鍵がかかってたよ」

「鍵、か……」

どうもありがとう──刑事はそう言って玲奈を解放した。

 玲奈は廊下に出た。

「玲奈」

 俊が声をかける。

「調査するのか?」

「もちろん」

「じゃあ手伝おう」

「とりあえず、山下副院長の素性を調べたいわね」

「じゃあ、病院関係者に話を聞こう」

 玲奈と俊は医師やナースなどに聞き込みをして山下副院長の素性を調べた。

 生前の山下副院長はあまり評判がよくなく、黒い噂があるという。

 宿直の時に薬剤室に忍び込んで何かをやっているらしいのだ。

 そして、その翌日には必ず大きなカバンを手に帰宅するという。

 恐らく、山下副院長は薬品を盗み出していたのではないだろうか。

 理由はどうであれ、そう推測する玲奈と俊だった。

 物証を掴むため、玲奈と俊は山下副院長の部屋へ入った。

 机を調べると、引き出しの中から手帳が出てきた。

 手帳には全ての宿直の翌日に横浜Nという文字が。

「横浜N?」

 玲奈は疑問符を浮かべる。

 その時、部屋の扉が開いて刑事たちが入ってきた。

「何してるんだ?」

「あ、俺ら怪しい者じゃないです」

「怪しいだろ」

 俊は警察手帳を提示した。

「警視庁の刑事がなぜ?」

「たまたま近くにいまして」

「なら警視庁は引っ込んでてくれ。ここは神奈川県警の管轄なんでな」

 玲奈と俊は部屋を出る。

「横浜Nか」

 横浜でNとい人物と会うということだろうか。それとも、場所か。

 玲奈は考えてみるがわからなかった。

「これからどうしようか?」

「とりあえず、Nが何なのか、調べてみよう?」

「そうだな」

 玲奈と俊は病院内でNについて聞いて回った。

 山下副院長と仲が良かった看護師がこう答える。

「それって、横浜駅前のナイトクイーンのことじゃないかしら? ところで、山ちゃん何で自殺したの?」

「それについてはまだ……」

「じゃあ、わかったら教えてね」

 玲奈と俊はナイトクイーンへ足を運んだ。

 中に入る。

 すると、店員がやってきた。

「まだ営業前ですよ、お客さん」

「客じゃないんだ」

「じゃあ何?」

 俊は警察手帳を見せようとしたがやめた。

「けいゆう病院の山下副院長を知っているね?」

「山下副院長? ああ、あの人ね」

「その人について教えてくれないか?」

「あなた、何なの?」

「実は山下副院長が亡くなったんだ」

「え……?」

「亡くなった原因がここにあるんじゃないかと思ってね。彼と仲の良かった人物を知らないか?」

「それなら、ミッチェルに聞いてごらん? そこにいるよ」

 玲奈と俊はミッチェルと思しき女性に近づいた。

「ミッチェルさん?」

「そうだけど」

「山下副院長のことでいくつか聞きたいんだけど」

「山ちゃんがどうかしたの?」

「実は先ほど、病院で飛び降り自殺してね」

「え!?」

「彼が自殺をほのめかしたことはなかったかい?」

「うーん……」

「彼は何かを盗んでなかった? 薬品とか」

「もうそこまで調べてんの? 薬は金になるとか言って、うちのバックに流してたわよ。特に筋弛緩剤きんしかんざいを」

「バックって?」

「暴力団よ。この店、暴力団のフロント企業だから」

「そうか。それはどこの組だい?」

「磯山組よ」

「広域指定暴力団か」

 と、玲奈。

「あら、この子は?」

「自分の妹」

 俊はそう答えた。

「ふーん」

「いろいろありがとう」

「また何かあったらいつでも来ていいわよ」

 玲奈と俊は店を出た。

「さて……。兄ちゃん、磯山組へ乗り込むから、玲奈は病院に戻っててくれ」

「うん。わかった」

 俊は玲奈と別れ、磯山組の事務所へ乗り込んだ。

「何だあんた?」

 人相の悪い男が訊ねてくる。

 俊は男に警察手帳を見せた。

「警察がうちに何の用だ?」

「けいゆう病院の山下副院長が亡くなった。何か知らないか?」

「な……!?」

 目が泳ぐ男。

「お前ら、山下副院長から筋弛緩剤をもらってるよな? 何が目的だ? 殺人か? しょっ引いて吊るし上げてもいいんだぜ?」

「さ、殺人の証拠なんてどこにあるんだ!?」

「じゃあ持ってくる」

 俊は事務所を出ると、病院へ戻った。

「おかえり」

 ロビーで玲奈が合流した。

「お兄ちゃん、面白いことがわかったよ」

「え?」

「院長先生に事情を説明して調べてもらったんだけど、山下副院長が当直の日にね、急患が運ばれてきてるんだけど、その急患が皆、急性心不全で亡くなってるの。おかしいと思わない?」

「確かにな。だけど、これ以上、俺たちが手をやくことは出来ないだろうな。東京にも戻らないといけないし」

「おい!」

 と、そこへ先ほどの刑事たちが現れた。

「今の話、詳しく聞かせろ」

 俊は刑事たちに調べたことについて報告した。

「なるほどな。わかった」

 刑事たちは病院を出て行った。

 それから暫くして、俊の携帯に警視庁から連絡が入った。

 話によると、神奈川県警の捜査によって磯山組の構成員が薬品の横領と殺人で逮捕されたとのことだ。

 また、山下副院長は、自殺を装って殺されたということも判明し、一部の構成員が殺ったと犯行を認めたという。

「玲奈、帰ろうか」

「うん」

 玲奈と俊は86で帰京した。


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