表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名探偵玲奈  作者: 獅子王子(元桂ヒナギク)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/19

第07話

 玲奈と俊は86でドライブをしていた。

 車は神奈川県に入った。

「お兄ちゃん、県警本部寄ってこうよ」

「そうだな」

 俊は86を県警本部へ走らせた。

 県警本部の駐車場へ車を止める。

 神奈川県警には、玲奈と俊の姉・黒崎くろさき 洋子ようこが在籍している。司法警察職員ではないが。

 86を降り、県警本部に入っていく。

「すみません」

 職員に声をかける俊。

「何でしょうか?」

「事務職員の黒崎 洋子さんにお会いしたいのですが」

「どちら様でしょうか?」

「家族の者です」

「身分証明書はありますか?」

「なぜそんなものを?」

 俊は職員に警察手帳を見せた。

「警視庁の方ですか。申し訳ありません。実は──」

 職員は説明を始めた。

 先日、洋子に会いに来た何者かが、洋子に危害を加えたことを。

 そして、その彼女が今、神奈川県警友会けいゆう病院に入院していること。

「そうですか。賊は逮捕したんですか?」

「ええ、その場にいた職員らに取り押さえられて」

「怪我の具合はどんな感じなんですか?」

「え? あ、それは……言い難いんですけれども、昏睡状態に陥ってます」

「重体やないかい!」

 玲奈と俊は署を飛び出すと、86に乗ってサイレンを鳴らしてけいゆう病院へ駆けつけた。

 ロビーで職員に訊ね、病室へと駆け込む。

 そこにはベッドに横たわる端正な顔立ちの女性の姿があった。

 黒崎 洋子。職業は神奈川県警本部の事務職員。

「お姉ちゃん……」

 玲奈が悲しそうな表情を見せる。

「姉さん……」

 俊の表情が曇る。

「お兄ちゃん」

「うん?」

「お姉ちゃんに何かしてあげれることないかな」

「うーん……犯人は現逮げんたいされたみたいだし、特に思いつかないな」

「そっかー」

「う……」

 洋子がうめき声を発した。

「姉さん!?」

 目を開ける洋子。

 玲奈はナースコールを押した。

 直ぐにナースが駆けつけてくる。

「どうしました?」

「姉が目を覚ましました」

「先生呼んできます!」

 ナースは駆け足で去り、主治医の宮本みやもと 明美あけみを連れて来た。

 洋子は不思議そうな顔でこちらを見る。

「ここはどこ? あなた方は?」

「俺だよ、姉さん! 弟の俊だ!」

「弟……?」

 疑問符を浮かべる洋子。

「襲われた時のショックで記憶を失ってる可能性がありますね」

 と、宮本医師は言った。

「記憶喪失?」

「そっちの子は?」

「妹の玲奈だよ。お姉ちゃん、記憶を失っちゃったみたいだね」

「姉さん、自分の名は言えるか?」

「名前? わからない」

「姉さんの名は黒崎 洋子。俺は弟の俊だ。俺と姉さんは警察関係の仕事をしている」

「私は警官なんですか?」

「いや、事務職員だよ」

「事務職員……?」

「ああ。警察署で事務を担当する職員のことさ。司法権はない」

「そう……ですか……」

 静まり返る病室。

「とりあえず、今はゆっくり休んでくれ。また来る」

 その時、窓の外を人が落ちていくのを玲奈は見た。

「お兄ちゃん、人が落ちたわ! 窓の外!」

「何だって!?」

 俊は窓際へ駆け寄って窓の下を覗いた。

「なっ……!?」

 白衣を着た男性が地面に横たわって血を流していた。

「どうしたんですか?」

「宮本さん、彼は?」

「え?」

 宮本医師が窓の下を見た。

「うっ!」

 吐き気を催して口を手で覆う宮本医師。

「か、彼は、山下副院長です」

「宮本さん、一緒に現場へ行きましょう」

「は、はい!」

 俊と宮本医師、玲奈が落下地点へ移動する。

「宮本さん、彼は亡くなっていますか?」

 宮本が山下副院長の瞳孔を確認した。

「亡くなってます」

「そうですか」

 玲奈は屋上を見上げ、そこへ急ぐ。

 屋上に辿り着き、扉を開けようとするが、鍵がかかっていて開かなかった。

「玲奈!」

 俊がやってくる。

「開かないのか?」

「うん、鍵がかかってるみたい」

「鍵を借りてくる」

 俊は階段を駆け下りていった。

 待つこと数分。

「鍵持ってきた」

 俊が解錠してドアを開けた。

 へりには靴が揃えて置かれており、遺書が下敷きになっていた。

「何て書いてあるの?」

「申し訳ないことをした。死んでお詫びします、だって」

 と、そこへ宮本医師がやってくる。

「遺書、ですか?」

「ええ」

「どんな内容なんです?」

 俊は遺書を宮本医師に見せた。

「お心当たりはありますか?」

「いいえ、特に」

「とりあえず、警察を呼ぼう」

 俊は百十番をして警察が来るのを待った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ