第02話
キンコンカンコン──朝九時、月臣小学校の予鈴が鳴った。
ガラガラ──扉を開けて教室に入る玲奈。
「みんな、おはよう!」
玲奈が挨拶をすると、クラスメイトも挨拶を返した。
席に着く玲奈。
本鈴が鳴り、教諭が入ってくる。
「今日は転校生を紹介する」
入ってきたのは、短髪の格好いい男の子だった。
「彼は星宮 健くんだ。みんな、仲良くしてやれよ」
それじゃ──と、教諭が玲奈の横を指差した。「星宮はその席だ」
健が玲奈の横の席に着く。
「黒崎 玲奈よ。よろしくね」
握手を求める玲奈だが、しかし、健は無視した。
「さて、授業を始めるぞ」
授業が始まる。
昼休み、玲奈は食堂へやってきた。
俊からもらったお金で牛丼を買い、席に着いて食べる。
そこへカツ丼を手にやってくる健。
無言で玲奈の向かい側に座った。
「一言言ったら?」
「……………………」
健は答えなかった。
「なんで何も言わないの? 口が利けないの?」
首を横に振るう健。
「じゃあどうして黙ってるのよ?」
健は取り出したノートに何かを書いて玲奈に見せた。
「声を聞かれたくない」
頷く健。
「そう」
食べ終わった玲奈と健は食器を返却口に置いた。
「星宮くん、どうして声を聞かれたくないの?」
教室へ戻る途中、玲奈は健にそう訊ねた。
健はノートに書きつける。
声が甲高い。
「出してみて」
首を横に振るう健。
「いやならしょうがないわね」
教室に着き、中へ入る二人。
席に着いたところで、午後の授業のチャイムが鳴った。
放課後、玲奈が学校を出ると、道路に俊のスプリンタートレノAE86が止まっていた。
「どうしたの?」
運転席の側に回って訊ねる。
「たった今、埼玉のお祖父ちゃんが亡くなったって連絡があった」
「どうして!? 元気だったじゃない!」
「それが、どうも強盗に殺されたらしい。それで、埼玉県警から連絡があった。これから埼玉県警に行くから乗ってくれ」
「うん」
車に乗り込む玲奈。
走り出す86。
向かったのは、埼玉の所沢警察署だ。
所沢警察署の遺体安置室に入る俊と玲奈。
警察署の職員が遺体の顔にかけられている布を取り去る。
「お祖父ちゃん……」
「黒崎さん」
職員が俊に声をかけた。
「あなた、警視庁では検挙率ナンバーワンなんですってね」
「ええ、まあ」
「ねえ、刑事さん」
「なんだい、お嬢ちゃん?」
「お祖父ちゃんの家を見たいんだけど」
「それは無理な相談だよ」
「こいつ刑事顔負けの推理をするんです。見させてはくれませんか?」
「まあ、警視庁の刑事さんが一緒ならいいか」
二人は祖父の家を訪れた。
捜査担当者によると、遺体はリビングに倒れており、帰宅した妻、つまり二人の祖母が発見したとのことだ。
部屋は荒らされており、和室の金庫がこじ開けられていて、中にあった一億円が全てなくなっていた。
その一億円は、祖父が宝くじで当てたお金で、それを知った何者かが盗む目的で侵入し、作業中に祖父と鉢合わせして殺したのではないか、と警察は判断したのである。
「お兄ちゃん、私たちで犯人見つけようよ」
「ああ」