第11話
「それで? あんた何者なんだ?」
栃木県警日光署の刑事課で刑事に訊かれる俊。
「えっと……それは……」
「警視庁の刑事だよ」
「おい、玲奈!」
「警視庁の刑事?」
怪しいやつめ──と日光署の刑事。
俊は徐に警察手帳を提示する。
刑事はその手帳を調べた。
「確かに本物のようだが……。警視庁の刑事がウチのヤマに首を突っ込もうってのか?」
「お兄ちゃん、警視庁では検挙率ナンバーワンなんだよ」
「腕がよくても管轄がね」
「警部!」
部下の刑事がやってくる。
「どうした?」
「団子屋の件で容疑者を連行しました!」
「そうか」
立ち上がる刑事。
「あんた、もう帰っていいぞ。それからな、ウチのヤマには関わるなよ」
刑事はそう言って取調室へと入っていった。
「……………………」
無言で立ち上がる俊。
「お兄ちゃん、どうして身分隠そうとしたの?」
「向こうは覚えてなかったみたいだけど、あの警部さんとは因縁があってね」
「このまま引き下がるわけにはいかないわね。鼻を明かしてあげましょう?」
「玲奈、お主も悪よのう」
「お代官様ほどでは」
玲奈と俊は日光署を出て団子屋へ向かった。
「あ、またあなたですか!」
俊は警察手帳を提示した。
「ここで亡くなった方の名前と住所を教えていただけますか?」
「警視庁の方がどうして?」
「いいから教えて下さい」
被害者は猪俣 恵子、二十五歳。団子屋の従業員である。住所は日光市内だ。
「容疑者が連行されたそうですが?」
「新田 武。被害者のストーカーですよ。現場付近にいたところを確保されました」
玲奈は警官の靴にシミのようなものがあるのに気付く。
(これは?)
「現場を見させて下さい」
玲奈と俊は現場へと入る。
玲奈が現場を調べる。
床には血痕があり、一部が欠けていた。
(間違いない。犯人はあの人だ)
「お兄ちゃん、いつものやるよ」
「犯人がわかったのか?」
「うん」
玲奈と俊は現場から出て警官の下へ移動した。
「わかりましたよ」
「何がです?」
「犯人が」
「だから、新田 武でしょ?」
「違います」
「面白いですね。聞きましょうか」
俊は玲奈の声に合わせて口パクを始めた。
「殺された被害者にはストーカーがいた。それは間違いないでしょう。しかし、そのストーカーは犯人ではありません」
「どういうことですか?」
「現場の血痕は一部が欠けていました。そして、あなたの靴にあるシミのようなもの。……そう、犯人はあなたですよ」
「な、何を言ってるんですかあなたは? 本官が犯人? 馬鹿馬鹿しいですね」
「では、日光署で被害者の血痕と、あなたの靴にあるシミ、照合してみますか?」
「……くっ!」
「あなたがやったんですね?」
「ああ、そうだよ。あいつ、オレと別れるって言い出したんだ。オレにはあいつが必要だ。だが、あいつの心にオレはもういなかった。だから殺したんだよ!」
ピシッ!──俊の平手打ちが警官の頰に炸裂した。
「あんたバカじゃねえのか? もっと他にやり方があっただろ」
「う……うわああああん!」
泣きながら崩れる警官。
他の警官が気付いて駆け付ける。
「一体何が?」
「団子屋の事件はこの方が真犯人です」
「ご協力感謝します」
警官は他の警官たちによって連行された。