第10話
玲奈は俊と共に86で栃木県にやってきた。
「顔見せに行くか」
俊は栃木県警本部の駐車場に車を止めた。
栃木県警には俊の双子の弟で玲奈の兄、蓮が在籍している。
中へと入る二人。
刑事課へ行こうとエレベーターの前に行こうとすると、受付の係員が声をかけてきた。
「黒崎さん、いつの間に外へ? たった今、刑事課へ戻ったばかりですよね?」
俊は警察手帳を出した。
「警視庁……?」
あれ?──疑問符を浮かべる係員。
「こんがらがってるね。私、黒崎 蓮の双子の兄で俊と言います。警視庁の刑事です」
「ああ、そうでしたか」
「それじゃ」
エレベーターに乗り込む玲奈と俊。
エレベーターで三階へ上がり、刑事課を訪ねる。
室内を見渡し、蓮を見付ける。
俊は蓮に歩み寄り、声をかけた。
「おっす、久しぶり」
「え?」
ネットでニュースを読んでいた蓮が振り返る。
「俊!? どうして?」
「近くまで来たから寄ったんだ」
「私もいるよ」
「玲奈もいるのか」
「黒崎!」
係長が蓮を呼ぶ。
「はい?」
「同じ顔だけど誰だ?」
「兄の俊です」
「弟がお世話になってます」
「あなたがお兄さんですか。噂は聞いてますよ。犯人検挙率ナンバーワンなんですって?」
「ええ」
(玲奈のおかげで)
「黒崎、休憩していいぞ」
「はい」
蓮は席を立つ。
「二人とも、休憩室行こうか」
三人は刑事課を出て休憩室へ移動する。
「今日はどこ行く予定だったんだ?」
「日光。いろは坂の団子を食べにな」
「あそこ美味しいよな」
玲奈は──と、続ける蓮。「日光は初めてか?」
「うん」
「日帰りか?」
「まあな」
「玲奈、なんか飲むか?」
蓮が自販機を示す。
「オレンジジュース」
「よし、買ってやろう」
蓮が自販機でオレンジジュースを買って玲奈に渡した。
それから小一時間ほど話をし、玲奈たちは蓮と別れて車に乗り、日光を目指した。
日光に着き、いろは坂の団子屋に訪れる。
団子屋は日光署の警官たちによって封鎖されていた。
俊は見張りの警官に訊ねた。
「何かあったんですか?」
見張りの警官は「遺体が発見されました」とだけ答えた。
「刺殺体ですか?」
玲奈が俊の声で聞いた。
「なぜそれを?」
「え? あ、いや、今のは自分じゃなくて……」
「怪しい男め」
警官が現場を調べている刑事を呼んだ。
「こちらの方が刺殺体だと」
「なぜ知ってるんです?」
(やば)
玲奈は口を開いた。
「お兄ちゃんは地面を見て刺殺体って判断したんだよ」
「うん?」
刑事が玲奈を見た。
「どういうことかな?」
「地面を見てよ。血が点々と垂れてるでしょ?」
「あ、ほんとだ。色が似てるから気付かなかった」
「でね、血痕を見る限りでは、犯人は凶器を持ったまま逃げたと思うの。徒歩でね」
「おい! 非常線を張れ! 死亡推定時刻からまだそんなに時間が経ってない! 犯人はまだ近くにいるはずだ!」
刑事が同僚に命令する。
同僚の刑事がそれに応えて動き出す。