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ACT 2:プロローグ



【The World of the truth. End of girl/

Prologue.】



人間と云う種は争いの連続で作られていた。人間の歩みを本にするのであれば、一ページ目には戦争の歴史が連なっている。その後、一時の平和を手に入れたあと、また人間は争いを行っている。

 戦争はひとを進化させる。

 そのような言葉が生まれるぐらいだ。人々は「殺人」と云う同種殺しの行為を行う「マシーン」を作ることに関しては天才であった。

 共食いをする種はいくつでもあれ、殺し合いをする種はなかなかないだろう。理性を持って、同じ種を滅ぼそうとする。種は繁栄させる為にあると云うのに、種を繁栄へと導く為に種を殺すと云う矛盾行為を、人間は続けてきたのである。

 争いの歴史は、この瞬間にも塗り替えられている。平和を手にした場所もあるが、そこもいつ決壊するか解らない、非常に危ういバランスの上で、人間は生きている。

 明日には戦いが始まるかもしれない。なにかのきっかけで、そのスイッチが押されてしまえば、この世界は再び争いに包まれてしまうだろう。

 ひとは知恵を持つが、その知恵を試したがる。好奇心と云うものに踊らされ、そして過ちを犯し続けてしまうものなのだから。

 一体なぜなのか? 残念ながらその答えを持っているものは居ない。

 人間の設計図を書いた存在を、人々はしらない。一体どのような意図を持って、それらを埋め込んだのか。それとも、知恵を持ってしまったがゆえに、争いを行うようになってしまったのか。

 宇宙のエネルギーを使うためにも、争いは必要だ。それなら、やはり、人間の闘争本能と云うものは、予めプログラムされているものなのかもしれない。たとえそれが人間の意志に反していたとしても、それが必要なものだと言われてしまえば、ひとは戦わざるを得ない。

 ―――なるほど、ゆえにひとは、この宇宙の為の行動をしていると見える。


 常人ならざる存在。宇宙すら、概念すらも時には超越する存在。

『魔女』。

 彼女たちは、この『セカイ』の理を越える。人間と云う種に縛られていながらも、人間を超越し、人間以上の領域に到達できるように自らを昇華した存在。しかし、それゆえに、いつ自分の存在を見失うかも解らず、宇宙に、セカイに飲み込まれてしまう可能性も孕んでいた。

 魔女はセカイにしてみれば扱いに困る存在であり、有益でもあり、害でもあった。その超常能力を使い宇宙のエネルギーを使用することもあれば、『理』を破壊してしまうこともあるからだ。

 それを、魔女は知っていた。自分たちがどのような力を持っているのか、どれだけ危険な存在であるのか。常軌を逸脱し、このセカイを破壊してみせることも、エネルギーを喰らいつくし、宇宙を安定させることができることも。知っていた。

 だから、魔女は『世界』にしてみれば厄介で、コントロールの効かない存在であった。彼女たちは通常の世界では生きては居らず、もっと次元の違う『セカイ』で生きているからである。

 世界は魔女を排除したかった。けど、それは自分たちの力では不可能だと知っている。自分たちよりも次元の高い存在である彼女たちを、倒せる訳もなかった。それは、短いこの世界の歴史のなかで行われてきた『魔女戦争』で解っていた。

 世界は悩み、そして決断を下した。

 なら、魔女に匹敵する存在を作り上げれば良い、と。


 ◇


 ひとりの少女の話だ。幼さを残し、しかし、年頃ゆえにこの世界に誰よりも退屈していた少女〝だった〟存在の話だ。

 彼女はこの世界のあり方に冷めていた。日々、同じだけの生活を続け、同じ世界を眺め続けることに嫌気がさしていたのである。それを感じられることが如何に幸せなことなのか、と、よく母親に言われていた。

 戦争と云うものがあったらしい。彼女は幼く、その内容を覚えている訳もなかった。だが、彼女を連れて逃げ延びた母親は、余程の地獄をみたらしい。こうして、少女がなにかをするたびに、そのときの悲惨な内容を口にする。正直、嫌になるぐらいであった。

 いまいち、頭のなかでイメージはできなかった。言葉だけでは解っていても、如何に悲惨なことが起きたのか文面だけで聴いたとしても、それは自分自身が物心あるうちに体験した代物ではないゆえに、他人事のように思えたのである。

 また……別の争いが起きた。

 今度は、自分の番だった。

 逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。

 しかし、炎はいつまでも、いつまでも追ってくる。水をかけようが、なにをしようが、その炎の勢いは弱くなることはなく、自分の命を奪おうとひたすらに追ってくるのだ。


 その日、母を失った。


 ふらつく足を押さえながら、その光景のことは、よく、覚えている。

 見たときは「人間」だと思った。

 だが、感じたときは「化け物」だと思った。

 その存在は、とてもじゃないが、人間とは思えなかった。もし、神話の時代が存在していたのだとしたら―――


 ソレは…………『魔物(『フェンリル』)


 ―――自分は死ぬのだろうか?

 そう、思った。

 炎のなかで母親を失い、ソレは、次の標的を自分に定めたように見えた。首をかしげて、少女を見る。少し笑って、足を踏み出し、こちらに向かってくる。

 死。その言葉だけが自分の頭を支配した。これ以上ないぐらいの恐怖。味わったことのない―――

 その感情を知るよりも、悟るよりも前に、少女は助けられることになる。まったく、計ったかのようなタイミングを、少女はいまでも覚えている。


「いまここで死ぬか、悪い『魔女』と契約して生き延びるの……どちらが良い?」



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