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ACT 1-4


/B and M/2


【前日談】


「魔方陣から解ることもあるさ」

「……なんですか唐突に」

「なに。あれからの進展を確認しているところだよ」

「はぁ?」

「魔方陣ってのは人間によって流派があるんだ」

「なんですかその格闘技みたいな」

「流派。つまり、どの系統に師事を受けたかっていうところね」

「名門とか、魔術学院とかそんな小説の知識はありますよ」

「クダラナイ。それはクダラナイよ」

「クダラナイ?」

「そうそう。この世界に、本当の名門も、魔術の学校なんてものはないよ」

「えっ、そうなんですか?」

「そうだよ。魔術師っていうのは、なろうと思ってなれるものかどうかと言えば……やろうと思えばできなくはない」

「ふぅーん。魔術師って誰でもなれるんですね」

「結構簡単。『魔女』や『魔王』と契約すればいい」

「……そのひとたちを探さないといけないってワケですね」

「ご名答。

 けど、魔女や魔王は本来、自分の後継者を決めるもんだし、欲するもんさ」

「ん? じゃあ探せば見付かるんですか?」

「いんや。正直、魔女や魔王は自分の後継者は欲しいけど、誰でも良いってワケじゃない。それなりに素質のある人間である事が重要だな」

「なんだ。やっぱり誰でもなれるワケじゃないんですね。例えば、頑張って、色んな情報を得て苦労して魔女や魔王を見つけた人が、必ず魔術師になれると言ったら……」

「どうだろうね。寧ろ、自分たちを情報だけを頼りに探して、見つけ出せるような存在は奇異だし、何よりやる気がある。それなら、契約してくれるんじゃないかね。―――まぁ、私は契約しないけど」

「…………へぇ。ま、別にそこは興味ないです」

「あ、そ」

「俺が気になっているのは、話をもとに戻して、その魔方陣から解ったことですよ」

「あー、そうだったね。ごめんごめん。閑話休題」

「……」

「魔方陣としては結構完成されている方だと思うよ。私も、これだけ完成度の高い魔方陣を見るのは初めてね」

「完成度? つまり、凄いモノって事ですか?」

「んー、説明を省くとそんな感じだな。説明すると長くなるが……」

「あ、それならいいです。とりあえず、凄いモノって事が解ればいいです」

「あ、そ。

 まぁ、つまりそんじょそこらの素質のない人間の作った魔方陣じゃないって事よ」

「つまり……この事件のバックには凄い魔術師が隠れてるって事ですか?」

「とは、断定できないな」

「―――? どういう事です?」

「確かに、魔方陣の完成度は高い。だが……扱っている人間がどうにも力量不足だな」

「意味が解らない。素質のある人間がやってる事じゃないんですか?」

「最初の頃に教えたと思うんだが……」

「魔方陣ですか? そもそも俺は魔術を使うときに魔方陣なんて使いませんよ」

「まァ、それがおかしいんだがね。それは良い、横に置いておこう。

 面倒な説明をしないで、要点だけをまとめると、この魔方陣を定義した人間、作成した人間はかなりのやり手だ。けど、これを使っている魔術師側がどうにも配置の仕方、描き方が下手糞なんだよ」

「あ。つまり、武器を作った鍛冶職人は一流なのに、それを振るう冒険者が三流って事ですか?」

「うん。そゆこと。だから、実はこの人間のバックには三流魔術師がいて、どういう経緯か、この一流の魔方陣を手に入れているってワケ。一流が直接関係があるかは解らないけど、少なくとも三流魔術師はバックにいそうね」

「ははぁ。それで?」

「うん?」

「大方のアテ、ついてるんですよね?」

「―――敵わないなァ、一世クンには。

 ま、ちょーっち、一世クンにも付き合ってもらうかな」


【前日談・了】


 この邂逅は害しかない。なにせ、この現場を把握された事。そして、自分自身に用事のある人間はそうは居ないこと。そして、手前の青年はどういった事に興味はないように見える。何より、魔術と云うワードに反応していた。それだけで充分だった。

 手前の存在は、自分の障害になる。邪魔な存在だと、男は確信した。

 このときばかりは舌打ちもしたくなる。これから夜の街から離れて、ゆっくりと体を休めようとしていた矢先の出来事だ。これからいつも通りの日々、いつも通りの一日の終わりだったはずなのだ。それを、それを……

 見事に壊してくれたのだ。

 魔術を使う身である以上、こう云った状況に陥ったときの対処法はただひとつ。

 実力行使だ。

 不意打ちのつもりだった。煙を撒いて、一気に距離をつめる。こちらも、魔術師。相手も魔術師。それなら、対等のはずだと、男は思っていた。

 このビル屋上は煙に包まれ、周辺の景色が一切視認できなくなる。濃い煙に紛れて逃げる事も可能だが、これからこの青年に付きまとわれることを考えたとき、この場で殺してしまった方が良いのではないのだろうか、と、思ったのだ。

 魔術による、殺害は現代社会では解明できない怪事件として残るだろう。それは理由もなく、理不尽のまま、終焉を迎える。

 ―――そして何より、この男の使う魔術の戦闘においての有利性は、相手から人間としてのカタチを視認されずに、煙状態のまま対象に近づく事ができるところだ。近づいたあと、体の一部を実体化させ、殺人に至らしめる致命傷を負わせる必要性がある。だが、敵は実体化の瞬間まで男がどこにいるか解らない上に、周辺に大量の煙が蔓延している事から、どれが本体か魔術師だったとしても見極めることが困難である。

 以上の事から、男が一般人、そして魔術師に対しても有利な魔術に開眼している事が伺える。

 ゆらり、ゆらり。

 煙たちが風になびいて揺れる。しかし、それはただの煙でない故に、このビル屋上からは出る事はなく、ここから居なくなる事もない。男が命令するまで、この場に存在し続ける。

 その中を、煙と化した男が走る。逃げられても面倒だ、すぐにしとめる。

 ぶん、ぶん、ぶん。

 ……男の腕が伸びる。それは、手前の害をなす青年の首元に伸びて―――


「なんだ。結構、物理的なんだな」


 ―――青年を殺すはず。

 だった。

 のに。

「っぐ、がっ!?」

 青年の腕が動いた。それは真直ぐ男の頭に伸びて、そのまま男の頭をつかんだ。

「な、んで!」

 驚くのも無理はない。

 何せ、男はまだ頭を実体化させていなかった。煙のままの体の一部を、何故か、男はつかみ、瞬間その場所には男の頭が実体化していたのである。

 想定外の事態に男は動揺し、自分の魔術への集中力を緩めてしまう。辺り一帯に蔓延していた、煙たちは四散し、その場には、頭と右腕だけが実体化し、残った部分は煙となっている男の姿だけがあった。

「っ! っ! っ!」

 無駄な抵抗を男はする。なんとかこの場から脱出しようと再び顔を煙にしようとする。

「うそだろ……」

 煙にならないのだ。いや、寧ろ、頭以外の部分であれば煙になる。手前の青年に掴まれている頭だけが煙にならないのである。

 彼の使う魔術では、体の一部だけを残して別の場所に移動するような芸当は出来ない。

「そらよ!」

 青年が気合一閃。腕を振るうと、とてつもない力が顔だけに集中する。

 そのまま、男の顔面は吹っ飛ばされ、屋上を囲う金網に衝突する。頭以外の箇所はすべて煙で構成されている為、男の実体化している頭だけが金網に衝突し、後頭部に衝撃が走る。

 朦朧とする意識。だが、これであの不可解な手から体全体が逃げられた。今なら全身を煙にして、この場から逃げる事が出来る。

 意識を集中して、魔術を行使する魔方陣を脳裏に描く。そしてまた屋上を登ってきたときのように、体を煙に変える。

 筈だった。

 いつも通りの行動で、いつもそこにあるはずの魔術。魔力を使って、魔術を作って、魔方陣を描いて、それを行使する。

 当たり前の行動が、何故か男の体から抜け落ちている。

「さて、と」

 青年はゆっくりと、金網に背中を預けて座り込んでいる男のところへと歩いてくる。かなり、余裕のある表情だ。

 煙が消えた事によって青年の姿はより鮮明に見える。よく見ると、最初に対面したときとは若干違うように見える。

 右腕が……何か、黒いものを纏っているように見えるのだ。

「魔力……」

 いや、そんなものではない。魔力なら、すぐにでもそれは解るはずなのに、それは魔術師である男にも看破できない〝魔術以外のナニか〟。

 思考を巡らせている間に青年は男の目の前にまでやってきていた。舌打ちをする余裕もない、魔術を展開しようにも何故か魔術は作れない。それなら、抵抗するだけ無駄と判断したのだ。

「洗いざらい、話して貰うぜ。『B.M.』の事とか、色々と」

 青年の瞳は、何故か黒ともうひとつ、白が混ざっていた。


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