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電車を降りたらそこは異世界でした  作者: ゆきあさ


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プリンと婚約

来ていただいてありがとうございます!






「セシルっ!」

深夜、魔女を撃退したことが知らされて、クロックフォード侯爵夫人がセシル君の所へやって来て泣きながら抱きしめた。セシル君のご家族は聖堂の近くの部屋で待機していたそうだ。

「無事で良かった」

「母様、父様、兄様」

クロックフォード侯爵もセシル君のお兄様も涙ぐんでる。ああ、やっぱり心配してたんだね。王子殿下の計画は予め知らされていたらしいけど、不安だっただろうな。舞踏会の前に再会した時になんだかよそよそしい態度だったのはきっと不安の表れだったんだね。


そっと王宮の部屋を出た私とチェンバーズさんはひとまずクロックフォード侯爵家のお屋敷へ戻ることにした。聖堂の中は大変なことになってしまっていたので私達の事を気にする人もいなかった。なにせ王子様が気絶してしまってたから、大きな音に驚いて駆けつけた王宮の人達は大慌てだった。王子様はかすり傷一つ無く無事だったみたいで、すぐに運び出されていった。







二日後

森の屋敷


「それもありますが、本当に酷かったのですよ。魔女の執着は」

私は卵と牛乳と砂糖を混ぜてこして、用意しておいたカラメルソース入りのカップに注いだ。

「魔女の執着ですか?」

チェンバーズさんは湯気の上がった蒸し器にそのカップ達を並べていく。蒸し器はジェフさんがお湯を沸かして用意してくれていた。


「ええ。魔女は呪いをかけてから、坊ちゃんに近づく人間を排除しようとしてきましたから」

「排除?」

「特に若い女性への攻撃は苛烈でしたね。危うく大怪我をされる方もいらっしゃいましたし。お母上様が馬車の事故に遭われてからはこの森の屋敷へ引きこもるようになってしまわれたんですよ」

「お母さんにまで……」

それでこのお屋敷には若い使用人がいないんだ。


「私達なら魔女も気にしなかったみたいですわね」

「ちょっと失礼な話ですわね」

「セシル坊ちゃんのお世話ができて良かったじゃないの」

「それはそうだけど」

ダイアナさんとアンさんはセシル君の事を本当の孫のように心配してたんだって。二人ともセシル君の呪いが解けたことをとても喜んでた。


プリンがいい感じに蒸し上がったから、ジェフさんが魔法で(!)出してくれた氷で冷やした。アンさんとダイアナさんが後片付けを手伝ってくれて、チェンバーズさんがお茶の準備をしてくれた。

「カスタードプディングも冷えたようですし、お茶にしましょうか」

ガラスの器にひっくり返したプリンはとても美味しそう!クッキーや小さなケーキも準備して午後のお茶のテーブルをみんなで囲んだ。


「いただきまーす。あ、美味しくできてる!良かった」

ちょっとだけ()が入ったけど味は上々だった。懐かしいうちのおばあちゃんの味。

「本当に。リサ様はお料理がお上手ですね」

ジェフさんが褒めてくれた!嬉しい!

「えへへ。夏休みはよくおばあちゃんの手伝いをしてたから、見よう見まねでできるようになったの」

「あらまあ、おばあ様がお料理上手だったのですね」

「それに弟や妹がいたから、ちょっとしたご飯ならつくってたんだ」

「ご家族仲がよろしかったのですねぇ」

ああ、なんだか田舎のおばあちゃんとおじいちゃんとのおやつタイムを思い出すなぁ。



「楽しそうだね」

厨房に隣接した休憩部屋の戸口にセシル君が現れた。あれ?何だか不機嫌そう??後ろにはチェンバーズさんが控えてる。

「あ、セシル君!お帰りなさい」

チェンバーズさんの姿が見えないと思ったらセシル君を出迎えてたんだね。

「どうして一人で戻ったんだ!」

「え?だってせっかく呪いが解けて家族水入らずだったし」

「君がいなくて物凄く焦ったんだぞ!」

「へ?何で?」

「何でって!」

「一応王宮の人に言伝して帰ったよ?なんかバタバタしてたから一旦お屋敷に戻りますって」

「それは……聞いたけど……僕に何も言わずに……」

「まあまあ、坊ちゃん。まずはお茶にしましょう。リサ様がプディングをおつくりくださったのですよ」

「え?リサが?……わかった」

なんか良く分からないけど、ダメだったのかな?だって舞踏会には戻れないし(セシル君いないし)、色んな人たちが走り回っててバタバタしてたし、王宮もだけどクロックフォードのお屋敷も広すぎてなんだか落ち着かなかったんだよね。まあ、うちと比べればこの森のお屋敷もたいがい広いけど。ちょっとは慣れてる分こっちの方が良かったんだ。



居間に場所を移して、セシル君と一緒にお茶を飲みながらこれからの事を聞かされた。


「学校?」

「ああ。僕はこれから王都にあるステラ学園へ入学することになる」

「そうなんだ。おめでとう!」

魔女の呪いが解けたせいかな?セシル君はすっきりとした顔をしてる。良かった良かった。

「君も一緒にだ」

「へ?何で私?」

「王命だよ」

「君はもう一人の渡り人と一緒に王家の保護下に入ることになる」

桃佳(もか)と一緒に王家の保護下に入る。つまり監視されるってことだよね?正直それは前にも聞いたけど、実際にはどうなっちゃうんだろう?

「不安に思わなくてもいい。リサのコスモス王国内での自由はクロックフォード家が保障する」

ああ、やっぱり。()()()()()()。元々国外に出る気も力もないけど、かなり行動の制限を受けると見た。


「……」

「大丈夫だ。これは君達がこの国に馴染むためのものだから。それにさっきも言っただろう?クロックフォード家(僕達)が全力で守るって。なんたって君は僕の婚約者だから」

…………はい?今なんかサラッと凄いことを言われたぞ?

「え?その話って気にしなくていいって……」

前にセシル君言ってなかったっけ?!

「状況が変わった。呪いは解けても魔女は生きてる」

「あ、そういうことか……」

セシル君はまだ怖いんだ。一応チェンバーズさんと私で最終的に魔女を撃退したことになってるし、私も戦力の一人なのね。そういう事ならボディーガードとして一緒に学校へ行ってもいいかもしれない。

「でもそれなら婚約までしなくても……」


「実は……リサ様が壊してしまわれたロッドはかなりの値打ちものでして……。修理代もかなり高価になってしまうのですが、ご家族のことでしたら不問に付すと旦那様が仰っておられますよ」

「おい……チェンバーズ、それは」

ヒィッ!チェンバーズさんの言葉に私は凍り付いた。

「わかりました!婚約者、頑張ります!任せて!学校でもセシル君を守るわ!」

「…………では君は今から僕の婚約者だ」


チェンバーズさんは何故か笑いを堪えてて、セシル君は何故か憮然としてて、私はと言えば壊してしまったロッドのお値段に思いを馳せてちょっと遠い目になってしまった。












ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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