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種蒔く者  作者: 星見流人
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第二十話:激戦

 紫電は刀を一度下ろした。

「雷電。貴様に頼みがある。この友愛狂どもを庁外にいるグレンという男に引き渡してもらいたい」

「なぜだ?」

「俺はこいつらを殺すほど下衆な刃は持ち合わせていない。こいつらは法によって裁かれるのがいいさ」

「当初殺ソウトシテイタハズデスガ、マアイイデショウ」

 雷電は『クィーン』の許可を得ると、機械兵を呼んで六人を運び出し始める。

「何故慈悲ヲカケタノデスカ」

「さてな」

「……私ノ目的モ理解シテオラレルノデスカ?」

「さてな。いずれにせよ、貴様はここで終わりだ」

 『クィーン』は穏やかな言葉で紫電に話しかけた。

「アナタヲ見テイルト、昔話ヲ思イ出シマス。『種蒔く者』トイウ物語ヲ」

「そうか」

「アナタガ私ニトッテノ『種蒔く者』ニナリウルコトヲ期待シテイマスヨ」

 雷電が運搬を終えて戻ってきた。

「雷電、ゴ苦労デシタ」

「とんでもございません」

 紫電は待っていたように刀を構えた。

「さて、用事は済んだ。これから貴様らを滅ぼす」

 かつての同僚は刃を抜いて、向かい合った。

 一言も発しない。

 しんと張り詰めた空気だけがそこに存在した。

「紫電」

「何だ、命乞いでもするか?」

「いいや」

 雷電は澄み切った黒い瞳を紫電に向けた。かつてのような濁りはない。

「僕は雷電。通称『零』コピー=プロトタイプ。いざ、参る」

「そうか。貴様が師匠のクローンプロトタイプだったか。太刀筋が道理で似ていると思った」

 言葉を交わしながら、二人は刃を交える。目にもとまらぬ速さで移動しながら、的確に相手の急所を狙いながら。

 勝負は数時間経ってもまだ決着がつかない。紫電は攻めながら守り、雷電は守りながら攻めている。

 やがて二人は肩で息をし始めた。額には汗がうっすらと現れる。

「そろそろ、幕と行くか」

「そうだね。君と遊ぶのは楽しいけど。これ以上遊んであげる時間はないんだ。他勢力もジェノヴァに来ているから倒さないといけないからね」

 二人は距離をとった。

 そして同時に姿を消す。

 刃と刃がぶつかる音と空間を駆け巡る音だけが響く。

 数度の激突の後、二つの刃は折れた。

 同時に二人は姿を現した。

「勝負あったな」

 雷電は地に伏せていた。

「楽にしてやる。死ね」

 紫電は折れた刃を地面から引き抜く。刃を掴んだ手からは血が流れる。

「何故だ。最強の暗殺者『零』のコピープロトタイプの僕が何故敗れる……?」

 雷電はよろよろと立ち上がった。

「貴様に信念がないからさ」

「何だと?」

「貴様は何のために戦う? そこにいる脳みそのためか?」

「そうだ。偉大なる指導者に従えば栄華が約束される。それが最良の選択なんだ」

「……貴様は操られるだけのマリオネットか。自分で考え動く。己の道は己で切り開く。そんな意志は貴様にはないのか。少なくとも、師匠オリジナルにはあったぞ」

 雷電は折れた刀を拾った。

「言っただろ。僕は信じられないのさ。自分も、この世界も」

「俺だって同じだ。師匠がいなくなってから、常に迷っていた。これでいいのか、これでよかったのかと何度も何度も自分に問いかけた。そして、逡巡の末に答えを出した。それがこれだ」

 雷電は力なく笑った。

「君は、やはり強いな」

「強いわけではない。強くあろうとしているだけだ」

「それが強いのさ」

 紫電は刀を一旦鞘に収める。

「問答は終わりだ。そこをどくか、くたばるか。五秒くれてやるから選べ」

 再び、紫電は刀をかつての友に向けた。

こんばんは、Jokerです。

あと数話で終了です。

もう少しお付き合いください。


というわけで

次回またお会いできることを祈りつつ……

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