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種蒔く者  作者: 星見流人
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第十一話:場所

「モウ少シデ、完全ナル世界ガ完成スル」

 『クィーン』は誰もいない空間で呟いた。それが何を意味するのかは誰にも分からない。何を目指しているのかも分からない。発言者を除いては。

 雷電は東京エリアに入った。友愛教団が小川に対して蜂起したとの情報を聞きつけたからである。ぼろぼろの黒い忍び装束を身に纏い、端麗な面は無感情にただ目的地に向かって歩く。

 案の定、鳩川はすぐに見つかった。東京タワーを占拠し、友愛タワーと改称して本拠地としている。

「偉大なる指導者よ。鳩川の本拠地を発見しました」

 雷電は『クィーン』に携帯電話で通信を入れた。

「ヨクヤリマシタ。鳩川ハ数分後ニたわーカラ出テクルハズデス。ソコヲ急襲シナサイ。ソレカラ、千崎ハコチラニ送ルヨウニ。迎エノろぼっとヲ向カワセマシタ」

「仰せのままに」

 雷電は千崎をロボットに預けた。そして、『クィーン』の指示に従い、鳩川を影に隠れて待ち続ける。

 『クィーン』の予想通り、鳩川はタワー入り口から現れた。豪奢なコートにシルクハットを被っている。

「ボクの友愛王国はまだできないのか」

 と側近らしき男に話しかけていた。

「ふん、相変わらず宇宙人だな」

 雷電は鼻で笑うと刀を抜き、瞬時に側近らしき男を切り伏せた。

「鳩川紀夫、お前の命頂戴する。全ては偉大なる指導者のために」

 まっすぐに獲物を見つめ、雷電は宣言する。

「おお、お前は雷電! ボクにたてつくのか? ボクは日本の首相だった男だぞ」

 鳩川はあたふたと身体を動かした。目はうつろでどこを見ているのか分からない。

「たてつく? 違うな。これは命令だ。お前はもうこの世界に必要のない人間なのだ。始末する」

「ボクは友愛の伝道師としてこの世界を救うんだ! 友愛帝国初代皇帝鳩川紀夫として歴史に名を刻むんだぁ!」

 62歳の男が大人気なく大声で叫ぶのを雷電は無反応で見ている。

「大抵愚者は叶わぬ望みを持つ。夢を抱いたまま果てるがいい」

 雷電が刀を振り上げると同時に銃声が響いた。銃弾は刃に当たり、的確にそれを破壊した。鳩川は腰を抜かして、その場にへたりこんだ。

「誰だ?」

「調子にのるなよ、ゾンビ野郎」

 タワーの三階からジョーカーが狙いを定めている。

「生きている癖に死んだような目をしやがって」

「お前は何がしたい?」

「とりあえずはこのスポンジ頭の護衛だ。ここで殺されちゃあ、俺の仕事に傷がつくんでね。別にこんな野郎はのたれ死のうが何だっていいんだが」

 雷電は濁った瞳を一瞬伏せる。

「とりあえず今日は得物が台無しになってしまった。退かせてもらう」

「もう来んなよ。お前は操られるだけの人形か?」

「何……?」

 雷電は表情を変えた。顔がこわばる。

「大方、『クィーン』にまだ犬みたいに従っているんだろ? もう悪夢から醒めてもいい頃なんじゃないか?」

 答えは沈黙だった。

「ま、お前の生き方だ。俺はどうこう言わない。けど、つまらない生き方だな、とは思う」

「僕はもう何を信じたらいいのか分からないんだよ」

「何信じてもいいんだよ。正解も間違いもない」

 端正な顔は俯いた。長い髪は顔を覆って表情は見えない。

「それでも僕はこれにすがるしかないんだ」

 小さな声で呟くと、身を翻し、雷電は逃走した。

 紫電とガレスはジェノヴァに戻った。結局手がかりはつかめなかったのである。

「おい、紫電」

「何だ?」

 無愛想に顔をガレスに向けずに返事した。

「ここに何がある?」

「『クィーン』に抵抗するレジスタンスのアジトがある。俺は一応ここで仕事を請け負って動いている」

「で、そのアジトに戻るってか」

「ああ」

 ジェノヴァの街中を歩いていると、二人はロボットに護衛されて歩いている千崎を偶然発見した。

「おいおい、ビンゴじゃねえか」

「どうかな。おとりかもしれん」

 ガレスは片腕に取り付けられた銃をいじる。

「とりあえず、つけてみようぜ」

「任せる。俺は一時レジスタンスのアジトに戻る」

 紫電はガレスに任せ、アジトに戻った。

 アジトではグレンとマスターが迎えてくれたが、戦況の変化はないとのことだった。特にレジスタンスに被害もなければ、『クィーン』の動きに変化が見られたわけでもない。

 現在の状況確認だけを終えると、紫電はすぐにアジトから出てガレスと合流すべく、歩き出した。

 ガレスはただ監視に徹しており、紫電に千崎が『ジェノヴァ教皇庁』に入っていったことを確認していた。

「十中八九、あそこに『クィーン』がいるとみて間違いないな」

「ああ」

 教皇庁はかつてローマ教皇が執務のために使っていた建物である。外敵からの侵入を防ぐために設けられた白い外壁に囲まれた紅いレンガづくりの城で、庭にはバラをはじめとする様々な花が植えられている。また、城の屋上には大きな銀色の十字架が飾られていた。

 『クィーン』が置かれることになったのは連邦大戦初期に教皇たちが行方不明になり、この城を使う者がいなくなったからである。それ以来、『クィーン』はここに座り続けていた。

 目星をつけると、紫電たちはそのまま監視を続けた。

 ある男が来るまで。

こんばんは、Jokerです。

今日も一日いい日……ではありませんでした。

口蹄疫の感染が八万頭を超え、ウィルスの出所が韓国だとか。

盗まれた和牛の精子も行方不明。

推測の域を出ませんが、韓国による牛の盗難ではないかと。


市場価格は既に三割値段を上げており、和牛を食えなくなる日もそう遠くはなさそうです。


というわけで

次回またお会いできることを祈りつつ……

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