豚顔令嬢は鼻フックで世界を救う
「お前は豚だ。鼻フックをつけて生きろ」
その言葉とともに、令嬢エリス・フォン・グランディアの鼻に銀のフックが装着された。魔王討伐の宴の最中、突如現れた謎の賢者によって、彼女は“豚顔の呪い”をかけられたのだ。
鼻は上向きに吊り上げられ、頬は紅潮し、呼吸するたびに荒い鼻息が漏れる。美貌の令嬢は一夜にして“鼻フック令嬢”となった。
だが、これはただの呪いではなかった。
「この鼻フックは、世界の真理を見抜く力を与える。羞恥を超えた者だけが、真の英雄となる」
賢者の言葉に、エリスは震えながらも立ち上がる。鼻フックの痛みと羞恥に耐えながら、彼女は旅に出る。目的はただ一つ――この呪いを解き、世界を救うこと。
道中、彼女は仲間と出会う。豚化フェチの魔導士レオン、鼻息で風を操る風使いミーナ、そして鼻フックを美学とする謎の騎士・フックマン。
彼らは言う。
「鼻フックは恥ではない。誇りだ」
エリスは次第に、自らの鼻フックに誇りを持ち始める。戦闘では鼻息で敵を吹き飛ばし、交渉では豚顔で相手の警戒心を解く。羞恥を超えた先に、真の力があった。
やがて、魔王との最終決戦。
魔王は言う。「その顔で私に勝てると思うか?」
エリスは鼻を鳴らす。「この顔こそ、世界の希望よ」
鼻フックが輝き、世界を包む光となる。豚顔令嬢は、鼻息とともに魔王を打ち倒す。
そして彼女は言った。
「私は豚じゃない。私は、誇り高き鼻フック令嬢よ!」
魔王の城は崩れ落ちた。
エリスは剣を収め、鼻フックをきらりと光らせながら魔王に歩み寄る。地に伏した魔王は、かつて世界を恐怖で支配した男。だが今、その顔には敗北の色が濃く刻まれていた。
「なぜ……豚の顔で、私に勝てた……」
魔王の問いに、エリスは静かに答える。
「豚の顔ではない。これは、羞恥を超えた誇りの証。あなたも、それを知る時よ」
そう言って、エリスは懐から一対の銀の鼻フックを取り出した。魔王の鼻に手を伸ばすと、彼は抵抗することなくそれを受け入れた。
カチリ。
鼻フックが装着された瞬間、魔王の顔が変わる。吊り上げられた鼻、荒くなる呼吸、そして頬に浮かぶ微かな紅潮。かつての威厳は消え、代わりに人間らしい弱さと、再生の兆しが現れた。
「……不思議だ。羞恥を感じるはずなのに、心が軽い」
「それが鼻フックの力。恥を受け入れた者だけが、真に自由になれるの」
魔王は涙を流した。鼻フックをつけたまま、地に頭を下げる。
「私を……弟子にしてくれ」
こうして、魔王は鼻フック騎士団の一員となった。
エリスの旅は続いた。
鼻フックを装着された魔王は「フック卿」と名乗り、各地で鼻フックの啓蒙活動を始めた。民衆は最初こそ戸惑ったが、彼の鼻息に込められた誠意に心を動かされ、次第に鼻フックを受け入れていった。
「鼻フックは、心の鎧だ!」
「鼻息は、魂の叫びだ!」
鼻フック騎士団は拡大し、羞恥を超えた者たちが集う新たな秩序が生まれた。
ある日、エリスは王都に招かれた。国王が直々に彼女を讃えるというのだ。
「鼻フック令嬢よ。汝の勇気と鼻息により、我が国は救われた。よって、汝を“鼻聖女”として讃える」
王の言葉に、エリスは深く頭を下げる。そして、王にも銀の鼻フックを差し出した。
「陛下も、羞恥を超えてください」
王は一瞬ためらったが、民衆の前で堂々と鼻フックを装着した。その瞬間、王都に歓声が響き渡る。
「鼻フック万歳!」
「鼻聖女に栄光を!」
こうして、鼻フックは王国の象徴となった。
数年後――
エリスは静かな村で暮らしていた。鼻フックは今も彼女の鼻に輝いている。かつての羞恥は、今では誇りとなり、世界を変える力となった。
彼女のもとには、鼻フックを求める者たちが日々訪れる。
「私も、鼻フックを……」
「羞恥を超えたいんです!」
エリスは微笑みながら、銀のフックを手渡す。
「恥を受け入れた者だけが、真に強くなれる。さあ、鼻を上げて――世界を見なさい」
そして今日もまた、鼻フックの輝きが一人の心を照らす。
豚化萌えの感想
>かつての威厳は消え、代わりに人間らしい弱さと、再生の兆しが現れた。
こういう表現が正に理想というものです。
鼻フックにしろ豚鼻にしろ、そういった効果があると思っています。隙のなさそうな美人が、美人じゃなくてイケメンの男性でも良いです。鼻フックをつけられて豚顔を晒すと、途端に愛着が出てきますよね。それが人間らしい気がするのです。大事な場面ではカッコつけなきゃとか綺麗に振る舞わなきゃとか皆さん日々そうされていると思うのですが、敢えてそこで鼻フックをつける。そうすると緊張もほぐれると思います。それこそ戦争している国の代表どうしだったりが鼻フックつけたら、何か戦争も終わる気がするのですよ、
気のせい!?
そんな感じで鼻フックが世界を救う的なこと、現実世界でもままあると思います。




