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士官学校

ライズ「どう……ですかね?」



 士官学校入学当日、ライズは黒い軍服に似た制服を着せられていた。その姿を真正面から見ていたレイアだったが……。



レイア「……申し分無いわ」



ライズ「は?」



レイア「むしろ似合い過ぎていて不気味ね。とても魔族とは思えないわ」



ライズ「は、はぁありがとうございます」



水帝「何よその反応。レイア様に誉められてるのよ? もっと喜びなさいよ」


 と、ライズに並び立つ水帝がライズに鋭く告げる。水帝もライズと同じく、士官学校の黒い軍服を着ていた。というのも、レイアの計らいでライズの学園生活の補佐と、国の戦力として士官としての勉強をし直したいという本人の希望により水帝もまた学園に入学するのだった。



レイア「あら水帝、焼きもちかしら?」



水帝「そ、そんなんじゃ……」



レイア「似合ってるわ。可愛いわよ水帝」



水帝「あ、ありがとうございます……」



 呟くように返しながら頬を僅かに赤くして水帝は顔を伏せる。



ライズ「うん。とても良く似合ってる」



水帝「あなたはそういう事言わなくて良いの!!」



 対してライズの言葉には水帝は顔を真っ赤にして反発する。(誉めたのに)と、今度はライズが顔を落とす。


 そんなライズから顔を反らし、レイアへ向き直る。



水帝「ではレイア様。この度は学園への入学許可ありがとうございました。つきましては力と知性を修め、更なる成長を遂げます」



 水帝の言葉にレイアも真っ直ぐに彼女を見つめて返す。



レイア「では水帝、ライズ。あなた達二名の技能習得と心身の成長を期待しています。次この場所で会う時は、一回り大きくなっていることを祈るわ」



水帝、ライズ「ありがとうございます!!」



 二人は揃って頭を下げる。そんな二人にレイアは笑顔を向けた。



レイア「それでは二人共、いってらっしゃい。くれぐれも無茶はしないように」



 水帝とライズは「行ってきます!」と告げて宮殿を後にした。



水帝「いいライズ。学園に行ったら目立った事はしないで」




ライズ「なんで?」




水帝「あなたが魔族と知られたら、私はあなたを守れなくなる。水帝という私の立場で、あなたを庇えばいらない混乱を生む可能性が高いからよ」




ライズ「そんな。僕は水帝に頼ってばかりなんて嫌だよ」




水帝「そういうのは自分の身を守れるようになってから言って。今あなたは敵地のど真ん中に居るのよ?」




受付「ああ、お待ちしていました水帝様。それと……」




ライズ「?」




 ライズは受付の女性が怯えたような表情になるのを見逃さなかった。





受付「ライズ様でよろしいですか?」





ライズ「はい。ライズ・エクシードです」





受付「あ、はい!じゃあホームルームが始まる時間なので二人を教室まで案内します!」




水帝「お願い」




 二人は受付について行く。と、ライズは水帝に耳打ちをする。




ライズ「……水帝、あの人少し様子が変じゃないかい?」




水帝「まさかとは思うけど……」




 そう呟く水帝の顔はうかない。




受付「お待たせしました!こちらが特待生のクラスになります!ではさよなら!」




 そう告げて受付は二人の前から勢い良く去って行った。




水帝「失礼な態度ね」




 受付に対してそう毒づきながらも、水帝は教室のドアをノックする。





???「はい?」




 ガラガラと音を立てて出てきたのは教室の担任らしい女性だった。





担任「ああ、新入生ね。どうぞ入ってください」




「失礼します」と先陣を切って水帝が教室に入る。ライズもそれに続いた。



 教室は講堂のように広く、階段の様に机か並んだいる。皆が囲む様な形でこちらを見下ろしていた。その視線にライズは緊張する。




担任「この二人が先日話した新入生です。途中参加ですが、どうか仲良くしてあげてください」




女子生徒A「……あれってホントの水帝様!?」




女子生徒B「……ええ、間違いないわ。私昔見たことあるもの、本物よ」




男子生徒A「……うわっめっちゃかわいい」




男子生徒B「……馬鹿、お前じゃ不釣り合い過ぎる」




 水帝を見た生徒達がざわつく。そんな中、全く緊張など感じさせない様子で水帝は口を開いた。



水帝「私は水帝。私の事を存じている方々も居ると思います。ですが立場ではなく、一人の竜人族として私を扱ってください。よろしくお願いします」



 一礼する水帝。その水帝へと生徒達が拍手を送る。



 ライズ(よし、僕も!)



 ライズは意気込み、拍手が止むと同時に切り出した。



ライズ「僕はライズ・エクシード。魔族ですが、どうかよろしくお願いします!」



 勢い良くそう切り出したライズ。だが教室は静まり返ってしまう。



ライズ「あれ?」



水帝「馬鹿!」



 水帝が声を上げるがもう遅い。生徒達がこそこそと小言を言い始める。



 だがパァン!!! と担任が手を叩いて黙らせる。



担任「皆新入生に思う事があるでしょうが同じ生徒には違いありません。どうか仲良くしてあげてください」



 そう紹介された水帝は軽く頭を下げる。ライズも水帝に習い礼をした。そんな中水帝が囁く。



水帝「……お願いだから目立つ真似は控えて」



ライズ「…………ごめん」



 二人は頭を上げる。すると担任が二人の席を紹介する。ライズは先に席へと向かう。水帝もため息をついてからそんなライズに着いて行った。



水帝(気を取り直さないと、とにかく彼が魔族であることは皆に知れ渡ってしまった。今更この事実を曲げる事は出来ない。きっとこのままだと迫害を受ける。私がなんとかしないと……!)



 そう意気込んで水帝は席につく。……だが。



ライズ「えっと……水帝?」



 水帝は遅れて気が付く。そこはライズの席であり、水帝はライズの膝の上に座ってしまった。


 周りがざわつく、水帝も頭が真っ白になって何も考えられなくなってしまう。



担任「……水帝様?」



 担任に言葉をかけられ、水帝は何も考える事なく口を開いた。



水帝「何か?」



 一週回って堂々とした態度で望む水帝。後に引けない水帝はそのまま続ける。



水帝「これは私の椅子よ。私の椅子に座って何が悪いの?」



 混乱した内心とは裏腹に全く迷いなく言い放つ水帝。その発言に周りが一層ざわつき、担任も焦りを露にする。



担任「そ、そうですか……。で、では気を取り直して授業を始めましょう」



 水帝の発言に慌てた担任。周りの生徒のざわつきは治まらないまま。それすら分からないまま担任は授業を始めてしまう。



ライズ「……水帝」



 ライズの呼び掛けに答えない水帝。



水帝(なにやってるの私……)



 水帝はライズの膝の上で頭を抱える事しか出来なかった。



ライズ「何やってんだよ!」



 二人は初日だからと午前中の授業だけに出席し、後は寮で身辺整理をしていていいと告げられて寮に来ていた。


 寮に着くなり思わずライズは声を上げてしまうが……



水帝「あなたこそ何やってるのよ! あれ程自分の正体を晒すなって言ったのに、何故初手からああなるのよ!」



ライズ「そんなの隠し通せる訳ないだろ!? 大体、担任や受付の態度でなんとかく正体がバレてたのは分かってたろ?」



水帝「だからって、名乗り出る事なかったでしょ!?」



ライズ「そんな事より君だよ! 僕は君の椅子じゃない!」



水帝「仕方ないでしょ!? あなたが変な事するせいで私も混乱してたのよ!!」



ライズ「そのせいで僕は君の奴隷扱いじゃないか!」



水帝「…………………………」



 思う所があるのか水帝は黙り込む。その様子を見てライズは語勢を弱める。



ライズ「とにかくペットみたいな扱いはやめてくれよ……」



水帝「その事だけど……。奴隷という立場は返って良かったかもしれないわ」



ライズ「は!?」



 水帝の言葉に思わずライズは言葉を返してしまう。



ライズ「僕が奴隷でいい!?」



水帝「ええ」



ライズ「ちょっと待ってくれ! それじゃ僕は自由に出来ないじゃないか!」



水帝「自由なんて、この学園に来た時点でないでしょ?」



ライズ「そうじゃなくて、僕の意思とか発言とか!」



水帝「あなた、自分の立場分かってるの?」



 冷たく言い放つ水帝。その言葉にライズは思わずカッとなる。



ライズ「もともとは君のミスじゃないか! もういい、僕に君の助けは必要ない!」



 そう声を上げてライズは部屋から飛び出した。




ライズ「何なんだ水帝の奴!」



 憤りを顕に、ライズは通路をずかずかと歩いていく。と、



???「あの」



 唐突に声を掛けられるライズ。



ライズ「なに!?」



 その声から女子生徒であろう事は分かったライズだが、思わず語気が強くなってしまう。


 するとそこにいた緑髪でメガネの女子生徒は怯えたように震えて言葉を紡ぐ。



女子生徒「あの……すみません。……もしかして新入生の方でしょうか?」



 明らかに怯えた様子に、怒っていたライズもさすがに慌てる。



女子生徒「私はエメラルド……。もしかして、寮の探索ですか?」



ライズ「あ、うんそんな感じ」



 ルームメイトと喧嘩して出てきたなんて言い出せないライズは咄嗟にそういう事にした。



エメラルド「えっと、ここ女子寮なんです。つまりその……男子生徒は立ち入り出来ない訳でして」



ライズ「え!? そうだったの!?」



 驚いて声をあげるライズ。そんなライズにエメラルドは若干怯える。



ライズ「そうとは知らなかった。ごめんエメラルド。教えてくれてありがとう!」


 そう言って走り去ろうとするライズ。しかし、その足を直ぐ止めてライズは振り返る。



ライズ「ごめん。出口ってどっちかな?」



 しばらくし、エメラルドの案内でライズは共有スペースまで返って来る事が出来た。



ライズ「ありがとう。君が居なかったらここまで来れなかった」



エメラルド「いえ、そんな事は……」



ライズ「ありがとうエメラルド。これからもよろしくね」



 そう手を振って別れようとするライズ。



エメラルド「あの!」



 が、エメラルドが突如声を上げる。思わず肩を跳ねて驚くライズ。



ライズ「えっと……どうしたの?」



エメラルド「その……ですね。共有スペースも、案内が必要かな……なんて」



 顔を赤くし、もじもじとしながらエメラルドは告げる。



ライズ「え、いいの!? じゃあお願いしてもいいかい?」



 ライズの言葉にエメラルドは何度も頷く。



ライズ「じゃあ頼んだよエメラルド!」



エメラルド「はい! えっと……まずは」



 そう悩みながらも、エメラルドはライズに共有スペースの説明をする。それに付きっきりで案内されるライズだが、途中で一つ疑問が生まれた。


ライズ「エメラルドは授業に出なくていいの? 僕達は今日は出なくても良いって言われたけど」



エメラルド「…………………………」



 途端にエメラルドの表情が暗くなる。



エメラルド「私はクラスで浮いてるから………居ない方がいいんです」



ライズ「え?」



 エメラルドの言葉を理解出来ないライズ。とそこに



女子生徒「あ、エメラルドじゃない」



 通路の前からケバい感じの女子生徒が歩いて来る。声を掛けられるなり、エメラルドは肩を跳ねて驚き、表情を固くした。



 対する女子生徒には取り巻きが居るらしく、同じようにエメラルドの前へと歩み寄る。



エメラルド「……なんですフレア?」



 震えた声で尋ねるエメラルド。



女子生徒A「フレア様だエメラルド!」



 そういってこれまたチャラチャラとピアスやら何やらを沢山着けた女子生徒がエメラルドを突き飛ばす。


 エメラルドは短い悲鳴を上げて尻餅をついた。



ライズ「何するんだよ!」



 声を荒げるライズに女子生徒Aは眉間に皺を寄せる。



女子生徒A「何あんた? 見ない顔だけどエメラルドの彼氏かなんか?」



女子生徒B「ないない! あのエメラルドに彼氏だなんて!!」



 そう大笑いする女子生徒B。「だよねー!」と釣られて女子生徒Aもケタケタと笑い出す。



 そんな中、一人だけフレアだけは睨み付けるようにライズを見つめていた。



 すると次の瞬間、フレアはライズを蹴り飛ばす。



 その蹴りがエメラルドを狙ったものだと思ったライズはエメラルドを庇おうとするが、そのせいで蹴りはモロに脇腹に入る。



ライズ「ぐっ!!」



 脇腹に靴が刺さる感覚を覚えながらライズは数メートル後方へと蹴り飛ばされた。





ライズ「ゲホッゲホ!!」



 あまりの衝撃に噎せながらライズは体を起こす。



フレア「穢らわしい……あなた魔族でしょ?」



女子生徒A&B「えっ!?」



 女子生徒二人が驚いた表情を浮かべる。それはエメラルドも同じだった。



エメラルド「うそ!?」



女子生徒A「何でこんな所に魔族が!?」



女子生徒B「何なんだお前! 何のつもりだ!!」



ライズ「何のつもりもない!僕はただ軍の士官になりたくてここに来ただけで……」



フレア「士官? 何言ってるの、あなた水帝様の奴隷でしょ?」



ライズ「違う、それは水帝が勝手に言っただけだ! 僕は奴隷なんかじゃない!!」



フレア「そう、なら良いわ」



 フレアが手を掲げる。それに反応して女子生徒二人はすぐさま後ろに下がった。



フレア「つまりあなたは私達の敵って事でしょ? ここで殺しても構わないわよね?」



エメラルド「逃げて!」



フレア「あなたは黙ってなさいエメラルド! それ以上庇えばあなたは魔族の内通者になるわよ!? だからコイツは……」



 フレアがライズに手を翳す。すると次の瞬間……



フレア「破ぜろ!」



 通路に轟音が響く。ライズの目の前が輝き、ライズは訳も分からずに吹き飛ばされて床を転げ回る。最後に遅れて全身を襲う痛みに唸り声を上げる。



ライズ「う……うぅ」



フレア「牽制のつもりだったのだけど、あなた魔族の癖に凄く弱いのね。それとも魔族って本当はこんなに弱いのかしら?」



ライズ(痛い……痛い痛い痛い!)



 全身焼け着く痛み。当然だ。ライズは先程の魔術で前面の体を焼かれていた。おまけに爆風を吸い込んで肺も焼かれ、息すらまともに出来ず、地獄のような苦しみに声すら上げられない。そこに……



女子生徒A「なんだテメェ! 弱えくせしてしゃしゃってんじゃねぇよ!」



 動けないライズの腹に女子生徒Aが蹴りを入れる。



女子生徒B「フレア様に楯突くとこうなんだよ!」



 次に女子生徒Bがライズを蹴る。二人は交互にライズを蹴り飛ばす。息も出来ず、体を焼かれ、身動き出来ない所に容赦の無い蹴りの応酬がライズを襲う。



ライズ(誰か……助けて……)



 薄れ行く意識。ただただ続く苦痛。



フレア「何、あなた泣いてるの?」



 心底不愉快そうな顔で告げるフレア。それを口にして、女子生徒二人が指を指して笑う。



女子生徒A「だっせー!!! お前助けに入ってそんなんかよ!?」



女子生徒B「どうした王子様? 愛しのエメラルドちゃんだって見てんのに、そんなじゃ泣き落としにもなんねぇぞ?」



 その上屈辱までもがライズを襲う。どうしようもない苦痛が募る。全身が焼け着く様に痛い、胸が苦しくてどうにかなりそうだった。


ライズ(誰か……助けてください。誰か……誰か!!)



???「何をしているの?」



 その時、ライズのよく知る声が耳に入る。



ライズ「……す……て……」



 声にならない声で、霞んだ視界でライズは水帝を探る。



 女子生徒二人の顔が凍り付く。その目の先に彼女はいた。



水帝「聞こえないのかしら? 何を、しているの?」



女子生徒A「……嘘だろ?」  



女子生徒B「本物の水帝!?」



 狼狽える二人。水帝は真っ直ぐに進み、二人に歩み寄る。その威圧感に気圧された二人はライズから離れる。



 そのまま水帝はライズに寄り添い回復魔法をかける。ライズはようやく呼吸でき、大きく息を吸ってから噎せ返る。


 それを見てから水帝は立ち上がり、再び女子生徒を見た。



女子生徒A「そいつ魔族なんだろ!? 庇う必要なんてねぇだろ!」



水帝「ええそうね。けど、彼は魔族である以前に私の奴隷よ」



女子生徒B「けどそいつがでしゃばって来たんだ!」



水帝「これは私の椅子よ? そんな程度の理由で私の椅子を傷付け壊そうとしたのかしら? だったら、あなた達には相応の罰が必要ね」



フレア「申し訳ありませんでした水帝様」



 そうフレアがひざまずき、顔を伏せる。その姿を見て二人も膝まずいた。



フレア「此度は私の独断でそこの者が魔族であり、伐つべき敵だと判断しました。罰なら私が受けましょう」



水帝「……顔を上げなさい」



 水帝の言葉にフレアは顔を上げる。



水帝「あなたはフレアドラゴンの契約者ね。名前は私も聞いた事があるわ、とても優秀な人物であると。そして“継承者”の候補だったという事も」



 その言葉に一瞬フレアの表情が曇る。



水帝「今回の件はあなたに免じて見逃しましょう。でも二度とこんな事を起こさないように。他の生徒にも、私の所有物に手を出さないよう伝えてくれたら助かるわ」



フレア「寛大な処置、ありがとうございます」



 深く頭を下げるフレア。だがしばらくするとすぐ立ち上がり、去っていく。慌てた様子で取り巻き二人も着いていく。



エメラルド「あの……」



水帝「?」



エメラルド「彼は……ライズは私を庇ってくれたんです。そしたらこんな事になって……すみません!」



水帝「……そう。あなたにも迷惑かけたわ。後は私に任せて」



 笑顔で告げる水帝。エメラルドも戸惑っていたが、最後に会釈するように頭を下げると、走ってその場を後にした。



水帝「……大丈──」



ライズ「ほっといてくれ!!!」



 ライズは水帝の差し伸ばした手を払いのけた。



ライズ「何も出来なかった……無様に君の助けを求める事しか……。何で僕はこんなに弱いんだ!! 君の言いなりにしかなれない……誰かの助けになる事も出来ないなんて……」



 膝まずくように蹲り、水帝に背を向けるライズ。そんなライズの前で膝をつき、回復魔法を唱えながらその丸くなった背中に水帝はそっと手を置いた。



水帝「ごめんなさい……。あなたの事何も考えてなかった。あなたを守りたい一心で、そんなあなたの気持ちを一つも理解しようとしなかった。その結果あなたを傷付けて、こんな事になって……私にはあなたに今掛けられる言葉が見当たらない。けど……それでも……」



 ライズの胸の内に語るように、水帝はライズの背中に額を寄せる。



水帝「私はあなたに助けられた。そんなあなたが傷付く姿なんて見たくないの。だからこんな無茶しないで……私があなたの力になるから、一人でどうにかしようとしないで……。私の側から離れないで……」



ライズ「水帝……」


 ライズは情けない呻き声が出そうになるのをぐっと堪えて告げた。



ライズ「僕は必ず強くなるから……。君が心配しないくらい……君を守れるぐらい強くなるから……! だからそれまで僕を守ってくれ。……僕も君の側を離れないから」


水帝「…………………うん」




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