表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

崩れる平穏


教師「で、あるからして、魔族と竜人族には……」



教師は黒板を書いていたチョークを止めて振り返った。



そこでは金髪の少年が机に突っ伏していた。



金髪の少年に向け、教師はチョークを投げた。



教師「ライズ!またお前か!」



ライズはチョークではなく、その大声に目を覚ます。



ライズ「あ!すみません!」



慌てて起きたライズは立ち上がった衝撃で机を倒してしまう。


「ははははは!!」



周りからは笑いが上がる。



ライズは顔を伏せて唸る。



教師「もういい、お前は廊下に立ってろ!」



しぶしぶライズは廊下に出て行った。


ライズ「は~あまたか……」



ライズはため息をつく。



ライズは家が貧しいので稼ぎが少ない。



そのため学費も全部自分で稼がなければならない。


都市から遠いこの村ではロクな働き口もなく、近場の山での狩りでライズは生計を立てていた。



ライズ「あーあ」



ライズは伸びをする。



やっと眠いだけの学校から解放された。



実はライズは六年で済む教育課程を四回留年していて、皆から笑われていた。



落ちこぼれのライズ。



皆が口々にそう言っていた。



そのためライズには友達が居ない。



どちらにしても狩りが忙しい為、ライズは友達と遊ぶ事が出来ないのでどちらでもいいのだが。



ライズ「ただいま~」



ライズは帰宅した。



「お帰りなさい」



するとそこには、ストレートのブロンド色の髪をうなじまで伸ばした、青い瞳をした女性が、フライパンを片手に夕飯を作っていてくれた。



彼女はシャリー・イクシード。ライズの姉だ。




ライズ「ご馳走様でした」



シャリー「お粗末様でした」



シャリーは笑顔で食べ終わった皿を片付けて行く。



ライズ(……姉さん?)



ライズは思った。シャリーがいつもより口数が少ない。



それにいつもより表情がよくない。



ライズ「姉さんどうかした?」



シャリー「………………」



シャリーは答えてくれない。



ただ食べ終わった食器を洗うだけだ。



ライズ「姉さん?」



シャリー「…………………………ねぇ」



シャリーは悲しみに暮れた目で振り返る。



シャリー「ライズ……実は……」



ドォォォォォォン!!



その時、村の外で物音がした。



ライズ「なんだ!?」



ライズは慌てて家を飛び出した。



「うわぁぁぁぁぁぁ!!」



「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」



村は炎上し、村の人々は皆が慌てて、ごった返していた。



「竜人族だ!竜人族の奴らが攻めて来たぞ!」



逃げる男の一人がそう言いながら去って行った。



ライズ「竜人族!?」



ライズは燃え盛る炎の先に目をやる。



するとその先には、隊列を組んだ竜人族の部隊があった。



「フッハハハハ!!魔族共を皆殺しにしてしまえ!」



竜人族の一人が剣を振り上げて村人を襲う。



村人「ひぃ!?」



村人はなすすべもなく切り裂かれてしまう。



村人「逃げろぉぉぉ!」



そして村人は再び逃げ始めた。



ライズ「うわああ……」



それを見てしまったライズも、顔を青くして森に逃げ込んだ。



ライズ「ハァハァ……」



ライズは何とか森の中まで逃げ切る事が出来た。



遠くに燃え盛る村が見える。



だがそれを見てライズは気がついた。



ライズ「姉さん!?姉さんが居ない!!」



ライズは村にシャリーを置いて行ったしまったことを思い出してしまった。



ライズ「助けに行かなきゃ! ……でも」


先程の惨状を見てしまったライズは足が竦んでしまう。



ライズ「…………………………よし」



だがシャリーを助けなければならないという使命感を感じ、再び村へと走り出した。



ライズ「姉さぁぁぁぁん!!」



ライズは灼熱の焦土と化した村の中を駆けて行く。



その途中、後ろから斬りつけられ、燃えている死体をいくつも見た。



それを見る度に、ライズは不安になった。


ライズ(姉さん……どうか無事で居て)



と、その時だった。



ライズ「!!」



燃え盛る村の中心に、竜人族の部隊が集まっていた。



そしてその中には気を失って兵士に担がれて行くシャリーの姿が。



それを見たライズの頭に血が上がり、叫んだ。



ライズ「姉さんを返せ!!」



部隊長「迎え撃て!!」



ひとりだけ、他の兵と違った立派な鎧を纏った騎士が部下に指示を出す。



すると二十人いる内の五人の兵が一斉にこちらに向かって来た。



「ハァッ!!」



一人目が剣を振りかぶる。



だが動きはライズの方が早く、ライズは兵の腹にアッパーを入れる。



兵は砕ける鎧と共に吹き飛んで行った。



「死ねっ!」



続けざまに次の兵が剣を構えて来る。



ライズは先程の兵が手放した剣を掴み、それを振り抜いた。



「!!」



すると兵士の両手は落ちた。



「隙あり!」



更に続けて三人目。



ライズは両手が落ちた兵を引き寄せた。



「な!?」



三人目の兵士は剣を引こうとするがもう遅い。



盾にした腕の落ちた兵を、三人目の兵士が貫く。



三人目の兵士は怯えている。



その隙を突いて続けざまにその三人目の兵士も斬り伏せた。



部隊長「ほう……」



部隊長は声を上げた。



部隊長「なかなかやるじゃないか。面白い、俺が直々に相手をしてやろう」



そう言って部隊長は前に出て来た。



道を塞ぐように立っていた兵達が道を譲る。



ライズはその部隊長から溢れ出る魔力に汗が止まらなかった。



ライズは歩み寄る部隊長に恐怖し、後退りしてしまう。



部隊長「ふっ、恐れるのも無理はない。俺は竜人族でも上位の竜と契約してるからな。……いでよ深淵」



突如、部隊長の手に漆黒の剣が現れた。



部隊長「楽しませろ?小僧!」



ライズ「くっ!」



ライズは部隊長の攻撃を受け止める。



バキンッ!



だがその瞬間、ライズの持っていた剣が折れてしまう。



その破片がライズの肩に刺さり、鮮血が散った。



ライズ「ぐ……ぐはっ!」



その痛みに怯んだライズの腹に部隊長は蹴りを入れた。



ライズは数メートル吹き飛び、燃え盛る民家にぶつかり、落ちた。



部隊長「もう終わりか。つまらんな」



動かないライズに、部隊長は剣を振り上げる。



ライズ(もう駄目だ……!)



ライズは目を瞑り死を覚悟した。



だがその直後だった。



キンッ!



剣を防ぐ音が辺りに響いた。



ライズが目を開と、そこには六枚の黒い翼があった。



だがライズは痛みに耐えきれず、そのまま気を失った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ