表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

嗚呼ロリータ

〈引導は鱈腹食へるさくらんぼ 涙次〉



【ⅰ】


 貝原麻織、10歳。

 杵塚由香梨、11歳。

 歳が近い、と云ふだけの類似點である。他に似てゐるところ‐ まあまあ美しい女の子だ、と云ふ點ぐらゐか。それ以外には何にもない。

 麻織は由香梨の事をよく知つてゐた。調べ上げたのである。私立探偵を雇つた。興信所と云つた方がいゝか。カネづくで何でもやる職業。

 何故調べたのか、と云ふと、由香梨の事が羨ましかつたからである。憧れのカンテラ、神田寺男と同じ屋根の下、起居してゐるのだ! もし叶ふのなら、躰はその儘に、心だけでも入れ替はりたかつた...



【ⅱ】


 そんな望みが實現すると云ふ、夢のやうな話を持ち掛けてくる者がゐた。【魔】、である。假に「取り替へ【魔】」とでもして置かう。カンテラに憧れてゐる彼女が、【魔】の云ふ事を信用するのは、矛盾、と云ふしかなかつたが、何せ戀してゐるこの齡頃の女の子、なる人種は、盲目なのである。甘い話に、つひ目が眩んだ。

 だがそれには条件があり、それは簡單な事ではなかつた。カンテラを誘惑せよ‐ それが「取り替へ【魔】」の司令、であつた。カンテラには所謂ロリコンの氣はない。そればかりか、女などゝ云ふ面倒(失敬!)な者は、悦美一人で充分だと思つてゐた。



【ⅲ】


 然し彼女は、当たつて砕けろ、とばかりに、「取り替へ【魔】」にOKサインを出し、由香梨と入れ替はつてしまつた。さて、突然所謂「いゝところのお嬢さん」になつてしまつた由香梨、これは【魔】の仕業だと、いち早く氣付いた。その事をテオに、連絡したのである。

 一般ピープルならいざ知らず、カンテラ一味の「常識」は、世間の常識とは大分かけ離れてゐる。テオ、今どこの家にゐるのか、由香梨に訊いた。すると、「貝原家」だと云ふ答へが‐ 頭のいゝテオには、説明なしでも大體の筋書きが分かつてしまつた。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈悲しみが透き通る迄漉き返すそれが現世の全て拭く紙 平手みき〉



【ⅳ】


 カンテラ、面倒くせーな、と思ひつゝも、「修法」の準備に取り掛かつた。テオの云ふには、次に來るのは、麻織の誘惑光線發射・笑、だらうとの事。だうか笑ひ話で濟んでくれ、とカンテラ、切に思つた。カンテラからすれば、靑天の霹靂である。幼稚な誘惑などは、冗談にもならない。



【ⅴ】


 さう、カンテラ怒り心頭であつた。すぐさま、「取り替へ【魔】」は召喚され(手間の掛かる「修法」だつたが、カンテラにしてみれば、だうしてもやらねばならない事だつた)、カンテラは彼女(云ひ忘れたが、この【魔】は女だつた)に詰め寄つた。

「だうせ人間の想ひ事など微塵も考へぬ、ニュー・タイプ【魔】なんだらうが、麻織ちやんの一途な氣持ちを惡用したのは許せん!」その方面には無関心な、カンテラにさう思はせたゞけでも、麻織は、倖せ、と云はねばならなかつたのだ。



【ⅵ】


「しええええええいつ!!」‐「取り替へ【魔】」は斬り伏せられた。麻織は傷付いたのだらうか。だとすれば… この一件、依頼人が彼女でも、可笑しくはない筈だつた。

 更に、由香梨と躰を入れ替はると云ふ、彼女の願ひが、カンテラには不憫であつた。ゆゑに貝原家にはこれを内緒とし、この件、ヤマとはしなかつた。

 で、結局、誘惑、は未然に防げたのである。こんな惡戲、惡いジョークとするにも程がある。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈猫首を傾げつ見たり走馬燈 涙次〉


 

 ‐ヤマとせぬ。要するに、カネの出入りはなかつた譯で、じろさん始め、一味一堂驚いた。じろさん「カンさん、妙に優しくないか?」‐「最近女ごゝろについては、散々勉強させられたんでね」。


 だが、元の躰に戻つた後も、麻織のラヴラヴ光線は、打ち止めとはならなかつたのである。今回は未然に防げた。然し次回は… そんなカンテラの戰慄は納めきれなかつた。ロリータ攻勢はまだまだ續く。そんなの書く方も面倒臭い。だが、そんぢやまた、アデュー!! と一應して置く。お仕舞ひ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ