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 第8話 喚ばれる仲間達

 私の家は貧乏だった。

 明日の生活に困るほどじゃないけど。


 時々物凄くお(なか)()くほど貧乏だった。


 どうしてなのかは分からない。

 働いている両親の勤務先がそこまで良い給料をくれないのか、その勤務先の経営が()(たん)したのか……とにかく私に物心がつく前から、私の家は貧乏だった。


 しかしそれでも、両親は私を高校にまで行かせてくれて。


 それを見ていて私は、とても心苦しくなって。

 それで私が、アルバイトをしようと決意したその時――転機は起きた。


     ※


「ッ!? ……い、いったい何が……?」


 何かの衝撃を感じて、目が覚めた。

 と同時に、どうして眠っていたのかが分からなくて、混乱したけど……伊瀬くんが何かをしたのを思い出し…………私は、気づいた。






 彼もまた……異世界人なのだと。






 私に敵意を向ける、校庭にいる人達の同類であると。






 ワケが分からなかった。

 なんで()()()()()私の周りに異世界人が現れるのかと。


 私はただ仕事をしただけだ。

 それもこの世界のためになる仕事を。


 マニュアル通りに。


 それなのになんでクレームをつけられなければいけないのか。

 そう思っただけで、そして理不尽にも敵意を向けられたと自覚してしまって……とても悲しくなった。


「仕方ない。悪く思うな……【天業眼(ヒストリア)】!!」


 そんな時だった。

 声が……私ではない誰かに向けられた声が聞こえたのは。


 知っている声……伊瀬くんの声だ。

 なぜ彼が、私ではない誰かにそんな事を言っているのか最初分からなかった。


「ッ!? そんな、まさか……」


 そのすぐ(あと)、伊瀬くんが驚きの声を上げる。

 いったい、彼は何をしているのか……この時になって、少し気になってきて……それで私は、今さらになって周囲を見て。


 ガラスが割れてて、床、壁、天井にヒビが入ってる事を知って。

 改めて、いったい何が起こったのか凄く気になったけど……とにかく、声のした校庭を見て――。






「ッッッッ!?!?!?!?」






 私は驚愕した。

 私のいる校舎以外が跡形もなくなっていたから。






 この世界が終わったのかと思った。

 だけどよく見れば、空の色がおかしかった。


 まるで、異次元にでも入り込んだかのような色合いで……まさかだけど、これが結界とかいうモノなのか。


 よく見ると、いろんな箇所から出血をしている伊瀬くんと、そんな彼と対峙している大勢の異世界人が見えた。


 そしてそんな彼らが、わざわざこの世界を壊そうとするとは思えなかった。

 というか、異世界人は私を狙っているのだ。わざわざこの世界――自分達の前世の故郷を壊そうとするとは思えない。


 だとしたら……ここは結界内である可能性が高い。

 それも、私と伊瀬くん以外、この高校の生徒がいないところからして、私を確実に殺すための結界の中だ。


 いや、そんな事を考えている場合じゃない。

 今はいったいどんな状況になっているのだろうか。


 私を殺すつもりなら、私が寝ていた間にそうしていれば済む話だ。


 なのに私は生きている。

 まるで、異世界人達の方を向いてる伊瀬くんが守ってくれたかのように。


「女神様が、そんな事を……!? いや、それならなおさらここでやられるワケにはいかないッ!」


 伊瀬くんが、今度は自分に言い聞かせるように言った。

 そしてそんな彼を見て、私は改めて……もしも彼が本当に守ってくれたのなら、なんで彼が私を守ってくれるのか、疑問に思った。


 彼が異世界人だというのは、今なら分かる。

 今までの彼とは違い、異世界人特有の力が(あふ)れ出しているから。


 なのに……私を守ってくれたのなら、だけど……なぜ、私になぜか敵意を向ける異世界人達とは違い……こんなに絶望的な状況なのに、全力で守ろうとしてくれるのだろうか。






「後ろにいる天塚さんは女神様とは関係ないんだッ!! こんな目に()うなんて、間違っているんだッ!! だから……俺が絶対に(まも)る!!」






 そして、伊瀬くんが。

 再び、自分自身に言い聞かせるようにそう言った時。


 私の心が、伊瀬くんの優しさで切なくなって。

 さらに私の中で、そんな彼の後ろ姿が……かつて、私が見た()()()()()()光景と重なって――。











「ブレーンイリュージョン」











 ――その時だった。











 伊瀬くんはその場で合掌をした。

 かと思えば、そんな彼の周囲に複数の光球……いや違う。


 平面へと変形しつつある光が現れて。

 最終的にそれは、地面から垂直に伸びる……人ひとりくらいの大きさの長方形に変わった。


 こ、これはいったい――!?


「さすがにこんなに多くちゃ、全員倒すのに時間がかかる。そして時間がかかれば結界が破壊されるような事態が起きるかもしれないからな。ここからは、今までの旅で俺が出会ったみんなの力も借りさせてもらうぜッ!!」


 さらに彼は、信じられない事を口走った。

 まるで、時間がかかってもいいのであれば……この場にいる異世界人全員を相手取れるかのような……!?











「来てくれ、みんな!!」











 そして、伊瀬くんがそう言った次の瞬間。











 長方形の光が強くなり……そして光が収まると、そこには、伊瀬くんと対峙する異世界人に匹敵する数の異世界人がいた。

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