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 第7話 思い返す主人公

『ようこそ、死後の世界へ』


 目覚めた場所は、謎の白い空間の中だった。

 いったいなぜこんな所にいるのか……一瞬、俺は思い出せなかったけど、俺の隣で小さい男の子が目覚めた事で、全てを思い出した。


 そうだ、俺は確かこの男の子……自動車に()かれそうだった子を助けるため道路に飛び出したはいいけど、一緒に()かれてしまったんだったか。


 ついでに言えば、相手の運転手はハンドルに突っ伏していたように見えた。

 もしかしたら心臓発作でも起こしたんじゃないかと思うが、今はそんな事を思い出している場合じゃない。


 俺はこの子と一緒に死んだようだ。

 これから高校に入学しようって時に……きっと男の子の方も……入学か進級かは分からんが、新たなステージに立つハズだっただろうに。


 そしてどうやらここはあの世らしい。

 でもって目の前にいるのは(えん)()様……かと思いきや女神っぽい方だった。


 なんにせよ、死後の世界なんて信じていなかったが。

 神様というのは存在するのか……いや、まさか幻覚か。


 いや幻覚だろうが(なん)だろうが。

 その女神様は美しく可愛かった。


 小柄でほっそりしてて、それで顔が小さめで童顔で、肌はまるで、白雪のように綺麗で、そんな存在が……確かぺプロスとかいう名前の、神秘性を感じさせる服を着ていて…………個人的にはドストライクだった。


『ですが、死んだワケではありません。しかしこのままでは死にます』


『え、え……ええっ!? ど、どういう事ですか!?』


 男の子が困惑する。

 というか俺にも(わか)らない。


『あなた方は現在、病院で植物状態にあります。ですが、このままではあと数日で状態が急変し死んでしまいます』


『『そ、そんな!』』


 衝撃の事実だった。

 まさかそんな事になってるなんて!


『ですが、助かる方法はあります』

 絶望しかけていた俺達に女神様は言った。


 そしてそれは、俺……いや俺だけでなく男の子の耳にも預言の(ごと)く響いて――。






『それは、数多(あまた)の世界を巡り、魂の階級を上げ……心身を活性化させる方法です』






     ※


「ッ!?」


 一瞬、意識が飛んだ。

 あまりにも強烈な一撃を受けたせいで。


 常人で例えると、強烈なボディブローを受けたような感じだろうか。


 とにかく意識が飛んだ。

 そして女神様と初めて会った時の事を思い出した。


 天塚さんがあまりにも女神様に似ていると改めて思った。

 と同時に、彼女自身の安否が心配になりすぐに周囲を見る。


 偽物の校舎が半壊していた。

 俺の守護魔術でも守りきれなかったのだ。


 俺は絶望した。

 絶叫もしたくなった。


 けれどすぐに冷静さを取り戻す。

 絶望なんかしていたらそれこそやられるから。






 そしてすぐに天塚さんの気配を(さぐ)り……まだ生きていた。






 ホッと胸を()で下ろす。

 だが(あん)()している場合じゃない。


 早くあいつらを排除しないとどっちみち天塚さんが殺される!!


「仕方ない。悪く思うな……【天業眼(ヒストリア)】!!」


 だから俺は、使う事にした。

 先日まで、天塚さんの事を知るためにも使っていた……第三者から見ればとても最低な、(ぞく)に言うチートスキルを。


     ※


 自他のステータスを確認するスキルが、最近の異世界系の物語にはあるらしい。


 ハタから見るととても便利なスキルだろう。

 相手との差がどれだけあるかを事前に()(あく)し覚悟などができるから。


 けど俺は、そういう能力はあまり好きじゃない。

 どうしても相手の弱点とかが分からない時は必要だと思うけど……なんだか相手のプライバシーまで覗き見るようで抵抗があるのだ。


 にも(かか)わらず、(なん)の因果か異世界に渡った俺にも、さらには同じく渡った男の子にもそんなスキルがついた。

 

 ていうか、俺達のスキルはそれ以上に恐ろしいものとも言えた。

 なぜならば、俺達に見えるのは自他のステータスではなく、自他の前々々々前世くらい昔の時点から今までの歴史の映像なのだから。


 そのため成人向けな光景までもが見える見える。

 これを男の子も見れるのか……なんとも教育によろしくないスキルであろうか。

 ていうかなんとしてでもこのスキルを封印しなければ、旅を終えた(あと)、二人共、いろいろ(ゆが)んだ人間になりそうで怖い。


 なので俺は男の子をなんとか説得し、お互いにこの能力を封印した。


 けれど天塚さんという、謎の存在と出会い。

 (つら)い思いをしている事をなんとなく察し、彼女を救うためにこの能力を解禁する事を決意し使用して……失敗に終わり。


 そして今度は、その天塚さんの命の危機だ。

 再び解禁してでも相手の情報を知り、一対多数というあまりにも理不尽な状況をどうにかしなけれ――。


 次の瞬間。

 俺は絶句した。


 最初に俺に攻撃を仕掛けてきたヤツは超能力者で、転生先の異世界を存続させるため、超能力の使いすぎで怪物化した多くの仲間を殺さなければいけなくなった。巨大ロボットの操縦者は、自分が戦ってきた相手が元々自分達の仲間である事実を知った。レスラーっぽいヤツ――ヒーローは、自分が助けたハズの人間から化け物認定されて死ぬまで迫害される事になった。カードゲーマーは、勝っても負けても救いのないデスゲームに参加せねばならなくなり、転生をした異世界を救うためという理由で、仲間を裏切らなければいけなくなった。魔法少女は仲間の魔法少女を犠牲にせねば敵を倒せない状況に(おちい)り、そのあと生き残り敵を倒したものの、戦いの余波で世界を滅亡させてしまった。そして勇者風のヤツは……ん? おかしい。なぜかヤツのだけ見れない……?


 とにかく。

 転生者軍団の構成員のほとんどが、胸糞悪くなる経歴の持ち主だった。

 

 そして、それぞれの異世界の不幸には。

 その異世界で受肉をした天塚さん……いいや違う。











 かつて俺と男の子が対面した女神様が関わっていた。

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 えーとつまり?(錯乱中)  異世界転生チーレム無双婚約破棄追放ざまぁもう遅い飯テロスローライフなろう系勇者及び世紀末四天王は、クソゲー×クソゲー=人生オワタ/(^o^)\案件を天塚女神に全責任を押…
何と壮絶な……( ˘ω˘ )
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