第6話 容赦なき叛逆者
破滅の極光が引き起こした爆発は、校外までをも巻き込む威力だった。
しかしその校外をも結界――俺が干渉したそれが包み込み、結界外に本物の建物があり、そしてそれと重なるように、結界内に偽物の建物が建っているという奇妙な状況であるため、現実世界の建物に被害はない。
だが、俺が守護魔術をかけた偽物の校舎――天塚さんがいる結界内のそれ以外の建物は、全てなくなっていた。
爆弾落ちた地域ってのは、こんな感じなんだろうか。
今までいろんな世界に行ったものの、戦時中には行った事がないので分からないけど……それでも恐ろしい威力だ。
だが俺にとっては防げない攻撃じゃない。
俺は起きた土煙をすぐに飛び出し、突如上空に出現した巨大ロボットの胸部へと蹴りを放った。
巨大ロボは上空へ吹っ飛ばされた。
しかしそれだけの威力の蹴りを放ったものの、おそらくスクラップにできるほどの威力じゃない。
蹴った瞬間に分かった。
あのロボットにはナノマシンによる自己修復機能がついてる。
そしてそのナノマシンは蹴った時に俺の足にもついて――。
「黙れ」
――俺の体を分解しようとしていたがすぐに滅する。
こんな攻撃を受けたのはこれで八度目だ。
だからすぐに慌てず騒がず冷静に対処する事ができる。
「ミョッホッホッ!! 油断大敵ィ!!」
その直後。
レスラーっぽいヤツが俺の後ろに回る。
「対邪神用ホールド!! イモータルリベンジャー!!」
そして俺の体を固めると、そのまま地面まで真っ逆さま!?
俺はすぐにその技を解こうとするが、なかなか解けない……どうやら、神を相手取るのを想定して編み出した技らし――。
説明の途中で、俺は頭から地面に突き刺さった。
だが事前に強化魔術を使っていたため無傷である。
しかしそれでも、ある程度は衝撃を感じる。
対衝撃用の術式も込みの術なんだが、さすがは対神技。
この程度では衝撃を殺しきれない。
「ルフォフォフォ。モンスカードオープン!」
今度は、腕になんとかディスク的なのを装着しているヤツが何か言う。
その台詞に俺は聞き覚えがあった。
その掛け声、まさかいつだったか行った世界の――。
「行け! 『クリムゾンカーミラ』! ブラッディ・フォース!」
――なんて思っていると、相手の目の前にエロい衣装を着た女――おそらく名称からして吸血鬼と思われるそれが出現。
その両手に赤いエネルギー波が発生し俺に放ってきた!!
俺はその世界に行った事がある。
だがそのカードゲーム自体をやった事がないから、どういうゲームかはここでは詳しく説明できないんだが、どうも見た感じカード内のモンスターなどをを具現化させて対戦相手を倒すカードゲームらしい。
ちなみにゲーム名は『神話遊戯-ファンタズムブローラーズ-』。
こっちの世界にもそういうのはもちろんある。
だがあんな風に実体を持って相手を倒すなんて事はない。
いや今はそれよりもこの状況をどうにかせねば。
ふと気づくと、レスラーなヤツは悪態をつきながら離れてた。
さすがに巻き添えは勘弁してほしいようだ。
いやそれはいい。
それよりもすぐに俺は起き上がり防御魔術を使った。
それもシールドの形を微妙に変化させて、相手にエネルギー系の攻撃をそのまま返すヤツだ。
案の定、エネルギー波はエロ衣装の吸血鬼に返った。
吸血鬼は断末魔の声を上げつつ、なんとカードもろとも消えた。
「く、クリムゾンカーミラァァァァーーーーッッッッ!!!!」
「いちいち絶叫すんなよ、戦闘中に」
そう言いつつ俺はそいつに肉薄する。
残念だけどこの世界は別に少年漫画な世界じゃない。
衝撃を受けてる最中に攻撃をされないなんて事は――。
「ラキラキラキ!! マジカルゥゥゥゥゥゥゥゥ・デェェェェェェェェストロォォォォォォォォイッッッッ!!!!!!」
――先ほどとは違う破滅の極光が頭上から降り注いだ。
魔法少女みたいなヤツが降らせた魔力エネルギーの流星だ。
なんというか、見ただけで絶望感を問答無用で相手に味わわせる……もはや魔法少女とは何なのかを考えさせられる広範囲攻撃だ。
夢と希望はどこ行ったよオイ。
いやそれはともかく。
さすがに守護魔術をかけ直した上で何重にも防御魔術を展開する。
ちなみに二つの魔術の違いは、体に纏わせるのが守護魔術。
そしてシールドのように守護対象の周囲に展開するのが防御魔術だ。
いくつかまとめて破壊された。
おいおいどこぞの白い悪魔かよ。
いやとにかくいくつ破壊されようが新たに防御魔術を展開!!
絶対に校舎を破壊させたりなんか――。
「ギャガギャガ。闇爆滅葬」
――チート勇者風のヤツの声がした。
そして次の瞬間。
周囲に膨大なエネルギー波動が発生。
そしてそれは全てをのみ込んだ。