第1話 俺の隣の女神様
まぁ私の作品ですから。
みなさんの想像しているような話とズレているかもしれません。
とにかく公式企画用作品第二弾です。
彼女を間近で見た時、時間が止まったかと思った。
彼女は俺が遅れて入学したこの高校の同じクラスの生徒で。
そしてついでに言えば俺の隣の席に座る……まさかの眠り姫だった。
いや、眠り姫な部分は正直どうでもいい。
というかそれ以前に俺にとって彼女は眠り姫というより女神だ。
まぁ、人違いかもしれないけど。
「ん? 伊瀬? どーしたー?」
「あ、いやなんでもありませんセンセー」
なんにせよ、俺はひとまず先生にそう答えた。
なぜなら目の前の彼女は教科書で寝ている自分を隠しているのだから。
何があったかは知らない。
もしかすると徹夜、または重労働なバイトをしているのかもしれない。
そんな彼女を起こすのはさすがに抵抗があったのだ。
「そうか? とにかく伊瀬、天塚の隣の席に早く座りなよー?」
「はーい」
とにかく俺は、彼女――天塚さんを起こさないよう静かに席に座った。
だけど、静かに座る事を意識しすぎたせいなのか、ちょっと大きめの音を出してしまった……けど彼女は、それでも起きなかった。
相当お疲れの様子だ。
そんな彼女をちょっと可哀想に思う。
けどその反面、俺はそんな彼女の寝顔に見とれていた。
彼女には悪いけど……可愛いんだ。
俺が知る女神様の寝顔みたいでそりゃもう。
座高からして小柄でほっそりしてて、それで顔が小さめで童顔で、肌はまるで、白雪のように綺麗で……なんというか俺の知る女神様とほぼ同じルックス。
いや、そうでなきゃ俺の中の時間は一瞬止まらなかったけどさ。
※
「?? あなた、誰?」
HR終了のチャイムと同時に彼女は目を覚ました。
さすがに彼女の体内時計は正常に作動しているらしい……むしろ正常じゃないと平々凡々な学校生活を送れないけどさ。
「今日遅れて入学した、伊瀬渉っていうんだ。よろしくね♪」
「…………ふぅん…………?? そう」
あれー?
それだけー?
名乗ったのにそれだけー?
こっちとしてはクラスメイトになったんだし、それなりに仲良くしたいんだけどなぁ。
いや、そうは思うがここで無理に話を引き出そうとしちゃいけない……と俺の中の理性が告げる。
HR中、寝ていた事からして……寝る癖がついているとかのオチじゃなければ、さっき思った通り、彼女は普段、アルバイトか趣味の何かで徹夜もしくは重労働をしているに違いないから。
そしてそんな彼女から無理やり話を引き出そうとすれば……キレられるのは確定だから。
なので俺はそんな彼女から視線を外し……クラスメイトが『こっち来い』と手を振っているのが見えた。
天塚さんからは見えない角度だ。
ちょっと気になった俺はこっそりとその場を離れた。
※
「天塚さんにはあまり関わらない方がいいよ」
手を振ったクラスメイトとその友人と思われる、数人のクラスメイトが集まっている教室の片隅に俺が着くなり、手を振ったクラスメイトは告げた。
「なんだ? イジメか?」
俺は思わず怒りのゲージを上げた。
というか相手がたとえ俺の知る女神様じゃなくても、イジメが起こっている事態を人として見過ごせねぇぜッ。
「違う違うッ」
俺を呼んだクラスメイトは、小声で、慌てた様子で話を続けた。
「僕らが話しかけても全然マトモな返事をしないから、仲良くなろうとするのは、時間の無駄になるよって事ッ」
「…………つまり、クーデレ系って事か?」
俺は怒りのゲージを低くしながら大まじめに訊いた。
「いやデレの要素は余計だわさッ」
するとすぐに別のクラスメイトがツッコんだ。
俺の些細なギャグに普通に返すだなんて……少なくともこのクラスに存在してるのは、あの子に悪意を向ける勢力ばかりじゃないようだ。
悪意を向けるようなヤツなら、ここでせせら笑ったりするだろうし。
「そっかぁ。口数が少ないのか、天塚さんって」
「うん。だから――」
「でも心配ご無用!」
俺はすぐにクラスメイトの言葉を遮り言った。
「みんなの心配もよーく分かる! でもクラスメイトだからな……もしもって時があるだろうし、その時に備えて少しはコンタクトをとってみせるぜ!」
どうしても天塚さんを見過ごせないし。
それにさっき言ったけどもしもの時がありそうだから……俺は持ち前の明るさのままクラスメイト達に宣言した。
「おもしれーヤツだなぁ」
「無駄だと思うけど、まぁ頑張れ」
「さっきから思うが……まさかの陽キャかッ」
「ムードメーカーになりそう」
様々な意見がクラスメイト達から出るが、俺は気にしない。
なぜなら俺には人を見る目だけはあるから……この場には心配してるヤツはいても、足を引っ張ったりするようなヤツはいないと分かったからだッ。
とにかくこうして、俺の物語は始まった。
天塚さんとうまくコミュニケーションをとろうとする俺の物語が。
そして、まさかの事実に行き着く事になる俺の物語が。