~シン・スクールカースト(前編)~
漫才王になろうGP2025。
クリスタルエデン、伊達賢治の手によって再開されたその漫才大会は元々あるブランドの価値を高めた。出場ユニットは過去最高の1万1000組を突破した。決勝に残ったのはそのうちの9組。
その決勝に臨めなかった1万991組、それぞれにドラマがある。しかしその決勝というドラマを綴れるのは決勝に残った9組と敗者復活戦を制した選ばれし1組を含めた10組。
ここでその10組のなかから「再会と再開」を果たした3組を紹介したい。
青森県青森市。平成生まれのその2人は東北の最北端にあるその町で育った。山田太壱は生まれながら食欲旺盛な子供で幼少期からずっと太っている体型だ。その容姿を弄られることがずっとあった。だが問題なのはそうではなくて、本人のおとなしすぎる性格にあった。弄られると言うよりか虐められていたと本人も述懐する。
「お~い! 金〇恩!」
彼の風貌は某国の最高指導者によく似ているとされていた。
本人は「何が似ているっていうのか」という本音を持ちつつも、自身の容姿にコンプレックスを感じる悩みも抱えていた。
そんな山田と幼少期からずっとクラスを共にしていた女子がいた。鈴村香蓮。彼女は目つきが鋭くてキツい顔立ちが特徴だ。でも、それ以上に山田よりもっと根暗な性格が誰も寄せつけなかった。
山田は男子に馬鹿にされて、鈴村は女子に阿保とされた。
鈴村は父子家庭で育つも、中学時代から再婚した義理の母とも過ごすように。彼女にとってそれこそが苦痛の毎日だったと話す。この頃から「日本はもう一度戦争するようになるべきだ」と謎の思想に走るようになったとも。
そんな山田と鈴村だったが、高校生になって転機が訪れる。高校3年生の時に文化祭で新喜劇をやろうという事になった。そこでどういう事か山田が主人公を担い、ヒロインを鈴村が務めることに。内容は某国からやってきた金〇恩が日本の愛国心溢れる女性自衛隊員に恋するというもの。コレが大ウケをした。そこで自信を深めた山田は芸人になろうと東京への上京と吉原興行の養成所入りを決意する。鈴村に至っては自衛隊志願をするというまさかの展開に。
これでこの2人の物語は終わったのかもしれない。
しかし、それだけで終わらない。
「私、山田と付き合いたい」
「えっ!?」
卒業式の日、鈴村から告白を受けた。
「いや、鈴村さんにそんなことを思われていたなんて。俺、こんなの初めてで、そのこれは……」
「ごめん。罰ゲームなの」
「えっ!?」
ちょっと離れた先を見渡すとゲラゲラ指さして笑う常連が。
「でも私さ、お前とは繋がっていたい」
鈴村はこっそりスマホのIQコードをだしてきた。
ピンクに染めていた頬を真っ赤にした山田は戸惑った。これすら罰ゲームかと。このとき、咄嗟に連絡先を交換した事が運命を変える一手になると彼はまったく思わなかった――
∀・)武頼庵様「さいかい企画」に参加するために書きました。そして「漫才王になろうGP+」とも絡めた作品でもあります。日曜日9時30分と18時30分に更新。楽しんで貰えたら嬉しいです☆☆☆彡